オーストラリアにも警察による人種差別はある

「Black Lives Matter」ー 黒人の命は大切だ

アメリカで、人種差別に抗議するデモや暴動が起きている。

2020年5月25日、白人の警察官が、黒人であるGeorge Floydを逮捕する際に、無抵抗のFloyd氏の首を膝で8分以上押さえつけて窒息死させた。SNSで拡散されたその時の様子は、見るものに現実を突きつけた。未だ人種差別で人が死ぬ社会だという事実に、多くの人が怒っている。

オーストラリアにいる私たちも、この話とは無縁ではない。

それは、人種差別への反対する気持ちが世界共通だから?
いや、それは、警察による人種差別がオーストラリアにもあるから。

冒頭のビデオは、奇しくもFloyd氏の事件の1週間後にシドニーのSurry Hills(サリーヒルズ)で起こった出来事です。警察官が、17歳のアボリジニーの少年を逮捕する際、足を蹴りはらい、体が宙に浮いた少年は顔面から地面にたたきつけられる様子が収められています。

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▼オーストラリアの拘置所や刑務所で死亡したアボリジニー***************************************


明るみになっている事件として、古くは1987年に、アボリジニーのArthur Moffatt氏が酔っ払って電車で寝ているところを逮捕され、警察の拘置所に入れられている間に死亡しました。死因は低血糖発作です。看守が食べ物を与えたり、適切な医療措置がなされていれば命を落とすような病状ではなかったはずでしたが、救急車が呼ばれたのも遅く死に至りました。

2015年には、26才のアボリジニーの受刑者が、George Floydと同じように胸を膝で押さえつけられ、「I can't breath」と同じ言葉を最後に死亡しています。

1991年以降、統計で分かっている範囲で432人のオーストラリア先住民が拘置所や刑務所で命を落としています。

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▼いびつな先住民の刑務所人口
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2020年6月現在、オーストラリアの先住民の人口は、全体の3%です。一方で刑務所で服役中の受刑者の中では先住民が30%を占めています。

このいびつな数字の差の分だけ「逮捕や裁判プロセス自体に人種差別がある」と言うのは安易な結論ですが、少なくとも、オーストラリアには、社会構造に編み込まれた「負の連鎖」や「人種差別」に先住民の方が今なお苦しんでいることは否定できないでしょう。

アメリカで起きているGeorge Floydの事件を、オーストラリア人も話題にしますが、まるで対岸の出来事として語れるほど自国の現状を知らない様子は、オーストラリアに存在する差別問題の根深さを物語っているのかもしれません。

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