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ゆめのきしゃにのろうよ

 ゆめのきしゃにのるほうほうをおしえるよ。青いあめと、のりたいきしゃのえをよういして、ふとんにはいるんだ。じゅんびはできたかな? さあ、きしゃがやってくるよ。きてきがきこえてくるよ。

 「小説家になろう」サイト、冬の童話2024 参加作品です。
 お子様といっしょに字を見ながら、読み聞かせることを想定しています。



 きみが、ゆめのきしゃにのりたいとおもうのなら、じゅんびがひつようだ。
 まず、お母さんにたのんで、あめをかってもらおう。
 あめは、どんなあじでもいいけれど、ひとつ、だいじなことがある。
 それは、青いあめでないとだめなんだ。
 いいかい、これはとってもたいせつなことだから、ぜったいにまちがえてはいけないよ。
 青いあめ。
 ほかのいろのあめだと、たいへんなことになるからね。
 青いあめを手にいれたら、つぎにひつようなのは、きしゃのえだよ。
 きみが、ゆめの中でのりたい、きしゃのえをかこう。
 できたかな。
 そうか、きみは、そんなふうなきしゃにのりたいんだね。
 よし、ひつようなものはそろったね。
 そうしたら、あとはねるだけだ。
 ふかふかの、あたたかなふとんにはいろう。
 だけど、ねるまえにやることがある。
 青いあめをなめよう。お母さんにみつからないように、こっそりね。
 そーだあじだね。口の中でとけていくね。
 おいしいね。
 あめをなめたら、きみのかいたきしゃのえを、じっとみつめて、めをつぶっても、まぶたのうらにきしゃのえがうかんでくるくらいに、じっとみつめるんだ。
 そうすると、ほら、だんだんねむくなって、きみはもう目をあけてはいられない……。
 だいじょうぶ。
 だいじょうぶ。
 そのままで、もうすぐに……。

 ……ぽお
    おおお
      お
       おお
        ぉ

 ほら、きこえてきたよ。
 わかるかい。
 まっしろな、きりのむこうから、きてきの音がちかづいてくるよ。

 ぽお
  おおおおおおお

 ぽお
  おおおおおおお

 わたた
  わたた
 わたた
  わたた
 わたた
  わたた

 ぽおおおおおお

 しゅっ、とととん。

 どうだい、きみのきしゃがとうちゃくだ。
 さあ、きしゃにのりこもう。
 きしゃは、かしきりさ。
 じょうきゃくはきみだけだ。
 とくとうせきにすわれるよ。

 ぽおおおおおおお
 ぎったん
  ぎったん
   ぎったん
 わたた
  わたた
 わたた
  わたた

 白いきりにつつまれて、きみのきしゃがはしりだす。
 くもの中をはしるようだよ。
 どんどんすぴいどがましていくよ。
 よし、そろそろ、まどからかおを出してみよう。
 なにがみえるかな。
 あっ、木がいっぱい。
 えだがたれさがって。
 はっぱがしげって。
 そうだね、じゃんぐるだね。
 このきしゃは、じゃんぐるをつきぬけてすすんでいくんだね。
 みえるかい、木のえだからこちらをみているいきものがいるね。
 みたことがないいきものだ。
 赤くて、けむくじゃらで。
 おおきな目だまをしているね。
 びっくりしたかおで、こっちをみているね。
 手をふってあげようか。

  りぐりーる!
   りぐりーる!
  りぐりーる!

 ああ、おどかしちゃったのかな。
 なにかさけんで、にげちゃったね。
 でも、いつかともだちになれるといいね。

 あっ、あぶない。
 すぐにあたまをひっこめて。

  しゅおおおおおおん

 もう、いいよ。
 いま、きみのあたまの上を、ぎざぎざのはがはえた、ほそながいいきものがとおりすぎていったよ。
 おいしそうな、きみを食べようとしたんだね。
 こわいね。
 でももう行っちゃったからだいじょうぶだよ。
 
 あ、みて。
 さっきの大きな目のいきものが、また来たよ。
 なにか、青いものをもってるぞ。
 ほうってくるよ。
 うまくうけとめて。
 うん、じょうずじょうず。
 いきものが、さけんでいるよ。

  るぐりーる!(こ)
  るぐりーる!(れ)
  るぐりーる!(あ)
  るぐりーる!(げ)
  るぐりーる!(る)
  るぐりーる!(よ)

 いいにおいがするねえ。
 これは、くだものだね。
 おいしいかい。
 きみのことを、ともだちだとおもってくれたのかなあ。
 

 わたたた
  わたたた
 わたたた
  わたたた

 ぽおおおお
  ぽおおおお
 ぽおおおお
  ぽおおおお

 おや、あの音はなんだろう

 ざざざあ
  ばちばちばち
 ざざざあ

 あっ、これはいけない。
 みえるかい、ほら、ぜんぽうにたちはだかるきょだいなくろくも。
 くろくもが、大きな口をあけているよ。
 口の中では、かみなりがびかびかひかってる。
 どうぶつたちがにげまどっているよ。
 あの中は、おおあらしだ。
 じゃんぐるでは、こういうことがあるんだよ。
 これはいけない。
 あの中にはいったら、びしょぬれだ。
 びしょぬれになったら、きみもたいへんなことになっちゃうよ。

 わたたたた
  わたたたた
 わたたたた
  わたたたた
 ぼおおおおお
 ぼおおおおお
 ぼおおおおお

 でも、このきしゃはとまれないんだ。
 このままじゃ、あのなかにつっこんじゃうよ。
 ああ、こまった。
 よし。
 これはもう、さいごのしゅだんをつかうしかないね。
 きみ、かくごはいいかい。
 いまから、かずをかぞえるよ。
 あいずをしたら、だっしゅつするんだ。
 いいかい、いくよ。
 数えるよ。

      さん、
    に、
 いち

 さあ、いまだ!
 えいっ!
 ああ……さよなら……さよなら……さよなら。
 でもだいじょうぶだよ。
 また、きしゃはくるよ。
 だって、ゆめはまいにち、みるんだから。

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