小学校理科を指導要領から考える【毎週水曜日更新】

はじめに

 東京都葛飾区を中心に理科教育イベントを行っている筆者が小学校での理科教育法や楽しく学ぶ方法を考え、とりあえず文章に起こしている記事です。読みづらい部分ばかりとは思いますが、発想の一つとしてお読みいただければ幸いです。
当記事、当シリーズは全文無料でお読みいただけます。
前回→「空気と水の性質」https://note.com/katsushikakap/n/ne2020cd18c8b


1.「金属、水、空気と温度」の概要

 金属、水及び空気の性質について、体積や状態の変化、熱の伝わり方に着目して、それらと温度の変化とを関連付けて調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を
  身に付けること。
(ア)金属、水及び空気は、温めたり冷やしたりすると、
   それらの体積が変わるが、その程度には違いがあること。
(イ)金属は熱せられた部分から順に温まるが、
   水や空気は熱せられた部分が移動して全体が温まること。
(ウ)水は、温度によって水蒸気や氷に変わること。
   また、水が氷になると体積が増えること。
イ 金属、水及び空気の性質について追及する中で、
  既習の内容や生活経験を基に、金属、水及び空気の温度を
  変化させたときの体積や状態の変化、熱の伝わり方について、
  根拠のある予想や仮説を発想し、表現すること。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

 指導内容がべらぼうに増えましたね。今回も「目に見えない現象」を 
どのように理解してもらうかが重要になってきそうです。

2.温まり方の違いを理解する

 引用した部分にもある様に、「金属」と「水と空気」で温まり方に違いがあることを理解できるようにすることが目的になります。
触れば簡単なことかもしれませんが、そうもいかないのでなんとか目視化できないかと考えるわけです。
こんなものを用意してみました。「サーモインク」です。

サーモインク Amazonでも購入できます。

 色々種類がありますが、40℃程度から色が変わるものが良いと思います。実験としては、サーモインクと水をビーカーに入れて温める実験でも
十分ですが、粒子として現象を捉えるのであれば、
吸水性ポリマーにサーモインクをしみ込ませてみるのも良いかもしれません。おむつに入っている吸水性ポリマーがサイズ的にも良いでしょう。
可視化する方法は様々あるとは思うので、後は状況や好みで実験を選んで行くのが良いかと思います。
 できることなら、水と油の比較実験もこの段階で一回行うと後の学習に繋がります。

 鉄の温まり方ですが、こちらは触ったりする訳にもいかないので十分な配慮をして実験を行わなければなりません。
前の実験で吸水性ポリマーを使っていれば、フライパン等の金属板の上に敷き詰めてフライパンを熱すれば可視化することができます。
最も簡単な方法は家庭科のお米を炊く授業を題材に検討会をすることでしょうか。

3.体積の変化を実感する

 水や空気は比較的、実験しやすいですが金属の膨張は変化が小さく
実験装置が金属球であったりと実験難易度が高いです。
実験準備が楽で変化をわかりやすくするならば、金属定規が
良いでしょうか。ステンレス製の定規が比較的安価で容易に手に入り、熱膨張率もそこそこなので悪くないと思います。
1グループに2つあれば、十分に比較観察ができます。

 水の体積変化は、先の温度変化の観察の時に一緒に出来そうです。
ビーカーのメモリに合わせて水を入れてマークを付けておけば、熱した後の体積の変化も一目瞭然です。 
空気が残っていますが、水の三体変化が残っているのでそちらで一緒に
観察しましょう。

4.水の三体変化

 語りだしたらきりがないゾーンなので別の機会に単独の記事を書きたいと思っている次第です。

 実験に必要なモノはビニール袋です。透明な物だと良いですが、薄手で熱に弱いのでその分注意が必要になります。
実験方法としては、熱したビーカーの上にビニール袋を広げるだけです。手に持っていると熱いので気球のように展開することが出来ると良いです。
観察するべき事は、
・水を熱していくと袋が広がること
・袋の内側に水が付いていることに気づくこと
です。
いつもの実験とビニール袋だけで学習の幅を広げることが簡単にできます。

 問題は水が個体になる時です。決して、ここで学ばないといけない事ではないのですが、「水が氷になると体積が増える」という現象が他のモノにも同じように適用されないという事を知っておくべきだと思います。
なので、油を凍らせる実験も同じタイミングで出来ると良いと思います。
油も食用油であれば冷凍庫で凍らせることが出来ます。オリーブ油は比較的、凝固点が高く0℃~6℃程度で凍るようです。
山梨に住んでいた時は安アパートに住んでいたので、冬場にキッチンで凍っていたのを思い出します。

人類史として標準になっていやすい水ですが、水の持つ特異性にも気づき他の自然現象にも疑問を持って観察できるような素地を作ることの出来る学習にしていきましょう。

5.「金属、水、空気と温度」のまとめ

1.サーモインクを使って温度の変化を見てみましょう。
2.金属製の定規を使って、熱膨張を見てみましょう。
3.ビニール袋を使って、水蒸気の観察をしてみましょう。
4.油との比較実験から水の特異性にも気づきましょう。

一回一回の知識としてではなく、1つの物質に対して観察方法を変えていっているという気持ちで進めることが大事になるかと思います。
「物質1」と「物質2」を「どのように」比較するのかを子ども達が考えていく機会も大切にしていきたいです。

6.まとめ

 一回の記事にする内容ではなかったと反省しています。
それこそ、学校の授業ではこの内容で10時間ちょっと取る事が多いと思います。教えるために必要な時間が多い分、実験準備や片づけ等の時間の短縮に使っていただければと思います。

毎週水曜日更新予定、次回は4月17日更新!「指導要領第4学年 電流の働き」を考えていきたいと思います。

当記事、当シリーズは全文無料でお読みいただけます。
コメントや応援いただけますと幸いです。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?