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年末年始コンサドーレ特番を見て、改めて検証してみた2018シーズン

 年末年始は帰省していたので、北海道の情報に触れることが増えました。民放各社で2018年の道内プロスポーツ振り返り特番のようなものをやっておりまして、一番はやはりファイターズ、次いでコンサドーレという感じで報じておりました。レバンガについてはまだシーズン中ということもあり、振り返りというよりは日々のゲーム結果がメインでしたね。

来シーズンは何を期待しながら待てばよいの?

 総じて、2018シーズンの北海道コンサドーレ札幌は大健闘、今までにない景色をサポーターに見せてくれた、という総括。本当にその通りだと思います。とはいえ、これから開幕するアジアカップが終わればもうすぐJリーグも開幕になります。来シーズンへの伸びしろはあるのか、何を期待しながら来シーズンを迎えることができそうか、そのあたり、そろそろそわそわしてきます。選手の契約更新も完了したタイミングで、2018シーズンの振り返りと展望など、まずは簡単にしていこうと思います。

監督交代とともに、2018シーズンは昇格貢献メンバーたちとの別れからスタート

 思い返せば2018シーズンは寂しさとともにスタートしました。2017シーズン最終節に発表されたJ1昇格と残留に貢献してきた四方田監督の監督交代(ヘッドコーチ就任は嬉しかったですね)、そして選手たちの放出。J1上位を目指し、あるいは新たなサッカースタイルを構築するために、あるいは選手自身が出場機会を得るために、毎年プロとして生きることの難しさ、誇り高さを感じるところです。個人的には、ミシャの下で指導を受けたマセード選手、石井選手などは少し見てみたかったですが。
 加入選手としては、浦和レッズにてミシャの指導を受けていた駒井選手、川崎フロンターレでは出場機会が少なかったとはいえ世代別代表でキャプテンをつとめる三好選手、個人的には横浜FC時代の印象の強い菅野選手など、要所を任せられる選手がそろいました。平均身長こそ下がりましたが、個人打開のできる選手、若手選手への移行が図られ、新しいスタイルを予感させてくれました。

四方田体制で活躍の選手を軸に。今後は下部組織にも落とし込んだ育成体制を

 新加入・退団選手を交え、実際のスタメンは上記の通りでした。駒井選手・三好選手はシーズン通してスタメンでの起用が多く、他の新加入選手はサブ起用中心あるいはカップ戦での出場がメインとなりました。多くは2017シーズンから在籍していた選手が中心となっています。
 欧州リーグなどでは、今回のような実績監督が就任する際は、監督側から就任の条件として戦術に合う選手の獲得を要請されることがありますが、今回についてはあまりそうした流れは感じませんでした。獲得にかかる資金力がないこともそうですが、野々村社長が今回ミシャに依頼したのは3年かそれ以上の期間をかけたプロジェクトだということからではないかと思います。外部補強による変化よりも、在籍選手の育成、更には下部組織の育成も併せて行いながら、トップで通用する攻撃的なサッカーを根付けていくというプランを実行中ということではないでしょうか。
 よくある話ですが、トップチームのフォーメーションが4-4-2なのにユースチームが3-4-3でやっているチームはどんなに強くとも噛み合った育成とは言えません。ユース世代でもミシャ式をどのように浸透させるのか、あるいはその土台を作っていくのか、そちらも注目です。

『ミシャ式』3-6-1の導入。"5トップ"という魅力的な響き

 2018シーズンより就任したミハイロ・ペトロビッチ監督。超攻撃的サッカーを掲げるミシャ式戦術の形のひとつが、上図の5トップ型です。2018シーズン、これは多く発現した形になります。
 攻撃時、1トップに2シャドー、両ウィングが相手のDFラインに張り付き、形上は5トップに。そして、両サイドバックも高い位置を取り、ボランチが一枚DFラインへ落ちることで2バックを形成します。(ミシャ自身リベロの経験もあるためか、そのポジションの選手には本当に多くのことを求めています)
 これにより、相手のFW-MF-DFの3ラインを間延びさせ、バイタルエリアにスピードを持って侵入することを助けます。また、活用できる攻撃スペースが最大化するので、相手の守備にかかる選択肢を増やし、常に迷いを持たせながら優位性をもって攻撃を繰り返すことができるようになります。
 反面、中盤に空洞ができているのはコンサドーレも同様なので、綺麗にターンオーバーされると、格好のカウンター機会となります。また、上図の状態を機能させるためには相手DFラインを押し込むことも必要です。ボールを保持したままパスとドリブルを使いながら自陣からボールを運ぶプロセスの中にも、相応のリスクがあると言えます。現に、川崎フロンターレ戦(AWAY)では、こうしたビルドアップにおけるパターンを解析され連動したプレッシングから大量失点を重ねることとなりました。
 "ミシャ式"については非常に話が長くなりがちなので、今回はここまでとします。実際にチームのミーティングに参加したわけではないので本当のところは何とも言えませんが、2018シーズン中の完成度は決して高くはなかったように思えます。

ゴール数、シュート数はともにリーグ上位クラスまで接近も

 2017シーズンまでの守備スタート型から、攻撃型に戦術・メンタル的な切り替えがあった2018シーズン。実際に数字はどうだったのか。シーズンごとのリーグ内順位も併せてまとめてみました。上図は1試合平均の数値になります。
 2017シーズン順位は11位でしたが、ゴール数・シュート数は11位以下、すべてリーグ平均未満となっていました。2018シーズンはリーグ順位4位と大健闘でしたが、ゴール数は7位、シュート数は5位となっています。前年と比較すると、これはジャンプアップと言えます。しかし同時に、いかに2018シーズンの4位という順位が劇的に、あるいは最小限に積み上げられた勝ち点の末の結果だったのかわかります。相手のあることですが、戦術面の成熟により、こうした攻撃指標はまだまだ積み上げを期待したいところです。

昨年よりも増加した被シュート数もポジティブに考えたい

 先述した通り、攻撃サッカーを掲げるミシャ式には、失点リスクが付き物です。被ゴール数、被シュート数、被シュート到達率(被シュート数/守備回数)のどれもがリーグ平均未満となっています。また、被シュートに関しては2017シーズンよりも数値は悪化しています。
 とはいえ、非常に未完成の中で運用していたシステムであったことを考えると、むしろ、ピンチの数に対して決してスタイルを途中でネガティブに変化させなかったことは監督のポジティブな姿勢が見て取れます。また、被シュート数が前年よりも1試合あたり2本ずつ増えていることになりますが、失点数の増加数は微少でした。ピンチを水際で止めることができた回数はむしろ増えています。

堅守速攻からポゼッションサッカー、攻撃的サッカーへ。数値上の成果もくっきりと

 発展途上ということで、ゴール数についてはなかなかリーグトップ4に食い込めなかった2018シーズンでしたが、目指したい姿に対して明確な結果が出た部分もありました。ボール支配率4位、シュート到達率(シュート数/攻撃回数)2位、ペナルティエリア進入回数3位とリーグ上位の数値となりました。その他攻撃指標においても前年から大きく改善しています。特に、ボール支配率については、2017シーズンは全34試合中28試合で50%を切っていたのに対し、2018シーズンでは22試合において、50%以上のボール支配率を記録しました。

しかしボール支配率の向上だけでは勝利のファクターになり得ていない

 ボール支配率が高まれば、優位に試合を進めることができ、点を多くとることができ、試合にも勝つことができる。個人的には、現代サッカーにおいてはそうも言い切れないと思っております。有効的なボール保持、相手に負荷をかけることのできるボール保持ができることが、ポゼッションのスタイルをとるチームには必要であり、それが出来れば相手にとって非常に脅威となります。Jリーグでいうと、川崎フロンターレや浦和レッズのビルドアップはプロセスの中で相手の配置を片寄せさせたりずらす意図があったり、どこからキーパスが出るかわからない緊張感があります。
 結果として、コンサドーレは2018シーズンボール支配率こそ高い数値となりましたが、それが単純に勝利に結びついたというわけではありませんでした。むしろ相手にボール支配率を多く取られた試合の方が獲得勝ち点は多く期待できたことになります
 

2019シーズン注目は、戦術的完成度の成熟過程

 2018シーズンは、見てきた通りにまだまだ完成度の高くないチームが劇的な勝利や引き分けにより勝ち点を積み重ねた結果の4位でした。その中で、攻撃指標には明確な成果もあらわれはじめた一年でした。
 2019シーズンは戦力も新たになり、戦術浸透には改めて時間のかかる部分もあるかと思います。ビルドアップにおいて相手を動かす意図を生じさせることや、押し込んだ際にカウンターを生じさせないための約束事、ハイプレスに対応したビルドアップのパターンなど、積み上げられるものはその他にもあるかと思います。2018シーズン苦しんだものに2019シーズン少しでも対応できるようになっているかどうか、そしてストロングポイントが更に強化されているかどうか、そうした成熟過程を2019シーズンは楽しみに観戦していきたいと思います。

 ちなみに、私の投稿に用いさせていただいたデータは、以下より引用させていただいております。非常に興味深いデータやコラムも掲載されており重宝しております。
・データによってサッカーはもっと輝く Football LAB
www.football-lab.jp/

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