0413緒方

こんにちは。5月ミニ公演の稽古場日誌トップバッターを務めます、緒方優紀乃です。今回の公演は、10月に弊劇団が企画している公演を見据えての実験公演、すなわち「ワークインプログレス作品」として位置づけられています。
第一回公演は、あまり手の内を明かしたくないということで、稽古場日誌の公開は一部に留めていたのですが、今回は企画の位置付け的に我々の変化や成長を皆様にも見ていただきたく、どこまでも全てを曝け出す気持ちで書いていきたいと思います。

私は駒場演劇(東大の演劇サークル界隈)に学部時代ずっと在籍しておきながら、今公演が初めての(そしてきっと最後の)演出作品になります。4年間をこのコミュニティで過ごす中で、駒場演劇に対する愛と憎悪を溜め込み続けてきました。今回は、その中で温めていた違和感や問題意識を今回の演出に活かしたいと考えております。

今回の主な演出方針は大きく分けて以下の3つです。
①駒場演劇の保守性・内向性を打ち破る
②スタッフワークのクリエイティビティが作品に寄与する割合を広げる
③より良い会話劇の探求
今後稽古場日誌を読んだり弊団体の公演を見にきてくださる方は、この演出方針を踏まえて見てくださると、我々の意図や目指す方向性がわかって面白いかもしれません。
以上の演出方針について詳しいことは下記の企画書に書きました。本来内部向けである公演の企画書を一般公開することって中々無いと思いますし、結構頑張って書いていると思うので、長いですが是非とも読んでください。(演出方針については5月ミニ公演についてのところに詳しく書いてあります。)


さて、今日から(感染症対策に気をつけながら)対面稽古が始まりました。
演出家をはじめとする表現者は自分の好みや何を面白いと思うのかということを理解していることがまず創作のスタートラインだと思います。
ということで今回の稽古では(演出家としての)私の興味のあること(すなわち現状の私の琴線に触れるもの)or興味のないこと(すなわちよくわかっていない/琴線に触れないもの)をリストアップすることを岩下から宿題として出されました。
wordに自分用のメモとして、書きながら考えているので、正確に言語化されていなかったり、正しく掬い上げられていないこともあるかと思いますが、ここに公開したいと思います。

興味のあること(私の琴線に触れるもの)

・絵としての美しさ(海辺のカフカの舞台)
・出来事(表情とか言葉などの五感で具体的に受け取る一次的な情報というより、そこから観客が理解するやりとり)→すなわち登場人物間の立場とその変化
・関係性とそこから生まれる具体的な描写(ブラックホールシンドローム(余興で行ったかつパラ第0回公演)では登場人物の男女は不倫しているという関係性→浮ついている。男女がそれに対してどういうスタンスかなどという描写に繋がる)
・一般性・普遍性から外れた個人(紙風船では夫・妻だけでは情報量が少ない。人物個人がどういう人間かという特異性)
・微妙な会話の情報量(これはナチュラルな身体での演技の中にあると思う。科学的な視点では、人工的に脳を再現することが限りなく不可能に近い。取るに足らない人智のおかげで観察する関数がいくら増えたとしても、脳の複雑さに追いつけないからだ。それと同様に、日常的な人のコミュニケーションもあまりに複雑で、認識の外で受け取り潜在的にコミュニケーションに利用している情報はかなり多いと思う。(脱線だけど、オフィスマウンテンの会話劇は、人為的な再現からこぼれ落ちてしまう、こういう豊かな身体を舞台上に載せたかったんじゃないかなあ。)人体は、本人が無自覚のうちに多くの情報量をインプットし、それらをアウトプットとして還元している。演技でコントロールできるのは、その中で氷山の一角でしかない一方、観客は水面下の膨大な情報量を受け取ることができる。それらの豊かな情報を人間がコントロールすることによって、全てを舞台上に載せようとするのは無理だし、そうすることによって多くの面白い情報(声の微妙な調子、表情の変化)が取りこぼされている。会話が上手い役者と言われる役者の一部は、この微妙な情報を観客に提供することができるため、観客が豊かな会話の情報量を楽しむことができるのだと思う。もしかして私が上手い映画俳優がわからないの、このせいでは?映像から受け取れる情報量が少ないからでは?)
・ハイコンテキストな会話
両立しなさそうな以上の二つ(ナチュラルな身体とハイコンテキスト)を両立してほしい。役者のリラックスと、意図は両立する。むしろ、遠いもののようで、両者は近い。稽古で、例えばテニスのフォームを練習し続けていたら、ボールの落ちるタイミングと打つリズムが無意識に捉えられるようになる。意識的にやっていたことが無意識になる。一方で、即座に反応する身体も持ち合わせていないと、劇の可能性を下げる事にはつながってしまう。
・照明・音響・舞台の見栄
・役者のプロセス

興味のないもの

興味のないものに関しては、岩下いわく他人に任せたほうがいいとのことだが、興味がない以前にそもそもよくわかってないことが多いので、まずは一度興味のないことについてリサーチしよう。
・ミザンス(三角構図・奥行などのセオリーはあるらしい。役者がそこに立たされるのではなく、そこに役者がいる理由をつける、という考え方なら関心を持てるかも。)
・脚本のメタ的解釈の複数性(演出の仕事というより、観客の仕事だと思う)
・照明・舞台のプロセス
・音ゲー的な会話は、あんまり好きじゃない。もちろん引き出しが必要だとが、小手先のテクニックだと思う。



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