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「ガクチカ」を通じて私が面接で見たかったもの

就活生の皆さん、暑かったり寒かったり花粉が飛び交う中、就職活動お疲れ様です。楽しめていますか?


第一希望の企業や、やりたい仕事が既に見つかっている人、まだ模索中の人、就職するか進学するかで迷っている人、それ以外の選択肢も含めて検討している人、状況は様々だと思います。

「キャリア」を考える上で"就職"は選択肢の一つです。何をするにしてもお金が必要となることは多いので、働くことの必要性は大きなものですが、やっぱり就職は一つの選択肢でしかありません。仕事以外の何かにチャレンジをしてもいいし、今は何もしないという選択をしてもいい。自分の人生なので好きに選べばいいと私は考えています。
#とはいえ、新卒での就職活動と就職は人生で1回しかチャンスはないけれど。


先日、大学の後輩(といっても、15年くらい離れている)からOB訪問を受けた際に「ガクチカを聞いてもらえますか」と相談されて、話を聞きました。ざっくりとした内容は多国籍の留学生が住む学生寮の寮長として交流イベントを企画し、実行したというもの。実行にあたっての問題は2つあって、一つは他の実行委員のモチベーションが低かったこと。もう一つは参加者が集まらなかったこと。でもって、彼が色々働きかけてうまくいった。というエピソードでした。


私は彼に正直に感想を伝えました。
エピソードのテーマとしては可もなく不可もなくという感じ。彼としては"多国籍な学生を巻き込んだ"というところをキラーワードとして語っていたけれど、実はバックグラウンドの違いがハードルになっているエピソードは珍しいものではない。どのような工夫をしたのか具体的な情報を盛り込んだり、何が上手くいったのかを定量的に示した方が努力や結果の凄さが分かりやすくなる。そのようなことを伝えました。


ガクチカは就活生が学生時代を振り返り、絞り出し、校正を繰り返してブラッシュアップしたものだということは理解しています。もうずいぶん昔のことですが、私にも就活生の時代はありましたし、当時も今と変わらず「学生時代に頑張ったこと」は代表的な質問の一つでした。
#ガクチカという呼び名は当時はまだありませんでしたが


時は流れて採用面接を受ける就活生の立場から、採用担当となり毎年の新卒採用を経て思うことは、大抵の就活生は同じような話をするということです。
・サークルや課外活動を頑張った話
・アルバイトを頑張った話
・留学や勉強を頑張った話
・旅行やヒッチハイク、その他の趣味を頑張った話
この辺りが王道のテーマでしょうか。そして話の展開は、熱意をもって始めた→うまくいかない(人の問題)→努力する→うまくいく こんな感じでしょうか。

日本の4年生大学に通い、ある程度同じ枠組みの仕組みの中で生活を送っている以上、類似した経験をしたり、エピソードが似通ってくるのは、いわば当然のことだと思っています。なので私は、どういうエピソードを選ぶかというのは、実は重要ではないと考えています。
#たま~にぶっ飛んだ学生がいて面白いと思ったり圧倒されることもあります

では、なぜ多くの企業が採用選考の中で「学生時代に力を入れたこと、頑張ったこと」を聞くのでしょうか。
ひらたく答えるならば、それしか聞くことが無いからです。採用面接の中で"企業側"が確認したいことは、採用した場合に自社で活躍出来そうかどうか。この1点に尽きます。
#問題を起こさないかどうかを見ている人事もいますが。


中途採用の場合であれば、過去の業務経験の中から、仕事に関するエピソードを聞き、どういったスキルを持っているのか、どのような得意不得意があるのかの情報を集め、採用基準を満たす能力を持っているかどうかを判断することができますが、新卒の方の多くは、アルバイトなど限られた就業経験しかなく、業務スキルを判断する情報に乏しいため、代替として「学生時代にどのようなことに取り組んでいたのか?」を聞いているわけです。


話を戻すと、私は学生が取り組んだ課題自体にはそれほど興味がありません。なぜならば似たような課題の話を他の候補者からもたくさん耳にしているからです。そんな私が興味深く話を聞き、観察しているのは下記のようなことでした。

①なぜその事象を課題と感じたのか(どのような背景から問題意識を持ったのか)
②課題をどのように定義し、どのような解決策を描いたか。また、その解決策を見出すために、どのような手順を踏んだか。
③解決策をどの程度実行できたか。
④当初の課題がどの程度解決したか。(どのように自己評価しているか)
⑤新たに発生した課題や最初の解決策で解決しなかった点について、どのような対応をしているか。
⑥一連のプロセスを通じて、何を学んでいるか。
⑦ ⑥で得た学びや気づきをどのように活用しているか。
#自分が学生の頃はそんなに深く考えていませんでしたが棚上げします
#あくまでこれは私が採用担当だった頃の視点です


少し詳細を補足させて頂きます。
上述の①では、その人の価値観について理解しようとしています。同じエピソードテーマであっても、人によってその捉え方が異なるため、個性が表れやすいポイントです。面接の場で「なぜ・・・・?」という質問はよくありますが、これは問題と解決策のロジックを確認する質問であり、同時に価値観や課題意識などの個性を知るための質問でもあります。

②の解決策のプランについては、主に論理性を見ています。さらに自分の頭の中だけで考え行動するタイプなのか、他の人と協力するタイプなのかも見えてきます。他者と協力する方が回答としては良さそうに見えがちですが、シチュエーションのより、どちらのタイプでも結果につなげることができるので、純粋に思考タイプかという見方をしています。
#とはいえ、他者の知見やインターネット、本などをツールとして活用出来ている方が、妥当な解決策を見出しやすいように思います。

③の実行は、行動力や達成意欲みたいなことを見ています。仕事でもそうですが、こうすれば上手くいくと思ってやってみると、途中でつまずくということも多々あります。或いは、妥当と思って考えた解決策が実は的外れだったということもあり、その妥当性を本人に確認してもらうこともあります。

④ここも論理性を見ています。課題をどのように定義していたか(Qの設定)に対し、結果がどのようなものだったのか(Aの設定)、この2点を比較することで、QとAが適切に合致しているか、また主観的な判断となっているのか、客観的(定量的)に評価が出来ているのかを見ます。職種にもよりますが、多くのお仕事では、定量的に物事を測ることだったり、客観的に評価することが求められ、ビジネスコミュニケーションの基本となりやすいからです。

⑤ではPDCAのCAが意識されているかどうかを見ています。算数の問題とは異なり、ビジネスは継続的に改善することが求めらているため、振り返りと追加のアクションが重要です。また発生した課題に対しての解決策が十分ではないということはビジネス上では日常茶飯事に発生することなので、そういった追加課題を適切に認識し、それに見合った対応策を検討し実行できるということがとても重要視されているためです。

⑥ここで再び個性や価値観を見ています。同じ事象やプロセスを経験しても、そこから何を学ぶのかということは、個人差があります。どういうことに着目しているのか、何が大事なことだったのか、そういうことが"学びの結果"に表れてくることが多いように思います。また、一つの経験からどれだけたくさんのことを学べるかということも、将来的な成長に関わるため、新卒採用ではとくにカバーしておきたい点です。

⑦ここでは応用力であったり、学習能力について確認しています。過去の経験をどのように先々の力に変えていくことが出来ているのか、学びを次の行動に移せているのかを確認することで、仕事を通じての成長性を見定めようとしています。


このような感じで、ガクチカはその人の個性を知ると同時に"ポテンシャル"を測るためにも使いやすいのです。そういう意味で企業と学生の双方で暗黙の合意が得られているように感じる。
#企業ごとに全然違う質問だと、企業のカラーが見えて面白いが準備する側は大変


どんな企業であれ、新卒採用には金銭的、人的に大きな費用が発生する重要な先行投資なのです。そういう意味でとっても面接は大事な瞬間なのですが、同時に採用担当は何十人、何百人(大企業であれば何千人)の学生の中から、よりよい人材を選抜しなければならないため、ある程度の仕組化をしなければ、却って一人ひとりに向き合うことが出来なくなるというジレンマを抱えています。ガクチカにどのようなテーマが選ばれていたとしても、そこについて細かな良し悪しは議論されません。
#とはいえ最低限どのビジネスマナーや常識は必要
#下ネタとか犯罪の話は不適切。飲み会の話もちょっとグレー


私は新卒採用においてはハードスキル以上にパーソナルスキルや個性の方が重要だと考えています。ハードスキルは後から学習によって補填がしやすいものが多いですし、新卒採用はそもそもノースキル前提で行われています。一方でパーソナルスキルはそれまでの人生である程度出来上がりつつあり、且つトレーニングなどで矯正することが難しい領域だからです。(そもそも"矯正"が必要な環境にいることは、お互いの不幸につながる)


就職活動で自分が希望する企業に入社出来る人はひょっとしたら、ごく一部かもしれません。それでも、その人にピッタリのキャリアはどこかに必ずあります。人によっては大規模な会社かもしれないし、ベンチャーかもしれない。或いは、研究者かもしれないし、家事かもしれない。どんな道であれ、自分がイキイキできる領域を見つけることが、就職活動の一番の醍醐味のように思います。

色々と考えることは多いし、SPIの準備はあるし、面接対策はしないといけないし、、、とめんどうくさいこともたくさんありますが、折角の機会なので、自分に合った"キャリア"を頑張って見つけてください。人生は長いので誰に何を言われても焦る必要はありません。

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