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ジョジョの奇妙な武闘会・最終回『同人小説』

この小説はジョジョの奇妙な冒険を好きで読んでいる人向けのものです。それをご理解していただいてお楽しみください。

二回戦第三試合 ジョナサン・ジョースター対ジョセフ・ジョースター
 一応、二人は闘技場に飛ばされたが、もちろん戦おうとはしなかった。それよりも、二人とも観客席に行き、仗助の安否を気遣っている。

ジョルノ「駄目です。生命エネルギーが感じられない。完全に死んでいます」
 ジョルノは仗助の体からゴールド・エクスペリエンスの手を離した。ジョースター家はみんな暗い面持ちになる。
 五分ほど二人が戦わないまま時間が過ぎた。

「どうやらこのままでは戦ってくれないみたいですね。わかりました。では今からはバトルロワイヤルルールでやってもらいます。誰と誰が協力しても自由ですが、戦っていいのは勝ち上がったディオ・ブランドーと吉良吉影、それにジョナサン・ジョースターとジョセフ・ジョースターです。さて、ではちょっと舞台も変えましょう」
 

みんなは気がつくとディオと承太郎が最終決戦をしたエジプトの街に飛ばされていた。時間は変わっていないようで、日は暮れている。
ジョセフ「ジョナサンじいさん。協力して、ディオのやつを倒そう」
ジョナサン「ああ。ディオを好きにさせてはいけない」
ザ・ディオ「ふん。ジョースター家をまとめて殺せることになったか」
吉良「平穏な生活は戦いで手に入れるしかないのか」
 

舞台はエジプトの街になってはいたが、人影は戦っている四人と生き残っている承太郎、ジョリーン、ジョルノ、そして年老いたジョセフしかいなかった。承太郎はつかつかとディオの近くに向かって歩いていく。

承太郎「ディオ、てめえはゆるさねえ」
 ドン、と時が止まった世界になったが承太郎はかまわず歩き続ける。三秒、経ったところで、ディオがザ・ワールドを飛ばし、それを承太郎がスタープラチナで応戦する。
承太郎「オラオラオラオラオラオラ!」
ザ・ディオ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
 力比べは互角に見えたが、たまにお互いにパンチが入っても無効化されているようだった。パンチが通らない。
「見学者の参戦は禁止しています」
 天からふってくる声に、承太郎は無駄だと悟り、さっとスタンドを引っ込めて、振り返った。その承太郎の背後にザ・ワールドのパンチをぶち込むが、やはりパンチはあたらない。ディオはチィッと舌打ちした。
 

ジョルノはこの矢じりをジョナサンかジョセフに渡せば、レクイエムの能力を発動させ、ディオにも勝てるかもしれないことはわかっていた。だがレクイエムはジョルノでも制御は仕切れない能力だ。果たして矢じりを渡すべきなのか迷っていた。それにディオは曲がりなりにも自分の父親なのだ。

ジョセフ「ジョナサンじいさん。今はどんな攻撃をしても俺の予知だと無駄だと出ている」
ジョナサン「じゃあ、どうする?」
ジョセフ「日が昇るまで逃げるしかない」
ジョナサン「いや、ディオみたいな悪に、背中を見せて逃げることなんてできない」
 ジョナサンがそのままディオに近づこうとしたので、ジョセフはハーミッドパープルでジョナサンを縛って、無理やり一緒に逃げ始めた。
ジョセフ「ともかく逃げるぜ。じいさんもシーザーみたいに死なすわけにはいかない」
 

ジョセフはジョナサンを担いで逃げ始めた。ジョセフはハーミッドパープルでディオや吉良の位置がわかっている。ディオは十二秒も時を止められるらしいから、五秒後の予知をしても一瞬で殺されている予知だけが見える。このままでは絶対に勝てないと思っていた。
ザ・ディオ「逃がすか」
 

ディオが時を止めて、追いかけた。少し距離が遠いが、ギリギリ射程距離だ。走っていくと、どんと何かにぶつかり、ディオは動けなくなった。

混乱し、前を凝視してみる。良く見ると細い糸がクモの巣のように張っていて、道を塞いでいたのだ。ジョリーンがストーンフリーを使い、二人を援護していたのである。ディオは腹が立って、ザ・ワールドでジョリーンを殴ったが、やはりパンチは見えない壁に阻まれてあたらない。十二秒経ち、時が動き出した。

「警告はしました。妨害をした見学者は消えてもらいます」
 その声と共にジョリーンは消え去ってしまう。
 ジョリーンは消えてしまったが、時間稼ぎが利いてジョセフたちは姿を完全にくらませていた。
 

吉良吉影もいつの間にかいなくなっている。ディオはフンと鼻を鳴らすと、ビルの上にジャンプしていた。
ジョセフ「ディオも吉良も五百メートル以上離れてるぜ。ちょっと作戦を考えよう。ジョンサンじいさんはもう少し時を止めらない?」
ジョナサン「がんばっているが一秒が限界だ。ディオが時を止めた世界でも一秒しか動けない」
ジョセフ「承太郎は初めて時を止めたときに五秒止められたと言ってたぞ。俺の孫は天才なんだろうな」
ジョナサン「承太郎はぼくの孫の孫となるのか。不思議な気分だ。まだ自分の子供も見たことがないのに」
 

二人は走りながら移動している。ただジョセフがディオと吉良の位置を常に把握しているために、逃げ回るのは簡単だった。しかし、逃げまわって、日が昇るだけで果たして今のディオが倒せるのか。なにか作戦が必要である。
 二人は逃げ回りながら、見学者がいる場所に戻ってきていた。ジョセフが閃いたアイデアを実行しようと戻ったのだ。

だがそれをディオは待ち構えていた。場所を知られているのなら、追いかけても無駄である。だからディオはずっとビルの上から、仲間たちの下に戻る瞬間を待っていたのだ。
 

ディオはジョセフが見えた瞬間に、時を止めて、ビルから飛び降りた。ザ・ワールドを使い、猛スピードで飛ぶように動く。十二秒では届かないのはわかっていた。十二秒経ち、時間が動き出して、それから二秒ほど動けばジョセフを殺せる位置まで近づける。ジョセフは波紋も使えるので厄介だが、時を止めてなくても倒せない相手ではない。それに数秒間見失なければまた時を止めて、確実に殺せるのだ。
 

止まっていた時が動き出した。ジョナサンもジョセフもディオも二十メートル以内にいる。
 そのとき、ジョセフは自分の閃いたアイデアの魅力に気を取られ、予知を怠ったことを後悔した。戦いに油断は禁物である。

ジョセフ「しまったあ。ふせろおぉ」
 そう叫んで、ジョセフが地面に伏せた瞬間にカチリという音がして、見学者の近くのビルから爆風が飛んできた。恐ろしいほどの爆発である。
 遠くのビルの屋上から吉良がジョセフたちを見ていた。吉良もいずれジョセフたちが見学者の下に戻ってくることを予想して、ビルを爆弾に変えていたのである。杜王町で仗助と戦ったときは目立つことを恐れたため、こんな大きな物を爆弾にはしなかったが、キラークイーンに爆弾にできないものなどないのだ。
 ちょうどディオとかいうやつもあそこに急に現れたのが一瞬見えた。全員死んでいたら、俺の勝ちだ。やっと平穏な生活を手に入れられる。そう思うと、吉良は笑わずにはいられなかった。
 

ジョセフに伏せろと言われたのでジョナサンは時を止めてみたが、爆風がすぐ後ろまで来ていた、鋭い鉄の板がジョセフ目掛けて飛んでいるのが見える。ジョナサンは今自分のできることを悟り、ジョセフの体に鉄の破片が当たらないように、庇うように移動した。
 伏せたが、ジョセフの体も爆風のダメージでぼろぼろだった。周りを見ると、見学者たちは不思議な力で無傷のようだが、ジョナサンは体が真っ二つに千切れていた。

ジョセフ「ジョナサンじいさん!」
 ジョセフは駆け寄ってジョナサンの上半身を抱いた。下半身はどこかに飛んでいってしまっていた。
ジョナサン「短い間だったけど、エレナの孫の君に会えてよかった。受け取ってくれツッペリと僕の波紋だ……究極奥義・深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)」
 ジョナサンの手からジョセフに波紋が流れ込まれる。波紋エネルギーでダメージの負っていたジョセフの体は一瞬で回復し、またパワーアップしていた。
ジョセフ「ジョナサンじいさん」
 ジョセフは涙して、硬くジョナサンの手を握った。二度もジョナサンは死んでしまった。
 

一方、ディオも爆発に巻き込まれ、かなりのダメージを負っていた。頭が半分破壊されており、足元がおぼつかない。だがディオの目には、あるものが見えていた。這うようにして、ディオはそれに近づいていく。
 

吉良はビルの上から目を細めて、爆発させたビルの周辺を見ていた。まだディオとジョセフは生きているみたいだ。だが二人ともかなりのダメージを負っている。いま止めを刺すべきだとビルから飛び降り、キラークイーンを使い壁に手を引っ掛けて、地面に着地した。
 

ディオは血を吸っていた。これはある意味、ディオが一番欲していた血である。何のいたずらなのかディオの近くにジョナサンの下半身が落ちていたのである。一吸いするごとに傷が癒え、またパワーアップしているのをディオは感じていた。
 

ジョセフはジョナサンの波紋を受け取り、パワーアップした自分の能力をじんわりと心の中で感じていた。自分のできること、できないことを感じる。予知は十秒先までできるようになっている。だがその能力よりも決定的にパワーアップしたものがある。ジョセフはハーミッドパープルを手から出すと、猛スピードで伸ばしていく。射程距離に限界を感じなかった。
 

吉良は地面を滑りながら迫り来るハーミッドパープルにキラークイーンのラッシュをぶつけるが、縦横無尽にくるハーミッドパープルに体をがんじがらめにされる。
吉良「こんな馬鹿なことが……」
強烈な波紋がハーミッドパープルから流れ込み、吉良は意識を失った。
 

ジョナサンじいさんの敵は討ったとジョセフは思った。あとはディオだけだが、十二秒時を止められるディオに、十秒の予知と射程が長くなったハーミッドパープルだけでは勝てないとジョセフはわかっていた。
 

そのとき、ディオに変化が訪れていた。ジョナサンの血を吸い終わると、何かが完成した音がザ・ワールドの中から聞こえた気がした。ディオは時を止めてみた。十秒が経ち、二十秒が経った、だが限界を感じない。ザ・ワールドはついに完成したのだ。ついに時間を完全に止められるようになっていた。そのことに気がついたディオは高らかに笑った。悪の勝利の雄叫びだった。
 

ディオは鼻歌交じりに、ゆっくりとジョセフに近づいていく。それを認識しているのは承太郎だけである。
ザ・ディオ「承太郎。お前には一度敗れはしたが、見てみろ。このディオ様はついに完全に時間を支配した。もう俺を誰も止めることはできない。たとえ神でもだ。ここで俺がこいつを殺すところを見ているがいい。ウリイィィイ、無駄無駄無駄無駄無駄!」
 

ザ・ワールドのラッシュがジョセフを襲う。しかし、何とも不思議なことだがパンチがジョセフに届かなかった。

時は止まっている。ジョセフは動いていない。
なのになぜかパンチが当たらないのである。

ディオは混乱した。何が起こっているのかわからない。だから、ディオはジョセフから距離を取ってから、時を止めるのをやめて時間を進ませてみた。

その瞬間である。
 ディオの腹を人型のハーミッドパープルが貫いていた。
ザ・ディオ「バ、バカな」
ジョセフ「お前がここに立つことは予知できていたぜ」
 

影から急にもう一人ジョセフが飛び出してきたのだ。ジョセフが二人いたことをディオが思い出す。そして、パンチが通らない現象は今までも何度もあった。見学者にはパンチは当たらない。

ジョセフ「ジョルノに若い皮膚を作ってもらって、年老いた俺に貼り付けておいたんだよ。まんまとだまされたな、ディオ」
ザ・ディオ「時よ……」
ジョセフ「もう遅い。刻むぜ、波紋のビートォォォオオ!」
 黄金の輝きが、ディオを包み、断末魔と共にディオは溶けて消え去った。ジョセフは手をぐっと握り、天を仰ぐ。
ジョセフ「ディオ、お前の敗因は一つ。ジョースター家を敵に回したことだぜ」
 

風がディオの名残をふんわりと運んでいく。

承太郎「若いころのジジイがやりやがった」
ジョセフ老「どうじゃ、わしってすごいじゃろ」
 そう言って、年老いたジョセフは顔に貼り付けていた皮膚を取った。
承太郎「たしかにな。見直したぜ」
ジョセフ「やったあ。やったあ。ハッピーうれピーよろピくねー。ぼくちん強い」
承太郎「……やれやれ。大仕事をやり遂げたってのに、しまらない野郎だぜ」
 ジョルノは消えたディオを捜すように宙を見ていた。その目は少し悲しそうだった。

「おめでとうございます。いろいろな条件が重なった結果でしょうが。見事ジョセフ・ジョースターが勝ち残りました。それでは願い事を言ってください」
 そう天から声が降ってきた。
ジョセフ「願いを二つにしてくれってのはどうなんだ? ん?」
「……わかりました。今後願いを増やしてくれというのは禁止しますが、今回はいいでしょう」
 それを聞いてジョセフは悔やんだ。
『しまったぁ。本当に増えるんなら百個って言うべきだった』
 ジョセフは少し考えると答えた。
ジョセフ「一つ目はここで起こったことはなかったことにしてくれ。俺たちは戦っていないし、仗助も死んでいない。何もなかったことにするんだ」
「わかりました。個人的に観戦出来たのでいいですよ。それでもう一つは?」
ジョセフ「ん? そうだな。長生きでもしたいかな」
 こうしてジョジョの奇妙な武道会は幕を閉じた。なぜジョースター家でジョセフだけ長生きしているのか。それにはこんな存在しないはずの物語があったからなのかも知れない。

「了」


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