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愛の無知

愛について語る時
私が愛について
ひどく無知で無垢であることを自覚し
それにとても感謝しているのだ

実際の愛に含まれるであろう
苦味や痛みを知らずに
ただ純粋な美しさと憧れだけで満たされた
甘い蜜の中を目隠しで漂うことのできることは
滅多にあることでは無いと思うから

憧れというものは
想像力を無限大に広げていく
果てが見えないほどに広がった世界は
キラキラと眩しく光り輝き
私の感覚を麻痺させていく

私が作り上げた
私以外誰一人存在しないその世界で
誰に聞かせることもない愛を
声が枯れるほどに叫ぶのだ

私の肌を撫でる手のひらの熱
私だけが映るその瞳のゆらめき
抱きしめられた胸の中で感じる鼓動
その全ては
嗅いだことの無い甘美な香りで満ちている

経験や知識は
想像力の広がりの足枷になるものだと
誰も教えてくれなかったのは
それが当たり前になって久しいからなのか
二度と戻れない世界の誘惑から逃れるためなのか

それとも、そのどちらもなのか

私がこの麻薬にも似た遊びを手放すのは
いつか私に
命をかけて人を愛する瞬間が訪れた時なのだろう

理性ではどうすることもできない感情を知った時
どれだけ「嫌だと」叫んでも
どれだけそこに留まることを望んでも

私は私自身が作り上げた想像の世界から
たった一人、締め出されるのだろう

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