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Partner Interview 02[sheep design Inc.]

LANCHは、さまざまな分野のパートナーに支えられて仕事をしています。対等な立場で課題に向き合い、フラットに意見を交わしながら取り組むことのできるありがたい存在。ここでは、そんなプロフェッショナルたちをご紹介します。第二回目は、名古屋のデザイナーであり、キャンドルメーカーであり、ショップ経営者でもある「sheep design Inc.」の山川立真さんです。


ー sheepさんは、創業時からデザインとキャンドルでスタートしたとお聞きしました。キャンドルはどうして始まったんですか?

山川
僕の前職は大手印刷会社でした。そこでアートディレクターとして働いていたんですが、よく食品カタログを担当していたんです。毎週のように料理の先生と食の撮影をして、僕自身もレシピを考えたりして。ちょうどマクロビオテックという考え方に興味を持った時期でもあって、どんどん自然志向になり、素材にこだわりきった食事を意識的に食べるようになりました。

そんな中でも、キャンドルだけは普通の市販品をつかっていたんです。最初は気にもとめていなかったんですが、ある時から急に匂いが気になるようになって……。

調べてみると、石油から作られたパラフィンという化合物が匂いの原因だろうと。ならパラフィンを使わないキャンドルはないのかと調べたら、海外でソイワックスという大豆由来の成分作られたキャンドルに出会いました。これだ! と喜んだものの、当時日本にはほとんど流通していなかったんです。だから仕方がなく自分で作り始めました。完全に自分が欲しいから、というスタートですね(笑)。

独学でレシピもないので、配合ひとつ、混ぜ方ひとつが手探りです。でも、キャンドルを作っている人は珍しかったんでしょうね。興味を持ってくれる人がいて、小さなイベントで売り出しました。商売にするというより、おすそ分けしているような感覚です。一番初期の商品には「火がつかない」というキャンドルとしてはありえないクレームもありました(苦笑)。本当に試行錯誤の連続でしたね。


― ソイキャンドルの魅力ってなんですか?

山川
天然素材だから鼻につく匂いがなく、食卓でも楽しめることですね。飲食店さんからも「使わせてほしい」という声をよくいただきます。やっぱり、すべてが天然素材のキャンドルってまだまだ少ないです。パラフィンだけでなく、香りづけにも化学合成の香料を使うものが主流ですから。

sheepのソイキャンドルの香りはすべて精油。匂いとか煙がイヤで、それでもキャンドルを使いたいというニーズを持った人たちが、sheepのソイキャンドルにたどり着いてくださいます。そういう人たちを裏切らない、嘘のないものづくりをこれからも続けていきたいです。

……ちょっと真面目すぎますか?(笑)


― いえいえ(笑)。ところで、キャンドル事業は5年以上続けられていますが、何かターニングポイントとなったことはありましたか?

山川
まだ会社員時代の、趣味の延長でやっていた頃です。とあるクリスマスマーケットに出店した時に買ってくださったお客さまから、Facebookでメッセージをもらったんです。「来週、手術をしなくてはいけない。精神的に参っていた時に、この灯りをみてすごく癒されて元気が出ました」と。さらには、手術も成功しました、というメッセージでした。

……いまだに、思い出すだけで胸にくるものがあります。モノを作って人に届けるというのは、そういうこともあるんだなって。キャンドルで、微力ながら一人の役に立つことができた。その経験があってからは、自分からやめるという選択肢は持たないでおこうと決めました。それが自分にとってのモチベーションです。一人の人に届けることの大切さを知ってしまったから、事業の拡大に目標を持たなくなりました。だからキャンドルは、営業もしないし、広告も打っていません。


― 2017年にはショップ「cont」もオープンされました。デザインとキャンドルと、ショップ運営。どのようにバランスをとっていますか?

山川
まず、このショップを作るまでにずいぶん悩みました。今はアルバイトの子を入れて4人体制ですが、当時は僕とアルバイトの2人だけ。デザインとキャンドルの製造をしながらの店舗運営はさすがに無理だろうなーって。

でも、ソイキャンドルを扱ううちに、素材と健康に関わることが想像以上にみんなに知られていないことに気づいたんです。その延長線上には、広告やメディアで流れているものばかりを手にとってしまう、という僕らの行動にも繋がっていて。

そこに、なんだか違和感を感じたんです。みんなが知らなくても良いものはたくさんあるよ! ってことがどうしても伝えたくてcontを開きました。最初は人手不足で、お店を開くのは週に一度。それでもわざわざ来てくれる人がいて、ありがたいです。ほんとに。

デザインやキャンドルとショップ。それらは別にはっきりとした線引きをしているわけではなくて、この3事業が三位一体になっていることがsheepの価値かなと。キャンドルというモノをつくって、伝えるためのパッケージやホームページをデザインして、ディスプレイや接客でお客さまに直接お伝えする。どこに比重を置くでもなく、全部が必要だと思ってます。


― デザイナーとしては、クリエイティブ以外に自分の商品を持っていることは、大きな強みになりますよね。

山川
そうですね。ソイキャンドルのことは本当にいいものだと思っているので、すごく積極的に営業をかけるかというとそうでもなくて。ちょっとした会話の中で「キャンドルもやってるよ」というところから興味を持ってもらいやすいという良さを感じています。

あとは、各方面から「いろんなところで名前を見かけるよ」と言ってもらいます。独立したばかりの頃は、がむしゃらに人と出会っていた時期もありましたが、今は3つの業態を通して3種類のジャンルの人と出会えるので関係性にも広がりが生まれることを実感します。


― ところで、LANCHと仕事をすることは、sheepさんにとってどんな良さがありますか?

山川
僕にとっては、加藤さんは本当に必要としていた人です。まず一つは、クライアントと対等に話ができて、しっかり方向性を定めて運転してくれること。さらに撮影やディレクションといった制作側の知識もあるから、すごくやりやすいです。自分がクリエイティブを追究することに専念できます。これまでパンフレットなど単発で受けていた会社さんも、加藤さんと組むようになって深く関係性がつくれるようになりました。これは、今までにない経験です。

あいだに代理店さんなどを挟むと、どうしても関係性が深まらずに進みがちですから、タッグを組めるのがありがたいですよね。お客さんと、どんどん深まっていく感じがありますよ。


― 山川さんはご自身でモノを作って売っているから、デザイナーとはまた違う目線で話ができるし、僕にとっても貴重な存在です。

山川
仕入れや展示会などの経験もずいぶんしてきました。まだ規模は小さいですが、流通の話ができたりすることが、モノを作って売っている者の強みかもしれませんね。加藤さんにも「左ききの道具店」がありますよね。お互いに商材を持っているのだから、流通やPRという視点でも深め合っていけるといいですよね。

僕は、次にやりたいことの一つに、海外で頑張っている無名の作家さんのプロダクトのディストリビューターをしたいという野望があって。自分のモノづくりは、ソイキャンドルとcontでの展開を充実させていけばいい。今度は共感できるブランドや作家さんを、責任を持って伝えるクリエイティブ……つまり実際に仕入れて表現して売るところまでを手がけたいと思っているんです。面白そうなことを、どんどんやっていきましょう。ぜひ一緒に。

[Partner profile]
シープデザイン株式会社
設立:2018年4月11日(創業2014年)
代表:山川 立真(ヤマカワ タツマ)
所在地:愛知県名古屋市中区正木1-13-14 愛知県製綿センター1A


Text, Photo 加藤信吾(LANCH)

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