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内田樹氏の考えについての反論と同意~コロナ後の世界~

内田氏のブログが更新され、私の知人友人多くがシェアしている。おおむね皆さんこの見解に同意のようである。

しかし、私はちょっと見方が違う。同意できる点もあるが。

内田氏の主張を私なりにまとめると、
①コロナ19対策の迅速さの影響で、『こういう危機に際しては民主国家よりも独裁国家の方が適切に対処できるのではないか・・・と人々が思い始める』、すなわち民主主義の危機、また米中のパワーバランスが逆転すると。
安倍政権のコロナ対策は失敗である。国民に対する不誠実な対応と、オリンピックを実施したい一心でコロナ19対策を怠り、拡大を招いてしまった。
中産階級は没落する。『基礎体力のある大企業は何とか生き残れても、中小企業や自営業の多くは倒産や廃業に追い込まれるでしょう。ささやかながら自立した資本家であった市民たちが、労働以外に売るものを持たない無産階級に没落する』
中産主義の没落が、縁故主義がはびこる「少数による統治」という政治スタイルを呼ぶ。
⑤しかし、そうならないためには一人一人が「大人」にならなければならない。

ということになると思う。これについて、丸数字のまとめごとに反論、あるいは同意していきたいと思う。

① 本当に危機なのは米中どちらか

いみじくも内田氏が③で指摘したように、このコロナ19の影響で、世界的大不況が訪れることは間違いない。多くの企業が倒産していくであろうが、それは絶対に中国にも経済的に大きな影響を与える。日本の企業がつぶれるだけではない。中国は世界の医療の工場としての機能が今までは大きいが、この反動で、「自国内で一定の”医療自給率”をあげよう」という動きが出てくると思うのが筆者の考えである。
 ちなみに以前FBで書いたが、筆者の親は関東地方で簡易な医療器具の製造をする工場を経営している。膿盆作る会社はうち含め2社くらいしかないらしい(あとは海外産)。もう70過ぎなので、近年廃業するというている。こういう企業が廃業するのは経営後継者不足と技術労働者不足(低賃金など、人気でない)ことによる。こういった企業を何らか支える議論が出てくると思う(身内びいきも多分にあるが)。
 経済波及効果で中国の製造業がダメージを負うことを恐れているのは中国支配層だと思うが、自国経済の活性化を図ろうがその効果は限定的だと思われる。世界の工場として君臨した分、その反動は大きいと思われる。この「中国の方が経済的ダメージが大きい」論は何人かの人と議論しての見解でもある。ただこれは別途書き記す必要があるくらいテーマとしては大きい。
 EUは崩壊するだろう。ただ、中国が入って来られるかというとそこには人権論的ハードルが高い。監視社会がやってくるかといえば、監視してる方はAIに任せるしかないだろうし、身内で権力簒奪祭りが起こるのは歴史が証明しているので割愛。この辺もまた別で詳しく書きたいところだが。



② 安部政権のコロナ対策は失敗か
 
 多分この「コロナ対策」を成功失敗で語ること自体が無意味なのだろう。成功とは一人も死者を出さないことなのだと言えば全世界が失敗しているし、「人口100万人当たり〇人まで」と決められるものではない。特に医療関係者など、政治家や多くの人含めてみんな苦労したうえでこの結果なのだ。検証は必要だが現時点の批判は無意味である。正しい検証ができるようにする必要はあるが。
 さて、中国などがコロナ対策を「成功」した、それには政治システムが、という話があるが、台湾も韓国もいわば「戦時中」に近い政治状態であり、中央集権的にならざるを得ない。台湾在住の友人が指摘してくれたが、『独裁の前提には集権があり、それが韓国と台湾、独裁も集権もどちらもあるのが中国』という理解のほうが正しいのだろう。

 で、日本はというと独裁でもなければ集権でもなかった、けど「何か決める」のはやっぱり霞が関ゆだねようと、(というより法律)という状態だということが露呈している。県知事都知事に霞が関の指針がないと決められない(というより決める法的根拠がない)、やはり日本は法治国家なのである。それなのに「自分の言葉で語らない」ことを批判するのはいささか筋違いかと。映画シン・ゴジラで、ゴジラ上陸時に官僚が自衛隊出動に法的根拠を考えるシーンがよみがえる。かえって、自分の言葉で語ってそれが既存法律とは異なった場合、それは法治国家のリーダーとしてはどうかと思う。
 
 トランプ大統領だけでなくアメリカ大統領は「こういうことを約束します!」といいつつ、議会の反対に遭って何もできていないことが多い。前オバマ大統領もしかり。内田氏も指摘しているように三権分立がしっかりしているのだ。シンガポールなどのリーダーメッセージは素晴らしいと思うが、マーケティング視点で言わせてもらえば、安倍首相のように平時から国民の信用が低い人のメッセージなんて、自分の言葉で語ろうと今更無駄である。官僚が原稿を用意してもらうほうが間違いがない分ましかもしれない。まあ、このへんの内田氏の語りは安部憎し心理が読み取れるので少し割愛するほうが良い。

 あと、オリンピック開催したい意向によって判断が遅れたというのは不幸な課題であって、これがじゃあ中国や韓国やアメリカで開催だったと考えた場合どうだったかというのは考慮したい。日本がいくら開催したいと言うたところでIOCの意向がすべてだというのは札幌マラソンの一件で、日本の主だった人の共通認識であったと思われる(そうでなければただのバカ)。
 IOC、そして(形式上は)WHOの見解がない限り、延期とも何とも言えなかったのは考慮するべきだ。開催延期決定後緊急宣言などの準備が急速に、、、というのは、むしろ開催かどうかの時期にもかかわらず医療機関はできる限りの調査をして感染拡大可能性を見ていたというほうが正しいのではないか。
(そもそも、日本においてはロックダウンを実施できる明確な法律がない。自粛と言うしかなく、その自粛基準で都道府県と国と外資をすり合わせなければならない状態が混乱を招いている。)

③④⑤
中産階級は既に没落傾向。では今後の在り方は?

 長くなってきたので、まとめて書こうと思う。
 中産階級はコロナ以前から没落傾向である。決定打というような言い方を主張を内田氏はされているが、決定打は既に打たれている。例えば、先に述べたうちの実家は町工場の位の施設で医療器具を作っているが、以前は「消毒器」を作っていた。それが、「消毒」という言葉をつかえる器具を製造できるのは実質的に「大規模な工場」に限るような基準になってしまった。ところがそれによって、第三種医療機器で国内の製造業の大半が海外産にシェアを取られていく結果となった。こういった規制緩和や規制変更がじわじわと中小企業を追い詰めてきた。もしコロナがなかったとしても、この変更が変わらない限り中小企業に明日はない。農業においても、規模拡大をまだ目指している。設備投資支援(6次産業化なども)も、ある程度体力のある農業者でないと使えないような仕組みになってきている。
 これからの不況発生によって実需は大きく落ち込み、多くの企業が厳しい局面になるだろうが、大企業であってもその波を避けるのは難しい。生き残るとすれば、それはたまたま内部留保があったか、そもそもそのビジネスモデルか、によるものであって、中小企業だから消えるというのは言い過ぎである。
 また、中産階級は中小企業に勤めているものばかりではない。大企業であっても多くの働く人は「普通の人」であり、今後「普通の人」であれば大企業であってもそこまでの給料を確保できなくなる。しかしこれは中国でもアメリカでも一緒の話だ。むしろ、その「提供する労働力が特殊」な人は、世界中で高級で活躍する機会が多くなる。
 機械とAIが発達し、いわばドラえもんの社会になればなるほど人は必要なくなる。つまり、高所得者と貧困を分けるのはコロナや集権国家ではなく、AIと機械の発達という「技術革新」である(参考として日経新聞の記事をリンクしてみた)。このへん鉄腕アトムとかの「ロボットと人間どちらが偉い?論」を想起させるが。
 ではどうすればいいかというと、そこは内田氏がいう「大人になる」という言葉を使わせていただく。ただ若干ニュアンスが違って、「物事を考えるだけでなく、自分の経済的技術的武器を持て」ということになる。単純労働力だけでは楽しく生きていけないのは世界中で起こりうる。というより起きている。セルフブランディングなどという単純な言葉でなく、稼げる力である。それがあってこそ、ものの考えや哲学を語れるようになるだろうというのが筆者の考えであり、「これからの時代の生き方」なのだと思う。一方で、いろいろあってそういう武器を持ちづらい人への支援はあるべき。でもその支援を手厚くするに欠かせないのは機械やAIであったりするのだ。

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