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そうくんのこと

そうくんが卒園した。

我が家の次女と同じクラスに在籍しているそうくんは、まだ言葉を使って会話をすることができない。でもオウム返しではコミュニケーションをとることができるし、みんなと一緒にできないだけで走って遊ぶことも好きだ。

次女の保育園の行事に行くと、そうくんは保護者に手を取られながら参加していて、運動会のリレーはお父さんと一緒に走っていた。それほど楽しげではないものの、その場を穏やかにやり過ごしている姿が印象的だ。その姿をみて、ぼくは自閉症だろうと思った。ぼくはそんなそうくんが好きで、つい「今なにを感じているんだろう」とか「楽しめてるかな」などお節介なことを考えていたりした。

だからよく次女に「そうくんてどんな人なの?」と夕食時に聞くことがある。すると次女は矢継ぎ早に、
・動物の絵本が好き
・好きな食べ物はバナナ、パン、カレー。嫌いな食べ物はごはん、ブロッコリー、ゆかり
・保育園では滑り台が好きで、ずっと〇〇先生にくっついて遊んでるよ。プッシュポップ持ってると安心するみたい

と、そうくんの人となりを本当にたくさん教えてくれる。ぼくは「発達障害をもっているだろう」という予測の中で、様々な情報を得ようとし、子ども理解の土台としてしまいがちだ。でも、次女の話を聞いていて間違いなく突きつけられるのは、彼女がそうくんのことを「知っている」ということだ。きっとたくさんの時間をそうくんと過ごしてきただろうし、次女が話すそうくんの姿は、そうして積み重なった「理解」だろうと思う。

んーなんというか、そのそうくんのことを話す次女の表情とか、思い出しながら喋る口元とか、そんなところにいつも感動していた。気になる行動を取り出して「発達障害」とすることよりもっと手前の大切なことを教わっているような気がして。

次女とそうくんは一緒に卒園した。園長先生が「がんばってね」と修了証書をそうくんに手渡し握手をした。そうくんは園長先生に「がんばってね」と返していた。
春が来る。



※そうくんは仮名です。


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