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Q.寒い土地に例の虫はいるのか?A.いる。ドストエフスキーもそう言ってる

<閲覧注意:虫の話です>

ゴキブリは寒いところにはいない。
そんなふうに考えていた時期が自分にもあった。

私は岩手で生まれた。
そのあとすぐ引っ越してしまったが、爺様婆様の家は岩手にあった。

その爺様婆様の家にはゴキブリがいない。
かわりになんというのか、真っ黒くて足が余ってるのがいた。
婆様はコオロギと呼んでいた。
ふとんのワタを食べるという。

母に聞いたら、やはり岩手にいる時分はゴキブリなんてほとんど見なかったという。
岩手は寒い。
それで「寒いところにはゴキブリはいない」という結論に至った。

ところが、ドストエフスキーを読んだら、めっちゃゴキブリが出てくる。
一番すごいのは、やはり「カラマーゾフの兄弟」だ。
丸太小屋がたいへんなことになっている。

「死の家の記録」もやばい。

これは流刑地の話だ。
昔のロシアでは罪人は牢屋に入らず、シベリアに流される。
主人公も何らかの罪でシベリアに送られ、収容所生活を余儀なくされる。

その収容所で食事が出る。
うすいスープなのだけど、スープ桶の底にゴキブリの昇天したのがたくさん溜まっている。
だれも気にしないでゴキブリが入ったスープを食べる。
主人公もはじめは驚いたけど、こんなことは何の問題でもなかったと書いてある。

ゴキブリなんぞより、もっとひどいことがたくさんあるのだ。

極寒の地、ロシアはゴキブリ天国だった。

考えてみたらあたりまえの話だ。
彼らの生命力を甘く見てはいけない。

私はドストエフスキーによって蒙を啓かれたのだった。

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