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読書日記:小麦畑の三等星

◎読んだもの:萩岩睦美『小麦畑の三等星』①~③、集英社文庫コミック版

 小中学生の頃読んだのを、最近読みたくなって買い戻した。同じ作者の『魔法の砂糖菓子』も読み直したいけれど、まだ入手できていない。
 萩岩さんの作品は、絵柄の可愛らしさもとても魅力的だけれど、わたしが一番惹かれているのは、常に集団に馴染めないよそ者の寂しさを描いている点かもしれない。そして、馴染めない辛さが描かれているのだけれど、主要なキャラクターがほぼ全員圧倒的に優しい。
 (ここからは若干ネタバレ)この話は、ごく普通なつもりだった中学生の女の子が、事故をきっかけに自分の異常な力などに目覚め、普通に生きられなくなっていく様子を描いている。UFOや宇宙人に超能力、ついでに超能力犯罪も出てくる、SF漫画だ。
 それだけだとよくある展開になるけれど、そこに大切な人へ抱く主人公の依頼心が関わってくるところが、彼女の持ち味だ。わたし自身が依頼心の処理には苦心しているので、つい惹かれる。
 結末は、とても彼女らしい優しさで終わっている。主人公の依頼心は、実は問題解決の鍵だったのかもしれない。現実もこんな風に優しいと良いけれど、全くそうではないからこそこんなに美しいおとぎ話が描かれ、わたしは繰り返し読むのだろう。現実をえぐる話も好物だけれど、わたしはそれだけでは生きていけない。甘さ辛さを交互に摂取して生きてきた。

 ここまでスルスル書いたけれど、今読み返したくなった理由が曖昧にしか書けていない気がするので、もう少し考えてみた。
 わたしが今これを読みたかった理由はたぶん、入りたい世界に「自分の方に原因があり、でもそれは自分にはコントロールできないことで」入れてもらえない人間の話だから、だと思う。エイリアンズではない、ずっとひとりぼっちのエイリアン。
 ということで、次は傷をえぐるような話を読み返してみるかなぁ。たぶん。ヘッダーは、海で撮ったお弁当を狙って舞っていた猛禽類。光に向かって飛ぶ場面が漫画にあったので。

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