イコール

私がそれを手放す時
それは同時に 
それに私が手放されるのだということに
どうして気付けなかったのか

私がそれを見放す時
それはつまり
それに私が見放されることと同義だと
どうしてわからなかったのか

主導権はいつだって私の手の中にあると
私が全てを手放したとしても
私を手放さないものが確かにあるのだと
そう信じて疑わなかった
そう「信じている」事実さえ忘れるような
あまりに傲慢な自意識の果て

そこには
私の身一つしかなかった

それでも良いなんて思わなかった
たとえ私の身一つになっても良いなんて
それでも良いなんて、一度たりとも、思わなかった

私は全て捨てたかった
全てを手放したかった
全てを見放したかった
全てに見切りをつけたかった

そうして優位に立ちたかった
私は私を取り戻すはずだった


でも、捨てられたかったわけじゃない
絶対に、手放されたかったわけじゃない

捨てることは捨てられることと
手放すことは手放されることと
それはイコールで結ばれていると

なぜ、今まで、一度たりとも

捨てられたかったんじゃない

捨てられたくなかった
手放されたくなかった

捨ててきたものたちは
捨ててもなお「そこにあり続ける」と信じていた
私を求め続けると信じていた

一人になってようやく気づく
何よりも捨てたかったのは
「私自身」だったのだと

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眠れない夜に

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