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かつおぶしの缶詰#2

皆様はじめまして。7月に行われる公演より演出助手として参加する副島と申します。稽古場日誌ということで、最近私が得た気付きをいくつかまとめてみようと思います。

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①声について
ある意味当然だけれど、人の声は話す相手や環境によって少しずつ違う。今回の公演ではアーカイブが大事にされているので、(岩下さんのnoteなど参照)議事録を書く時などに何かと自分自身の話す様を見るのだが、Zoomで話している時の私の声は対面で話している時のそれと比べてピッチが低く、声量が小さく、また明瞭でない。これは多分、(録音の質の差を考慮しても、)家にいるという環境が私をリラックスさせてしまっているのではないかと思っている。そういう居慣れた場所では身体は緩みやすい。見えない下半身はダボっとしたものを着がちだし、誰も気にしないから背は丸くなり、ローテーブルだから胡坐をかいている。そうなると自然、声も低くなってくる。「実家では声が低い」という人をよく聞くが、それと近いものがありそうだ。
このように人の居る環境が身体を半ば無意識に変化させるということへの注意は、稽古でも必要とされることだと感じている。次の話題ともつながるが、空間の変化によって演技の変化を促すのは演出における重要なファクターの一つとなりうる。

図2

②演出家は何をしているのか
二つ目はもう少し固め。稽古場にいて”演出”とはいったい何が出来るのかが分からなくなり、主に稽古場において演出家が関与できる要素を上の図にまとめてみた。
図の上段にある要素は物質的で、演出家が操作可能なもの。中段は役者の表出するもので、演出家からも具体的な指示が出来るもの。一番下は感情で、表出されず、主観的になってしまうもの、という風に分けてみた。私がサークルで演劇をやっていた時には中段のような具体的な動きやイントネーション、声色の調整にこだわることが多かったが、最近は上段にあるような空間やミザンスの変化が演技に及ぼす影響に関して興味を持っていた。
そして今公演の稽古で新たに「身体への意識」という要素が追加された。これは岩下さんが稽古の時に「鉄棒の逆上がりのコツ」について熱弁していたことから端を発するのだが、端的に言えば例えば逆上がりの時、実際にそうなるわけではなくても「お腹を鉄棒にくっつける意識で」と教えるとうまくコツを掴む人がいるように、身体に対する(比喩的な)イメージを使って演出をするという方法である(と私は解釈している)。この方法で自分にとって「快い」と感じる身体の状態を調整すれば、無駄な思考を介さずに演技を変化させられる可能性がある。
この方法を先ほどの図に位置付けるならばおそらく中段と下段との中央なのではないかと思う。一見すると役者の動きや声に関する指示をしているように感じるが、重要なのはあくまで身体へのイメージを利用しているという点で、言われたことをそのままやるわけではないということである。それは主観を否応なくはらむが、直接的な感情の指示ほど正体不明ではない。
ただ当然限界はあり、イメージが共有されるか否かは役者と演出とでどの程度共通言語を持っているかにも依るし、うまく「はまらない」演出指示もありうるので、図のそれぞれのレイヤーを組み合わせて稽古をしていくことになるのではないかと思っている。

演出助手としての私の仕事は、今何が起きているかを記録し、こうして解釈することかな、現時点では、と思っています。

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今回はこれくらいで失礼します。今月(6月)下旬の土日にはワークショップも開かれるので是非お越しください。
皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

副島

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