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読書記録 漱石の長襦袢

漱石の長襦袢 半藤末利子著 文春文庫 2012年5月10日発行

漱石の孫娘による随筆です。半藤未利子(はんどうまりこ)さんは、文豪夏目漱石の長女筆子の四女、つまり漱石の孫にあたります。

半藤さんは、漱石没後に生まれているので、漱石については、主に母筆子からの聞き書きです。

半藤さんは、漱石の周囲にいた作家、いわゆる門下生に対して批判的です。漱石の妻鏡子と漱石の門下生らとの間に確執があったと伝えられているので、そうした事情が反映しているのでしょう。

タイトルになっている長襦袢は、漱石が着ていたもので、現物は半藤末利子さんから漱石山房記念館に寄贈されて、同館が所蔵しているそうです。

着物について疎くて、襦袢は下着だと思っていたのですが、この本がきっかけでググってみたら、下着にあたるのは肌襦袢で、長襦袢は肌襦袢の上、着物のすぐ下に着るものだそうです。長襦袢の衿や袖の部分が外から見えるので、長襦袢に凝るのがおしゃれなのだそうです。

漱石の長襦袢は写真をみるととても派手な感じです。それで女物だという誤解も生まれたようですが、男物だそうです。漱石はおしゃれだったんですね。

「吾輩は猫である」で、猫に「主人は平常枯木寒巖のような顔付はしているものの実のところは決して婦人に冷淡な方ではない」と語らせています。真面目くさった顔をしても内心大いにすけべ心があると自白しています。おしゃれで当然です。

さて、漱石の遺族と門下生の確執ですが、どっちが悪いかなど、私にはわかりません。

概して悪妻と言われている漱石夫人ですが、本人述、松岡譲筆録の「漱石の思い出」を読むと、夫人に相当の言い分がありそうです。

妻や子に対するDVは絶対良くないことは当然です。

でも、「漱石の思い出」を読めば漱石がわかるか、というとちょっと違うかなあ。と個人的には思います。

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