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住友林業のCMが面白い

 住友林業のCMを、まずはご覧いただきたいですが。

 小日向文世さんが、森が伐採されている光景を見て「切っているね」みたいにつぶやいて、そこに、森の精だか山の精だかを演じるジャニーズっぽい美少年が、でも植えれば大丈夫、みたいに言って、要は、頑張って森を作っていこう的な話だと思うんですが。このCMがいかに滑稽かということを話します。

 まず、このCMの森は、森じゃありません。「林」です。森というのは自然に生えているもの、白神山地とか、屋久島とか、ああいうのが「森」です。それに対して「雑木林」というように、人が利用するために植えているものは、林です。「生やしている」から「はやし」なんです。ま、微妙なのは果樹園でして、りんご畑なんかは果樹だから本来は「りんご林」と言っても良いかもしれませんが。ともかく、人間が利用するために木を植えているところが、林です。

 雑木林は、落ち葉を堆肥として使うとか、薪を利用するために植えられています。さて、この住友林業のCMの林は、ヒノキです。遠景だとスギかヒノキか分かりにくいですが、最後に小日向さんが植えているのはヒノキの苗木です。何のために植えているのかというと、材木を使うためです。ですから、これは自然の森ではなく、材木生産工場なんですよ。リンゴを収穫するために植えたり、大根を畑に植えるのと同じなんです。

 例えば、大根が畑にずらっと植わっていて、それを引っこ抜いて、それを見た小日向さんが「なんだか寂しいね」とか呟いて、畑の精だか大根の精だかを演じさせれている美少年が「でも大丈夫、また植えればいいさ」とか言って、大根の種まきをするという農協のCMがあったら、何してんねんお前ら、と思うでしょう。そんな感じ。ヒノキを切って植えるというのは、ただの生産活動であって、自然破壊とかいう話では無い。

 ってことで、単に無知でどっちもズレているんです、小日向さんも、美少年も。ま、二人は言わされているわけだから、このCMプランナーがどうかしているんですが、ただ、CMプランナーはともかく、住友林業の人たちがこんなことを知らないわけはないので、ま、木を切っているのがマイナスだ、という印象を覆すために、でも植えれば大丈夫とか、ちょっとトンチンカンなことを言う羽目になっているわけです。

 二酸化炭素だとか自然界の多様性だとかを考えれば、伐採した後に、そのまま放置しておくのが最適解です。日本の高温多湿の気候であれば、なんらかの木々が普通に生えてきます。植林なんか必要ありません。これが砂漠化が進んでいるところとかだと、地下水を確保するような植物を意識的に選定して植えたりする必要があるんですが、日本の場合は、普通、放置するのが最適解です。っていうか、今あるスギやヒノキは伐採する方が良いし、植えない方が良いです。CMの切って植えてというのは、環境的な目線では、どっちも間違っています。

 ま、住友林業は環境保護団体ではなくて、林業と建築を営む営利企業で、その営利行為の中ではスギやヒノキの植林を植えて伐採するというのは必須の行動で、ただ、その表面的なイメージが「自然破壊」という、これ自体が間違ったツッコミなんですけど、その間違ったツッコミを受け入れて言い訳しているので、期せずしてダブルボケになってしまっている、ということです。民主主義と資本主義の末路を見ている気がします。はい、そんな素敵なCMの紹介でした。とっても良い企業ですので就職したり株を買ってみてください。またあした。

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