飲食店の新人スタッフの離職と給与の支払い義務について

事務所に寄せられたクライアントさまのご質問にお答えします。

Q: 

勤務開始から2日目に「働き続けられません」と新人スタッフから連絡がきました。トライアル後に続ける意思があることも確認してから採用し、1日(8.5時間)の勤務をしています。この1日勤務のみで退社となりました。

弊社での仕事はお客様の数も多い事もあり、上記のように新人スタッフには予想外の労働環境で、稀に当日に離職するスタッフが出てきてしまいます。
まだ上記のように辞職の意を伝えて退職するケースはましですが、無断欠勤から音信不通になるケースもあります。

このような場合、飲食店の事業主に給与の支払い義務が発生するのかアドバイスを頂けないでしょうか。

A: 

オーストラリアの飲食店に適用されるレストランアワードでは、35.1(d)~(f)条にて次のように定めています。

“(d) If an employee who is at least 18 years old does not give the period of notice required under clause 35.1(b),then the employer may deduct from wages due to the employee under this award an amount that is no more than one week’s wages for the employee.
(e) If the employer has agreed to a shorter period of notice than that required under clause 35.1(b),then no deduction can be made under clause 35.1(d).
(f) Any deduction made under clause 35.1(d) must not be unreasonable in the circumstances.“
MA000119: Restaurant Industry Award 2020 (fwo.gov.au)

簡単に意訳しますと、「1週間の通知を出さずに従業員が辞める場合は、給与から1週間の給与分を上限に天引きできる。但し、その天引きは非合理的であってはならない。」とあります。

本来であれば、1日勤務をしたので、1日分の給与が発生しているところ、当該従業員が1週間の法定通知期間を守らずに即日離職する場合は、1週間分の給与を天引きできます。本件の場合、1週間分の給与を天引きすると残はありませんので、給与の支払い義務は無しになります。但し、その他の状況を総合的に判断して、その天引きが不当または不条理ではないか考慮する余地はないかよく検討してください。個別の状況によっては、給与の支払い義務の議論の余地は残ります。ただ、まずは、レストランアワードの35.1(d)条を理由に給与の支払いはないことを通知して、当該従業員の返答の様子を見てもよいでしょう。

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