お味噌汁!

世界が目にみえぬものに少しずつ分断され、その亀裂は今も少しずつ少しずつ幅を広げていて、あぁ、ついにこの星は、このわがままな生物を全力で懲らしめ出したなと思いながら今日も味噌汁を作る。

湯に味噌をときながら、この中にも目にみえぬものが息づいていて、その小さな小さな働きが私の胃袋を満たし、肉体をつくり、心をうるおす、そのめぐりを思うと、こんなふうにひっそりとやさしくなりたいものだと思う。

しかし、味噌はこう問いかける。私のやさしさは結構な時間がかかっているんです。指を弾けばすぐに手に入るものは、同じようにあっさりとなくなってしまう、そうは思いませんか?

なるほど。時間がかかるやさしさか…

そうです、あわてては行けません。あわてて沸騰させると台無しです。ゆっくり立ち向かえばいいじゃないですか!

私は、味噌がそのやさしさを存分に発揮できるよう湯加減に気を配る。

味噌は、今日はいつもよりやさしさを多めに出しておきましたので、そう言って湯に交わっていった。

時間をうんとかけたやさしさは絶品だ。上手く伝わらないかもしれないけど、絶えずやさしさを多めに加える努力をしなければと思う。

湯気となった味噌はさらにささやく。

そうそう、その先の意味なんか考えずに、怖れず、やさしさを伝えればいいのです。そう言えば、あれ、お忘れ?本当の意味は違うけど、遠いところでは私があの言葉の代表なんですから。やさしさは使わないと痛んでしまう、だから、ためらわずにちょっと多めに使うべし!

ちょっと誇らしげな味噌である。

もちろん、覚えていますよ。あなたがやさしさの代表だってこと。私だってとても誇らしかったんですから。

「さあ、召し上がれ。」

今日もやさしさ、いただきます。

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#やさしさにふれて

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