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障がい者雇用のリアルを聞く

今日は前職の後輩が福岡に来るということで、ランチを共にしてきた。
私は彼の採用選考の際から携わり、5~6年くらい同じチームで仕事をしていた仲なので、よくも悪くも彼の特性についてはよく理解している。

”特性”なんていう書き方をしたが、彼はADHDと診断されており、障碍者手帳も取得していた。

ADHDとは
注意欠如・多動症(ADHD)とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態です。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。

国立精神・神経医療研究センターHPより

ADHDという診断だったけれど、順序立てた行動が苦手というよりは、空気を読んだ対応とか、白黒ハッキリしないような曖昧な状況が苦手というくらいで、あとは普通に仕事も出来るし、論理だてて物事を考えて行動できるし、ちょっと個性の強い青年くらいの感覚だった。

彼は曖昧さや雰囲気を読んで対応するみたいなことが極めて苦手なので、指示を出すときは可能な限り具体的にすることや、成果イメージを具体的に示すことなどの工夫はしていた。ただ、裏を返すとそういったところだけ気を付ければ、あとはきっちり仕事してくれるありがたい存在だった。

当時、私のチームは、マネージャーの意図もあって、半数位のメンバーが何かしらの障がい者手帳を取得している人たちだった。身体障害、精神障害、発達障害、知的障害など、色んな特性を持っている人がいた。私はそのチームに入るまで、障がい者手帳を取得している人と一緒に仕事をした経験はなかったが、自らも障がい者採用と担当したこともあって、けっこう勉強したと思う。

障がいの特性のこと、特性に合わせた配慮のこと、本人の障がい受容のこと、職場での啓蒙活動のこと、職場環境の整備、指示系統と方法の整理などなど、支援団体の協力を得たり、勉強会に参加するなどして、色々なことを学ばせてもらった。

実際に、チームメンバーとして一緒に働く中で、気づいたことは、障がい者というのは、別に誰かから一方的に守られ、フォローされるべき存在ではないということだ。
完全に私の個人的な考えになってしまうけれど、障がい特性というのは、1つの際立った個性で、周りの人よりも得意なことや不得意なことの濃淡が濃かったり、線引きがはっきりしていた個性なのだろうな、と思う。
だから、特性をしっかり理解した上で、適切なポジションに配置したり、環境を整備すれば、しっかりと成果を出してくれる。逆に、特性を鑑みずに相性の悪いところに配置すると、お互いに不幸になってしまう可能性やリスクが高まる。

”障がい者”と一緒に働くことで、コミュニケーションの取り方や指示の出し方、協力の仕方など、たくさん学ばせてもらった。私がそのチームにいたのは、数年間だけだったけれど、とても学びの多い期間だった。

まぁ、会社としてもわりと早い段階からD&I(Diversity and Inclusion)に力を入れていたこともあって、色々な人が働きやすい環境づくりに積極的だったことも、私や彼らがうまく協力しながら働けていた要因の一つかもしれないが。


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そんなチームの一員だった彼も、前職を退職し、また違うキャリアを歩んでいるらしい。前職はアメリカ系の企業だったが、現在では日系の企業へ。

外資系だからとか、日系だからという区分けの話ではないが、彼の働く日系の会社ではD&Iは全くと言っていいほど進んでいないらしい。商品を聞けば多くの人が知っているような、大手企業であるにも関わらず、だ。

従って、障がい特性の理解やら、配慮やらが完全に抜け落ちている環境の中で、彼は今どのように働いていくかということを考えながらキャリアを検討しているらしい。

彼の言葉を借りると、障がい者が必要としている配慮とか理解っていうのはまだまだ当たり前に得られるものではないのが現実。障がい者雇用は法定で決まっているから、色々な企業が積極的に採用はしているものの、採用することがゴールになっていて、その先の働き方やキャリアに結びついていないこともたくさんある。らしい。

厚生労働省によると人口の約7.4%(約936万人)が障がい者ということになっているらしい。(※平成27年度時点)およそ14人に一人という割合。
ざっくりいうと、横浜市と大阪市と名古屋市の人口を合わせたよりも少し多いくらい。

これ、もはやマイノリティでもなくて、属性でいうとかなりのマジョリティと言っても過言じゃないという気もするけれど、まだまだ理解も受容も進んでいないのが現実。

14人に一人っていうと、2家族いれば2~3親等以内に1人くらいはいる計算になるから、割と身近な話なのだろうけれどな。私の亡くなった祖父も聴覚障害者だったし。

もっと身近なものにするには、どうすればいいんだろうな。


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