なぜ神社に榊(サカキ)を供えるのかという、個人的な予想

 3年に1度、お役目が回ってくる、神社の仕事をしていまして。仕事というのは変かな、別にお金をもらっているわけでもないので。ま、お役目です。で、メインの仕事が榊(さかき)をとってくることです。採取クエストです。集落の共同の山、現代的なカッコいい言い方をすればコモンズです、そこから榊をゲットしてくるというクエストです。

 榊というのは、ご存じの方はご存じでしょうが(そりゃそうだ)、普通の葉っぱみたいなやつです。で、なぜ、この榊が「神聖な木」とされているのか、という話です。榊というのは、何の変哲もない、花が綺麗なわけでもない、役に立つわけでもない、ただの木ですよ。なぜ、こんな特徴の無い植物が、神社で祀られるようになったのか、という話。

 その前に現代人らしくwikiっときますと、神と人との境であることから「さかき」になったとか、箸や櫛に使われるとか、そんなことが書いてあります。でも、問題は、なぜ神聖な木になったのか、ということです。神と人との境とかいう厨二病的な命名であっても、その前に、なぜこの植物が神と人との境になるのか、その理由です。で、これは僕が思っているだけで、他の人が言っているかどうか知りませんが。たぶん、ヒノキの生育のバロメーターだったんじゃなかろうか、と思うんです。

 ヒノキというのは、スギと居並ぶ花粉症の原因で、松井秀喜が春先に不調だったのはヒノキの花粉症が原因だったんじゃねーのというのは皆さんご存知かと思いますが。ヒノキは、花粉症はともかく、文句なしに役立つ木です。トップクラスに役立ちます。だからこそ、めちゃめちゃ植えられて花粉症になっているんですが。何に役立つかというと、建材です。真っ直ぐ伸びて、良い匂いがして、虫もつかない、腐りにくい。伊勢神宮の式年遷宮だって、ヒノキで作っていますからね。家を作るのに、これ以上の木材はありません。

 また、ヒノキというのは「火の木」とも言われるように、擦れば発火します。油分が多いんですよ。スギは無理です。ヒノキだったら、火起こしができるそうです。やってみてください。僕はマッチを使いますけど。というように、家も作れるし、火も起こせるし、最強植物じゃないですか。ということで、古来からヒノキはとても大事な植物で、植えていた、というか、自然のものも適度に管理したりして、育てていたんだと思います。

 ヒノキを育てるためには、他の木を切らないといけません。で、素晴らしいヒノキ林が出来上がると、どうなるか。榊が生えるんですよ。ヒノキ林には、榊が生えるんです。ヒノキ林の湿度とか日照とかが、ちょうど榊の生育に合っているんだと思います。で、ヒノキの葉っぱが茂っていれば、榊も日焼けせずに、綺麗な榊が生える。ということで、素晴らしい榊が生えているのなら、それは、ヒノキが元気に育っているということなんじゃないか、と思うんです。

 思うんです、というか、実際そうじゃないかもしれませんが、昔の日本人がそう思っていたんじゃないか、と僕が思っているだけです。ヒノキの生育を確かめるのは大変です。だって、でかいから。葉の繁り具合とかも、チェックするのが難しい。でも榊というのは2〜3メートルの小木ですから、見るのも簡単です。ヒノキ林の生育を確かめるために、榊が生えていれば、これは良いヒノキ林である。ならば、神社に榊を備えることで、自動的にヒノキ林の管理ができるようなシステムになっていたんじゃないか。古代の賢い奴が作ったのでしょう。
 
 というような説を思いついたんですけど。真相はどうなんでしょうかね。何千年、下手したら何万年も前のことなんで、永遠にわからないでしょうが。はい。またあした。

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