軍人採用という取り組み
先日受けたアスリートキャリア支援の講座のことを考えていたら、ふと前職で行っていたMilitary Hiringという取り組みのことを思い出した。
Military=軍隊のことなので、Military Hiringを直訳すると軍人採用。
といっても、私が勤務していたのは特務機関やPMCなどではなく、一般企業。従って、軍人を軍人として採用していたのではなく、現役軍人ないし元軍人を現場のマネジメントクラスとして採用をするということを行っていた。もっとも、日本に軍隊はないので、日本法人ではMilitary Hiring=自衛官採用だったわけだが。
一見すると、一般企業の中に軍隊や自衛隊のキャリアが活かせるポジションがどの程度あるのだろうか?と違和感を感じる人もいるかもしれない。
自衛官の幹部クラスが行っていることというのは、人や物資の調達と配置、或いはそのための人材育成や、目標達成のための計画設定などである。すなわちこれは、マネジメントそのものということになる。そもそもビジネスの世界には、元々は軍事用語だった言葉がたくさん転用されている。(Strategy, Operation, Tactics, Logistics, Agility などなど)
人・物・金・情報を的確に管理し、活用するというマネジメントの経験は、業種が違っても汎用的な部分があるという考えのもとで、Military Hiringは推し進められていた。実際、私がいた日本法人でも自衛官や退役自衛官を採用して、高い成果を創出するチームが生まれたということもあった。
しかしながら、全ての自衛官出身者がうまくフィットしたわけではない。
それは、能力の問題ではなく、カルチャーフィットの問題というところが大きかった。
軍隊という特殊な組織においては、チームワークなどが重宝される面があるが、同時に完全な上意下達の組織文化がある。指揮系統の乱れは作戦成功に大きなインパクトを持つため、その徹底というのはとても重要な要素であるが、前職においてはトップダウンとボトムアップの双方向のコミュニケーションを重視していたので、ミスマッチが生じてしまったというところがある。
もちろん面接などで、そういった部分は丁寧に確認していたけれど、一緒に働いてみるとお互いに「これは、思っていた以上に・・・」というところがあったことが露見したという訳である。
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冒頭の話題に戻るが、アスリートが異業種異職種に転職するというのは、自衛官が一般企業に転職するのと似たような要素をはらんでいるのではないかと思う。
アスリートとして培った経験の多くが、一般的なビジネスの中で汎用性のあるものというのは、既に研究されているところではあるが、スキルセットのマッチングとは別に、カルチャーフィットというのはより複雑さや難しさがあるのかもしれない。
アスリートが、競技者を退いた後のキャリアを考える際に重要なことは、ビジネス領域でどのようなことが出来るかというスキルセットを考えることの他に、どのような組織、文化の中であれば、自らのポテンシャルを発揮しやすいのかを理解し、そういった環境を見つけることにあるのではないかと思った。
この辺りのパスが明確に描けるようになってくると、キャリア支援やキャリア開発の可能性がぐんと上がるのだろうな。
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