Navigating the art world 内容紹介 その3:インターネットはアートの社会に何をもたらしたのか
さて、いよいよEmerging Artistのウェブマーケティング戦略編です。
デルフィアンは自分たちのインスタフォロワーに(おそらくは)質問票形式のオンライン調査を実施して、その結果をここで示しています。400人ほどから回収したとあります。
自分たちのフォロワーに対する悉皆調査だったのか、それとも無作為抽出だったのか、それ以外だったのか(多分、形としては悉皆調査だったんじゃないかとは思います)などよくわからない部分も多いですが、サンプル数が400あれば、粒度は粗いながらもマーケティング調査としてはまあまあ使えるとは思います。
The Emerging Art Audience is Changing
まずデルフィアンは、今やインスタグラムがビジュアルアート分野での基礎インフラになったことを指摘します。音楽分野ならスポティファイかアイチューンズみたいなものだよと。
これ、すごく基本的かつ重要な問題提起だと思います。
私がガキの頃って、新しい音楽の情報源は雑誌かラジオかテレビ。あとはレコード屋のポスターとかPOP。これが主流でした。もちろん口コミもありましたよ。おすすめの曲をカセットテープにまとめて渡す。
仲間がレコード買ったらとりあえず借りて聞く。ですがやっぱり雑誌で評論家やライターが「これは良い」と言えばみんなとりあえずチェックしたし、FMラジオやテレビでヘビロテされれば売れた。
当然その裏にはレコード会社の思惑があったわけです。次はこれを売りたいというものをマスメディアに押し込む。洋楽の場合は全米ヒットチャートや全英ヒットチャートというランキング情報もあったんで、国内のレコード会社の思惑もそこまでは効かなかったと思いますし、逆にアメリカやイギリスで売れてても国内のマーケ担当者が馬鹿だったりやる気が無かったりしたら、そんな売れなかったというのもありますが。とにかく、トップダウン式だったんです。
今は違いますよねもう。Youtubeやスポティファイやサウンドクラウドで再生数がドカンと伸びた人がそのままスーパースターになる流れが当たり前にある。ビリー・アイリッシュとか。ADOもそうでしたっけ?
ではアートはどうか?
ここがポイントです。かつては評論家が推せばスターになる時代がありました。今はマスメディアやメガギャラリーですかね。メガギャラリーはレコードで言えばメジャーレーベル。そこが売り出せば売れる。現代アートの場合、良いんだか悪いんだかよくわからんものがいっぱいあるんで、よくわからなくても権威筋がこれは凄いものだと言えば、そんな気がしてくる。美術手帖オンラインやTokyo Art Beatが編集者の馴染みのライターに書かせて展覧会評を掲載して、それがバーっと広まっていく。
私から見ると、なんで東京の現代アートはこんな一部のマスメディアとツイッターインフルエンサーが論調コントロールしてるんだと不思議でしかないですよ。こんなん30年前のロックのレコード屋のビジネスモデルやんけ、と。あの頃の音楽雑誌編集者の態度のデカさと来た日にゃあねえ(笑)
ですが。
ですが、世界的に見ればそんな構造はもう壊れつつあるというのがデルフィアンの主張です(英語メディアでも有力ウェブメディアはありますが、東京ほど極端な寡占じゃないです)。
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