青年たちの鯉のぼり
椎葉の山々では、そこかしこで新緑が芽吹くこの季節。冬の間の茶色っぽい景色が一転、今ではどちらを向いても山の黄緑色が日に日に増え、毎年ながらその生命力には驚かされます。
この時期になると、上椎葉の耳川沿いでは鯉のぼりがあがります。この鯉のぼりの仕掛け人は、椎葉村青年会に所属する椎葉の若者たちです。
椎葉村には、全国でも数が少なくなってきている「青年団」が今なお組織されており、その活動を受け継いでいます。地域の清掃活動にはじまり、祭りやイベントの準備・運営、さらに子どもたちに対する奉仕活動が多いのも特徴。クリスマスには青年サンタが子どもたちの家々を訪れます。そしてこの鯉のぼりあげも、こどもの日を前にした恒例の活動です。
休日の朝、若者たちが河川敷に集まり、トラックいっぱいに積んできた鯉のぼりを並べて準備をします。椎葉の男性陣は驚くほどに身軽でアクティブ。鯉のぼりをつるすワイヤーを張るために、川の両岸に別れて崖を登っていく姿は、まるで忍者のようです。
川の対岸までワイヤーが張れたら、鯉のぼりを等間隔につるしていき、最後にワイヤーをひっぱりあげて完成です。
この時期特有の強い風を受けて、おおらかに泳ぐ鯉のぼり。見上げていると、気持ちまでスーッと軽くなるようです。派手でなくても、地域のために、みんなのためになることをという青年たちの気持ちを乗せて、もう少しの間椎葉の空を泳いでいます。
執筆・中川薫(https://note.com/kaoru_nakagawa/)