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市町村一周から一年。

1741市町村を巡り終えて、今日でちょうど一年経つ。あの日から、いろいろあった。右も左も分からないままに、走ってしまった。一年後など、考える余地もなかった。それでもいま、かろうじて、生きている。一年間に感謝して、文章を書く。

01.きっかけは、あずまさん

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旅が終わった日。あずまさんという大学の先輩が、わたしの旅を広めてくれた。あずまさん自体、スーパー面白い方である。そしてあずまさんのツイートのおかげで、糸井重里さん幡野広志さんをはじめとした、とんでもない方々とお繋がりを持つきっかけをいただいたのだ。だから、この先に起きるどんな出来事も、ほんとうは全て、あずまさんのおかげである。本気でそう思っている。それをご本人に話すと、「宗教みたいだね」と、仰せられた。

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同日、糸井さんがわたしのツイッターを見てくださっているにも関わらず、反応がない様子を見て、「何をしているんだ!」あずまさんから焦りの連絡が届いていた。

その時のわたしは、市町村一周が終わったので、最後の地・屋久島で携帯を放り投げ、

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大海原を見下ろし、

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露天風呂に入り、

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滝の前でカッコつけていた。

呑気なものである。

電波が回復したのちに、すぐ連絡を取らさせていただいて、間に合って、本当に良かった。あずまさんが繋いでいただいたご縁、本当に忘れません。ありがとうございます。

02.ほぼ日さんとの出会い

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糸井さんをはじめ、ほぼ日のみなさんには、もう頭をめり込ませても足りないぐらいに、お世話になっている。2020年3月11日、気仙沼へ連れて行っていただいたことが最初のご縁で、気仙沼の方々の温かな笑顔や声が、ずっと懐かしい。一緒だった同級生りゅートリックスさんのボールパフォーマンスに、刺激をずばずばと刺してもらい、作家岸田奈美さんの天衣無縫なお人柄と文章に、蜂の巣にされた。引率の先生だったほぼ日の永田さんには、「文章を、もっと自由に書けばいいよ。」さらっとアドバイスしていただいたことが、いまも耳に残っている。永田さんと永田さんの文章が、大好きである。

他にもとんでもなく、お世話になっているほぼ日のみなさんに、あらためて、感謝いたします。

こうしてわたしは、徐々に外の世界を、教えていただいた。

03.書籍の刊行

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2020年8月、書籍『ふるさとの手帖 あなたの「ふるさと」のこと、少しだけ知ってます。』を刊行させていただいた。

そもそも、わたしのように経験の浅い人間が、書籍を刊行させてもらえること自体、どれだけありがたいことか、という話である。

編集者さんとデザイナーさんにも、この一冊に、大変なお時間を割いていただいた。何かをするたびに、1741(市町村)通りのチェックが必要で、ほんとうに大変だったと思う。それでも、たえず向き合ってくださって、1800枚の写真、5万字の文章と共に、出来上がった。この320ページはわたしの夢であり、旅そのものである。

そして、帯の推薦文を、糸井さんに書いていただいた。そのことが一体、どれだけありがたいことか。「そんなことあるか!」わたしの父が星一徹なら、ちゃぶ台返しである。糸井さんのご恩に、報いたい。希望ではなく、強い気持ちで。ほんとうに、ありがとうございます。

ですから、書籍を
どうか、買ってください!
ふるさとの手帖

04.渋谷PARCOの写真展

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2020年9月、地元倉敷の写真館を退職した。同年4月から働きはじめて、半年足らずという、ならず者っぷりであった。

9月下旬、ほぼ日さんが企画してくださった、渋谷PARCOの個展に在廊するには、写真館を辞めるしかなかった。悩みつつ、それでも、わたしのような年齢で、大きな会場で、個展をさせてもらえることが、いったいどれだけ稀有なケースであるか、分かっていた。幡野広志さんは、「自分を信じてくれる人を、信じればいい」とわたしに言ってくれた。

展示がはじまる二週間前、頭を下げた。写真館は家族経営だったので、いきなりわたしが辞めることは、筋違いだったと思う。それでも、後悔の度量を天秤に掛けた。その時も、ほぼ日のみなさんは、自分の背中をやさしく、さすってくれて、ほんとうにありがたかった。

展示にはたくさんの方が、来てくださった。NHKの『おはよう日本』さんが生中継してくださってからは、お年寄りの方も渋谷まで、わざわざ足を運んでくれた。夫婦の懐かしい会話が弾んでいる時なんかは、堪らなく良かった。

直接お会いして、繋がったご縁も多い。わたしのようなぽっと出の人間に、手を差し伸べてくださったこと、心から忘れません。ほんとうに、ありがとうございます。

05.これからのこと〜ゼロヒャク〜

いま、旅はできないだろう。生きていくために、できることを、やるしかない。

ひとつ、新しくはじめた取り組みに、『ゼロヒャク(仮題)』がある。

0歳から、100歳までの方々に、一人ずつ、写真を撮らせてもらい、それらをまとめたい。人間という人生そのものが、100年を通して見えてくるような気がして。単純に、わたし自身がその一世紀を見てみたい、という思いである。

個人的な取り組みですが、もし、ご協力いただける方がいたら、是非という思いです。緊急事態宣言が発令されて、きっと長い話になるでしょう。ほんの少しずつ、それでもいろいろな方を、さまざまな場所で撮ることができたら、と思っています。Twitter Instagram、メールアドレス(photo@katsuo247.jp)、どの媒体でも構いませんので、「note見た!」とご連絡いただけたら、心から嬉しいです。ご相談させていただきたいです。

新しいお仕事も、募集しております。


06.おわりに

旅が終わった一年後、わたしは写真家になった。

そうは言っても、まだ足りないもので溢れていることは、身に染みて分かる。

しかし、いまの立場以外を選んでいたら、このスタートラインには、立てなかっただろう。

だから、ここに弱気なことは書けない。

一年前も、いまも、同じ人生の旅である。

わたしの心臓の鼓動が、ほんの少しでも、

誰かの心臓に届くまで、写真を撮る。

かつお|仁科勝介(ニシナカツスケ)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。在学中に日本の市町村を全て巡った。主な履歴|クローズアップ現代+(スチール撮影) / 文藝春秋巻頭随筆 / 朝日新聞「ひと」欄 / 書籍「ふるさとの手帖」(KADOKAWA) / 写真展「1741のふるさと」(渋谷PARCO・ほぼ日曜日)|▷TwitterInstagramWebHP:ふるさとの手帖

ポカリスエットを買います。銭湯に入ります。元気になって、写真を撮ります。たくさん汗をかいて、ほっと笑顔になれる経験をみなさんと共有したいと思います。