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10万円のカメラで撮る橋本環奈、100万円のカメラで撮る犬のうんち【写真の価値】

以下のインスタグラムの投稿には2億4,000万円の価値があります。

と言われても、ピンとこない人のほうが多いかと思います。

写真に写るお姉さんは、
K-POPアイドルグループ、ブラックピンク(BLACKPINK)のメンバーのジス。

2020年米ブルームバーグ誌「世界で最も影響力のあるポップスター」に選ばれたグループの一人で、
フォロワー数7,900万人(2024年7月現在)にものぼり、
世界を代表するファッションアイコンとして活躍しています。

ブランドのPRやプロモーションに関する投資効果などを表す、
メディア・インパクト・バリュー(Media Impact Value)という指標によると、
まさに冒頭の投稿は174万ドル(2022年当時で約2億4000万円)の価値があると評価されたようです。


経済学で考える「価値」とは何か?  

近代経済学が誕生して間もない18世紀では、
価値の本質は「労働」と考えられていました。

労働時間が1時間で作られる製品と、5時間で作られる製品のふたつがあれば、
「5時間かかった製品の方が価値がある」という考え方です。

「労働時間」や「生産にかかった労働量」という誰がどう判断しても定量的に優劣をつけられ、
「商品の価値は投入されている労働の量で決まる」という考え方を、
「客観的価値説」と呼びます。

しかし「客観的価値説」にしたがって物やサービスの優劣を決めてしまうと、
色んな不便が生じてしまいます。

たとえば、

「このラーメンにいくら原価かかっているの?」
「1杯あたり500円しかかかっていないんだったら500円で売ってよ」

など商品の価値を決めるために、
誰によってどのように作られたかを調べる必要が生じてしまいます。

なので物やサービスの価値を労働量で測ることはせず、
現在の経済学では、
価値は主観で決まる「主観価値説」をとります。

価値と価格の違いについて

「価値」と「価格」の違いを、
世界的に有名な投資家ウォーレン•バフェットは以下のように説明しています。

価格とは自分が支払うもの。
価値とは自分が得るもの。

つまり価格とは、商品につけられた値段のことで、
商品やサービスを得るために、対価として支払うお金のことです。

反対に価値とは、
商品やサービスを得た個人に与える効果や機能、満足感のことです。

「今日食べたA商店の1,000円のラーメンは、昨日食べたB商店の1,000円のラーメンより美味い」

という体験をした場合、
価格は一緒でも「A商店のラーメンの方が高い価値がある」と言えます。

「1枚の写真」の価値は誰がどう決めるのか

年々スマホのカメラ性能は上がっており、
情報の受け手も、ある一定クオリティが担保された写真を見ることが当たり前になっていますが、
プロが使うようなハイエンドなカメラやレンズとの差はまだあります。

その点で多くのユーザーが一般的に目にするスマホで撮った写真よりも、
100万越えをするカメラで撮る写真は、
平均的な写真ではなく、見た人に一定以上のインパクトを与え、
価値ある写真と判断される可能性があると言えるでしょう。

しかし高いカメラは、
写真の価値を作る一要素に過ぎません。

  • 100万円のカメラで撮られた犬のうんちの写真

  • 10万円のカメラで撮られた橋本環奈さんの写真

二つの写真が並べられ、「どちらの写真が価値があるか」と問われたら、
後者が選ばれる可能性が高いはずです。

1枚の写真の「価値」を構成する要素

2013年、橋本環奈さんはかの有名な「奇跡の一枚」で全国区にその名を馳せることとなります。

当時、橋本環奈さんはRev. from DVLという地元・博多のアイドルグループに所属していましたが、
たった1日のきっかけでスターダムを駆け上がることなりました。

ちなみに奇跡の一枚の写真を撮ったのは地元のアイドルファンの方で、
当時使われていた機材はPENTAX K20Dというカメラだったことがわかっています。

ハイアマチュア向けの定価15万円ほどのカメラで、
撮影時には発売からすでに5年は経っており、
撮影当時で10万円ほどの価格だったのかなと想像します。

この橋本環奈さんの1枚の写真にはどんな価値があるといえるのでしょうか?

そもそも写真の価値は、
「芸術的価値」「社会的価値」「経済的価値」
の三つに分けられると個人的に考えています。


1.写真の「芸術的価値」を構成するもの

感情の喚起
写真が強い感情や記憶を呼び起こす場合、それは価値があると見なされるでしょう。
感動や共感、驚きなど、何らかの感情を引き出すことに意味があります。

技術的な卓越性
構図やライティングなど、技術的な要素が高いレベルで実現されていることも、写真の価値を高める要因です。

独自性・新規性
ほかにはない視点やテーマ、アプローチが取り入れられている場合も、価値ある写真の一要素となるでしょう。

物語性
写真が一枚で何かの物語やメッセージを伝えることができる場合、見る人の関心を引くことができます。

美的要素
写真が単純に美しく、魅力的である場合も、それは価値があると感じられます。

被写体の重要性
有名な人物、希少な動物、重要な場所などが写っている場合、その写真の価値は高まります。

撮影者の重要性
撮影者自体にファンが多く存在したり、有名なアーティスト、もしくは自分の好きな人が撮った写真は、「○○さんが撮った写真」という裏付けが価値を作ります。


2.写真の「社会的価値」を構成するもの

文化的・歴史的意味
その写真が撮られた時代や文化、歴史的な出来事を反映している場合、その写真には特別な価値があると見なされます。

学術的意味
研究資料などで使用され、特定の事象や学問の理解を深める手助けができます。


3.写真の「経済的価値」を構成するもの

購買意欲・経済活動の促進
写真は商品の魅力的な表現やブランドイメージの構築に貢献し、消費者の購買意欲を引き出す役割を果たします。
また観光地や特定スポットの魅力を伝える写真は、地域経済の活性化や観光客の誘致に寄与します。


上記のように構成要素を整理してみると、
橋本環奈さんの「奇跡の一枚」は、
写真を価値づける様々な要素を結果的に構成する、
本当に奇跡の写真だったと言えるかもしれません。

まとめ:持たざるカメラマンが価値ある写真を残すには

もしある日、知らないおじさんにカメラを手渡されて、
「価値ある写真を撮りなさい」と言われたら。

先ほども述べたように価値というのは個人の「主観」によって判断されます。

写真の場合、
「価値」があるとみなされる可能性のある要素を写真に内包することによって、
見ている人にその価値を感じ取ってもらえる可能性が高まります。

なのでもしカメラを手渡してくれたおじさんが、
犬のうんち、しゅきしゅきおじさんだったら。

急いで、自分が持っているカメラ技術を最大限に生かし、
犬のうんちを撮るべきなのは自明です。

そうしたらおじさんもきっと「合格」と、
ニッコリ笑ってくれるかもしれません。

でももしかすると、
おじさんはたくさんの犬のうんちの写真を見ているはずなので、
採点は厳しいかもしれないですね。

写真って難しいですね。奥深いですね。

それでは、さようなら。

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