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耳をすませば

宮﨑アニメについて、わたしは詳しくないけれど、
一つだけ挙げるとすれば、この作品になってしまう。

実に些細なことなのだが、
作品中に「魂」の繋がりや、人との縁のロマンを
感じさせてくれた部分があったので。

このアニメを、ご覧でない方には申し訳ないけど、
ご覧になっていることを前提に、話をしたい。

中学生の女の子、ヒロイン月島雫と
同じ学年の別クラスの男の子、天沢聖司との
恋の物語のような筋書きになっているけれど、
そこは話の本質ではないと思う。

天沢聖司のおじいちゃんで、骨董品「地球屋」の主人
こそ、キーパーソンだろう。

行きつけの図書館へ向かう途中の電車の中で出会った
猫を追って、月島雫は、住宅地の一角の「地球屋」に
偶然たどり着いた。

その日は、たまたま店は閉まっていたのだけれど、
気になって、窓から中を覗き込むと、暗い店内の一角、
猫の人形が一体、目に入った。雫はそれが気になった。

なぜ気になったのか?

後日、雫はふたたび「地球屋」へ行くことになる。
今度は店が開いていて、おじいちゃんと初対面。
出会った当初から、会話は弾んだ。
そして、あの猫の人形「男爵」とのご対面。
その猫の人形をじっと何時間観ていても飽きない雫。

そして、物語の後半。

「地球屋」の暗い店内。温かい暖炉の近くの肘掛け椅子
でうたた寝しているおじいちゃん。夢を見ている。

老人には若い頃、ドイツ?で出会った恋人がいた。
猫の人形「男爵」は、その時の思い出。
その後、戦争が始まって彼女とは生き別れになった。
その彼女に、夢の中で語りかける。

「ルイーゼ。わたしはもう、こんなに
 年を取ってしまったよ」と。

直後、暖炉で燃えていた木片がコトンと音を立て、
目を醒ましたその時、ギギギと音がして、
お店の木の扉が、そっと開いた。

雫が立っていた。

―― この場面。宮﨑駿は、きっと
「気づいてくれたかな? 月島雫はルイーゼの
 生まれ変わりなんだということに」
という気持ちを込めた場面なのだと思う。

はっきりとは言わず、ただ匂わせるだけ。

*****

もう一つの隠れテーマ。

受験勉強よりも大事なこと、雫は本当に
やりたいことを見つけ優先した。それを、

父親は雫の成績が下がっても、認めてくれたが
母親は、こういう時、判断を誤りがちだと。
(雫の場合は、母親代わりの姉だが)

子どもの才能というのは、何処に芽があるか
気が付かないことがある。雫は女の子だが、
特に男の子の場合。

欠点だと思って、それを無理に直そうとして、
大事な才能の芽を摘み取ってしまうことが
母親にはありがちだと思う。
(これは、アニメのテーマからは逸れるが)

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