小学校理科を指導要領から考える【毎週水曜日更新】


はじめに


親子向けの理科実験教室を行っている著者が学校で習う理科教育について考えていく記事です。散文ですが、楽しく学ぶ理科教育の一端としてお読みいただければ幸いです。
前回「電気の通り道」→https://note.com/katsushikakap/n/n0a7f6678d9ea


1.「身の回りの生物」概要

 身の回りの生物について、探したり育てたりする中で、それらの様子や周辺の環境、成長の過程や体のつくりに着目して、それらを比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 生物は、色、形、大きさなど、姿に違いがあること。また、周辺の環境と関わって生きていること。
(イ) 昆虫の育ち方には一定の順序があること。また、成虫の体は頭、 胸及び腹からできていること。
(ウ) 植物の育ち方には一定の順序があること。また、その体は根、茎及び葉からできていること。
イ 身の回りの生物の様子について追究する中で、差異点や共通点を基 に、身の回りの生物と環境との関わり、昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし、表現すること。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

 (3) 内容の「B生命・地球」の (1) については、次のとおり取り扱うものとする。
ア アの (イ) 及び (ウ) については,飼育、栽培を通して行うこと。
イ アの (ウ) の「植物の育ち方」については、夏生一年生の双子葉植物を扱うこと。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

 この単元は観察学習の基本と生活科からのつながりを持って学習する内容となっています。

2.「身の回りの生物」を考える

 観察実験をするための素地となる学習ですが、今時すべての地区で同じように生物を探し、観察する事は難しいです。都市開発を悪くいう気持ちもないですし、そりゃ生き物を管理するのは責任や安全性みたいな面で難しいですもの。
そんなわけで、現代の頼れる物には頼り、身に着けるべき基礎は子ども達
自身が見て触れてが出来るような学習にしていきましょう。
また、昆虫の学習に関しては私が小学3年生に教えていた経験も活かしながら無駄のなく、身になる学習方法を考えてみます。

3.「見つめなおす為の観察」と「調べ学習」

 まずは身の回りの生物を知ることから始めたいと思います。
校庭や家の近くには、どんな都市部であってもある程度の植物があるはずです。それらを写真に撮ったり、スケッチする学習を行いたいと思います。
その時に植物の名前を知る必要は無いです。ただし、どんな方法にしても特徴を言語化して欲しいと思います。「葉の裏がザラザラ」や「葉に触ったら葉が勝手に動いた」や「木の表面がツルツルしていた」等の『情報を得る』学習を行います。もちろん、出来ることなら植物だけでなく生物も観察して欲しいと思います。犬や猫でも学習すると思って見てみると普段は感じていなかった発見が見つかったり、自分にとって当たり前だった事が他の人にとっては知らない事だったりします。
 ある程度の観察材料が集まったら、それが何かを調べましょう。
そういった物に詳しい人が近くにいれば一番簡単ですが、そうもいかないのでここは「図書室」に頼りましょう。
教員側は単元に入る前に司書の先生に相談をおこなっておくのがマストです。
子ども達自身が得ていた情報を使ってそれが何なのかを知り、調べる事で得られていなかった情報を新しく追加する事が「調べ学習」を通して培う事ができます。
 自分の知識や経験と人類が積み上げてきた知識を組み合わせて、身の回りを観察、発見する学習になります。もちろん、図書室利用だけでなく、インターネットも情報を得るためのツールですが、名前もわからないモノの情報を得るのは難しいと思います。図書室で大まかな情報を得てからインターネットで情報を確定させる様な合わせ技で使うほうが望ましいです。

4.生き物の姿は映像資料に頼ろう

 生物が育つ様子は映像に頼るのが良いと思います。
夏のヤゴやセミの様子はもちろん実際に見ることが学びだと思いますが、万人に提供できる経験ではないですし、やっても学習にならない差がでてしまいます。時間もかかってしまいますしね。
だからこそ、全員が同じことを学べるように映像資料を利用して学習を進めるのが良さそうです。
 映像資料もキレイですし、コントロールすることのできない自然の物を学ぶにあたって、生き物の学習は無理して「体験」を追求する必要はないのかなと思います。好きな子や、必要とする親御さんはご自身でやるでしょうし。

5.「昆虫の体のつくり」はパーツで比較

 私が実際に行った学習方法の一つですが、蝶の体のつくりをパーツごとにして子どもたちと確認しながら学習を行いました。「蝶は胸に足がついてるね」みたいな感じでした。
蝶の体をつくっているパーツと自分のからだの同じ名前のパーツの付き方の違いを感じられる方法だったと思います。時間があれば、昆虫以外の生き物もパーツ分けしてみたら面白かったかなと思います。絵心がなくても「雰囲気で分かって」と言ってわかってくれた子ども達には感謝しかありません。

6.「身の回りの生物」のまとめ

 ・観察する時は、写真やスケッチと「コメント」で情報を記録する
 ・観察した物を知るために本(図書室)を利用する。
 ・生き物の観察は映像資料を利用する。

 上でまとめた3点がこの単元で学習を行うポイントだと思っています。
教室内で完結しない学習だからこそ、様々な媒体を通じて
「知る手段を知る」経験を大切にするのが大人になってからも生きる学びだと思います。

7.おわりに

 思ったよりまとまった単元でした。
もちろん、生き物の姿を知ることが単元としては重要な事ですが、調べ学習のやり方を学ぶことが最も大事だと思っています。
 身の回りの物を興味を持って観察し、情報を獲得し、情報を本やインターネット等の複数の情報と照らし合わせる技術を培う学びがこの単元にはあります。もちろん、社会科がよく調べ学習を行うイメージがありますが、別に理科でも国語でも算数でも家庭科でも気になったことを調べる事が身につく学びだと思うので複数教科でおこなってみるのが良いと思います。
教科書に書いてある学びだけがその教科が与えた学びではないと私は思います。

毎週水曜日更新予定、次回は3月20日更新!「指導要領第3学年 太陽と地面の様子」を考えていきたいと思います。

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