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【きくこと】 第11回 ラジオDJ 志田一穂 johnny SHIDA 超映画総合研究所

志田一穂
湘南ビーチFMの映画音楽番組「seaside theatre」の構成・DJ。著書に「映画音楽はかく語りき いつか見た映画、時をかける音楽」(ユニコ舎刊)。都内、国内各地にて、映画や映画音楽の講演、DJ、トークイベントを展開中。


廣木:第11回「図書館について語るときに我々の語ること」なんですが、今日は特別版ということで。その前に、図書館総合研究所の廣木と言います。よろしくお願いします。

染谷:株式会社ひらくの染谷です。よろしくお願いします。

廣木:11回目に一応カウントしようと思うんですけど、今日は特別版ということで、私たちの話は早々に終わりにして、本編に入ろうと思います。今日はお話を聞くというか、この後司会のマイクを渡すんですけど、志田一穂さんという『映画音楽はかく語りき』という本を書かれた方がいらっしゃいまして、その方が今日からこの超図書館総合研究所の中で「超映画総合研究所」という団体を作られたということで、それで今日集められまして、この後志田所長の司会のもとで何かが始まるということでございます。

染谷:超映画総合研究所、気になりますね。

 

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超映画総合研究所とは、ラジオDJ、映像ディレクター、映画プロデューサー、音楽ディレクター、そして「映画音楽はかく語りき(ユニコ舎)」の著者である志田一穂を所長とする研究所?ゼミ?イベントです。

7名の参加者に、各々好きな映画への思いを持ち寄っていただき、集まった全員にその映画を紹介、シェアしていただきます。ジャンルも自由、シェアの仕方も自由。どの国の映画でもOK。とにかくこの映画を皆にお薦めしたい、そんなプレゼンをマックス5分間

本来、二日間の工程で行うイベントですが、今回、そのテスト版として、1日目のみを実施してみました。

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志田:皆さんが推薦された映画に関連する音楽を全て用意しています。

このプレイリストをシャッフルして出しますので、これ私の映画だ!とか、わかんない!とかですね、本当に推薦したいんですか?みたいな、ちょっとこの段階で試されるというやり方でいきたいと思います。

よろしいですか?ではよろしくお願いします!

♪♪♪会場ではここで志田さんがサントラから曲を流しますが、動画公開の関係上、カットしております。以下、出演者の前にこのやりとりが毎回ありますが、省略いたします🙇‍♂️🙇‍♀️♪♪♪

 カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

一人目 駒井さん(図書館職員)「20センチュリー・ウーマン」

駒井:今回ご紹介したいと思って選んだのが「20センチュリー・ウーマン」なんですけれども、こちら2016年でちょっと前の作品なんですが、なぜ今回選んだかと言いますと、最近Amazonプライムでアメリカのヤングアダルト小説の大家といえるジュディ・ブルームという小説家の半生追った「ジュディ・ブルームよ永遠に」というドキュメンタリーの配信が開始されまして、これがちょうど70年代の少年少女に、彼女の作品がいかに影響を与えたかということを描いていく作品で、「20センチュリー・ウーマン」も舞台が79年のサンタバーバラが舞台ということで、映画の中に彼女の小説を読むというシーンが出てくるんです。

この主人公の男の子はマイク・ミルズ監督がモデルになっていて、彼のお母さんとお姉さんをモデルにした女性たちとの関係を描いているんですけれども、そのジェイミーくんという男の子の親友のジュリーという女の子が、エル・ファニングが演じているんですが、彼女がその作品の中でジュディ・ブルームの本を読むというシーンが出てきまして、そんな形で主人公の少年が、周りの女性たちから様々な影響を受けて成長していくという映画で、同時に映画の中で登場人物が読む本が引用されて登場してくるという描写が出てくるんです。

そういった形で映画を通して新しい本との出会いを教えてくれるという意味でも、とても興味深い映画なんじゃないかなと思ってこの映画を選びました。

実際「フォーエバー」という本を読んでるんですが、これは80年代に日本でも刊行発売されたことがあるという本なので、今読むのはなかなか難しい本もあるかもしれないですけれども、映画を通して知った本をぜひ読んでみていただきたいかなと。

それから先ほどサントラが流れましたけれども、70年代の曲がすごく当時の空気感を伝えるには重要な役割を果たしているので、サウンドトラックもぜひ聞いてみていただきたいと思います。

僕がマイク・ミルズ監督を最初に知ったのは90年代のビースティーボーイズのミュージックビデオやジャケットのアートワークを手掛けていることで最初に名前を知ったので、なんとなくおしゃれでスタイリッシュな人っていうイメージがずっとあったんですけれども、その後作品を重ねてきて、最新作の「カモンカモン」という作品では、大人になりきれない男性と少年との交流を通して、子供たちにいかに未来を残していけるかというすごく骨太なテーマを書くようになってきて、映画作家としての成長というんですかね、そういったところもすごく楽しみな、いつも新作を楽しみにしている監督さんですね。なので、今回は「20センチュリー・ウーマン」をおすすめしたいと思います。

 志田:素晴らしい!4分20秒くらいですかね。4分20秒で簡潔にお話しできるんですね。

「20センチュリーウーマン」は今おっしゃっていただいたように、マイク・ミルズっていうすごく作家性のある監督なんですよ。だから普通のエンターテインメントを見に行く感じではない、人間ドラマのもっと奥深いところをついてくれるような作品を多く作る方なので本当面白いですこれは。

あと音楽ですよね、やっぱり選ぶとなった時にトーキング・ヘッズだった。僕もサントラ持ってますけど、他のデヴィッド・ボウイとかディーヴォとかジャームズとかですね。79年アーリー80'sですよね、80's前夜のニューウェーブ、パンクといったものが流行ったような、ああいう時代のエッジの聞いたアーティストたちがすごくいい楽曲をまさにマイク・ミルズがDJのようにピックアップしているという。

「20センチュリーウーマン」これは大推薦ですよ。ありがとうございました。本もそんな風に見てなかったです。勉強になりました。

という感じでやっていきたいと思います。さあ続いてのシャッフルにいっていいですか。では続いての曲参ります。

二人目 江良さん(図書館総合研究所)「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」

志田:シリーズの第6作ですね。ではよろしくお願いします。

カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

江良:私が選んだのは名探偵コナンの映画シリーズの中で2002年とか2003年だったと思うんですけど「ベイカー街(ストリート)の亡霊」という作品を選びました。

コナンの映画はだいたいどこかの漢字が英語表記になるというのがありまして、今公開している最新作は最近興行収入が100億円を超えたんですけど、それも黒鉄の「魚影」と書いて「サブマリン」と読ませる、そういったものを今回紹介しようと思います。

ということで今日はコナン君のぬいぐるみを持ってきたんですけど、皆さん知っての通りこのコナンが活躍するものになります。

私はコナンを全シリーズ見てきてるんですけど、今回プレゼンをするにあたって自分のコナン歴を探ってみたんですが、元々というか、今でも私は結構本を読むのが好きなんですけど、特にミステリーが好きで、最初に入ったのが江戸川乱歩の少年探偵団シリーズだったと記憶しています。

そこからアニメとかでもそういうミステリーとかを見るようになって、コナンを知ったというのが多分きっかけだったかなというふうに思っていますが、小さい頃すぎて漫画が先なのかアニメの先なのかが正直ちょっと記憶が曖昧です。

高校3年生ぐらいまでは毎年映画を見に行くぐらいの普通のファンだったんですけど、大学になって東京に上京してきて、そうなると東京でそういう展覧会とかによく行くようになってから、毎年公開される映画を何回も見に行くようになって、そこから結構コアなファンになりました。

大学生になった時はまだNetflixとかもなかったので、TSUTAYAに買いに行って全作制覇したというのが思い出です。

その中でも特にまだ最近知られたわけではないような、ちょっと昔の作品を今回は選んでみました。なぜ昔の作品の中でもこのベイカーストリートを選んだかというと、この話の中に人工知能が出てくるというのが、結構最近の現状と合ってるかなと思っていて、多分公開された当時は全然考えられていなかったことだと思うんですけど、それが本当に現実になりつつあるというのが結構面白いかなと思って今回選びました。

あとこの作品が結構私好きなんですけど、その理由としてコナン君が実は工藤新一だったというのは皆さん知っていると思うのでネタにならないと思うんですが、映画の中で工藤新一のお父さんが出てくるんですけど、結構重要な人物として描かれていて、それが出てくるのってこの映画ぐらいしかないかなと思います。

主人公のピンチを救ってくれるような存在として描かれているのがこの映画ならではかなと思っていて、そういった面で他の映画よりは特色があって、しかも今の状況に合っていて、もしかしたら近い将来こういうことが起こるかもという風に思えたので今回紹介をさせていただきました。以上です。

 志田:素晴らしい。「名探偵ベイカー街の亡霊」ありがとうございます。これは推薦されないと見ないですよ、こんなおじさんは。ここにもおじさんいっぱいいますけど。若い方々見てるかもしれません。ありがとうございます。

さあ結構これスタミナ使いますね。皆さん、聞く方がスタミナ使いますね。どのタイミングでこう休憩を入れるかといったこともちょっと考えながらいきましょう。

では次の曲に行ってみます。聞いてください。

三人目 高田さん(ライブラリーアカデミー)「スモーク」

志田:これは懐かしいです。90年代ですね。95年の作品ですよね。監督はウェイン・ワンです。「スモーク」のプレゼンをお願いいたします。

 カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

高田:「スモーク」ご紹介させていただきたいと思います。監督は香港のウェイン・ワン監督で、原作がポール・オースターの『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』というものがベースになっています。主演がハーベイ・カイテルとウィリアム・ハートの主にこの2人が主人公になっています。残念ながらウィリアム・ハートは去年亡くなっています。 

1990年のクリスマスシーズンにニューヨークタイムズに『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』が掲載されたんですね。実際にそれを読んだウェイン・ワンが気に入って、ポール・オースターに連絡を取って映画化の話が進み、オースターは直接自分で脚本も書き下ろしをしてハーベイ・カイテルのキャスティングもしています。

オースターは普段小説家ですから連載はしないんですけれども、どうして新聞の連載を引き受けたかというと、新聞というのは事実しか載らないものなんだけれども、虚構を書くというアイデアがとっても気に入って2つ返事で引き受けたと言われてきます。

物語は1990年のブルックリンが舞台になっています。主な登場人物は14年間毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮り続けているタバコ屋の店主、それがオーギー・レンという名前でハーベイ・カイテルが演じています。

他にウィリアム・ハートは事故で奥さんを亡くしてしまって書けなくなってしまった作家、ポール・ベンジャミンという名前でこの作品に出てきます。他にオーギーの元恋人のルビーという女性と、強盗犯が落とした大金を拾って命を狙われてる黒人少年のラシードの主にこの4人が物語を展開していきます。

他にもこのオーギーのタバコ屋さんにいろんな人が現れていろんな出来事が重なっていくんですけれども、途中色々な人の出来事に沿って人生が絡み合って、接点を持って物語がどんどん進んでいきます。

印象的なシーンとして、オーギーが撮りためた写真なんですけども、4000枚を年代順にきちっとアルバムに整理していてポールに突然見せます。初めは同じ写真しかないじゃないかといってポールは当惑してるんですけれども、「まあゆっくり見なさいと、そこに意味わからないでしょ」っていう風にオーギーに言われてポールは改めてじっくり見始めます。

そうするとそこにはいろんな人生の瞬間、雨が降っていたり誰もいなかったり、いろんな場面が写っていてどんどん夢中になって見ていきます。その中に亡くなったポールの奥さんが写っている1枚の写真を見つけてポールは泣いてしまうんですけれども、そういうちょっと切ないシーンも出てきたりします。

ポールがその写真を見ているうちにオーギーがそこに時間を収めているということに気づき始めます。ポールがそのことに気づいたということをオーギーもわかって、とっても嬉しくなって、2人はそこで余計理解し合えるということになっていきます。

実際に冒頭にあった『クリスマス・ストーリー』を執筆したエピソードに似ているものも出てきます。行き詰まっちゃったポールがまたタバコ屋によってオーギーに愚痴をこぼすんですけれども、そこでオーギーが「昼飯を奢ってくれたら今までに聞いたこともないような最高のクリスマス・ストーリーを話してやる。しかも掛け値なしの実話だよ。」とさらりと言ってのけます。

2人は早速出かけてランチを取ることになります。そのストーリー自体がこの『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』というものになってるんですけど、実は一昨年、タダジュンさんというこのあいだ村上春樹の新作の『町とその不確かな壁』の挿絵にもなっているんですけども、銅版画の人の絵本なんですが、その『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』だけが載っている本になってて「スモーク」ではないんですけれども、一冊の別の本になっているのでクリスマスシーズンに読んでほしいなと思います。

ひとしきりオーギーがこのストーリー自体をポールに話すんですけれども、その話し終わった後突然場面が変わって…

カンカンカーン!(終わりのゴングが鳴る音)

高田:ここからいいところ!

志田:ちなみにそのネタはなんですか?

高田:オーギーのストーリーがモノクロのサイレントの映像になって、トム・ウェイツの曲が聞けるんです。素敵なストーリーがありますので、ぜひ本当に最後の最後まで見ていただきたいと思います。

志田:素晴らしい。さて、3名まあまあ濃い作品が続きますけれども、では続いてのシャッフル行きます。

  

四人目 スズケンさん(会社員)「きっと、うまくいく」

カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

スズケン:「きっと、うまくいく」このプレゼンもきっとうまくいけばいいなと思ってこのタイトルにかかってます。

最初に映画を純粋に楽しんで入れるために、この資料では監督だとか出演者とか一切明記しません。なのでいわゆるスニークプレビュープレゼンみたいな感じでお楽しみいただければ幸いかなと思います。

最初に、これは個人的な楽しみ方なんですけど、映画の楽しみ方ということで。まず見始める前の期待感、それと見終わった後の高揚感。失敗した時は見終わった後の喪失感とか失望感とかあるんですけど、楽しみ方ということで高揚感。それから映画を見ると日常を忘れられるんじゃないかなということ。それと、それだけじゃなくて実はちょっと日常とも繋がっているところがあると意外と楽しいんですよね。あとここ一番大事なんですけど、見終わった後、明日も頑張るという風に思わせてくれるのがいい映画だなと思ってます。そんな映画が「きっと、うまくいく」だと思います。

皆さん「きっと、うまくいく」見たことある方いらっしゃいますか。これインド映画なんです。2009年の12月に公開するとインドでも大ヒット、その年のナンバーワンだったんですね。日本では遅れて2013年5月公開してます。なんと今年10周年。なかなかこれに気づいてない人が多いと思います。

Amazonの評価が5点満点中4.7!非常に高いです。比較するとE.T.は4.5ですね。コメディー感動エンターテイメントと個人的には思っています。

ガラッと変わって、インド映画って何だろうと。そもそもハリウッド、これが地理的に言うと日本から9000㎞離れてるんですけど、意外とインドは近いですね6000km。

そのハリウッドに対抗してじゃないんですけど、年間製作本数が2000本と世界一なんです。確か日本が500本くらですかね。それでも世界4位ぐらいなんですよ。

インド映画って言うんですけど、たまにボリウッドとかトリウッドと言われるんですね。インド映画イコールボリウッドではなくて、地域ごとに分かれていくんですけど、今でいうムンバイ、昔でいうボンベイの「ボ」とハリウッドの「リウッド」をつけてボリウッドと言われてるんです。

今回のこの「きっと、うまくいく」これはボリウッドです。ほぼイコールヒンドゥー語なんですね。ちなみにRRRはヒンドゥー語じゃなくてトリウッドになります。言語と地域によって異なります。笑いあり、涙あり、歌、踊り。志田さんもおっしゃっていただいておりますが、すべてのエンターテインメントがここに凝縮されている、といったものになります。

この「きっと、うまくいく」の内容は、非常にこのエリート集団が集まる理系工業科の大学に入学したランチョー、ファルファーン、ラジューという3人の友達がいるんですよ。この3バカトリオなんですね。

原題が「きっと、うまくいく」ではなくて、「3 Idiots」と言って日本語で「3バカトリオ」という意味になりますので、なかなか上手いタイトルだなと個人的に思ってます。その3人の学生が、鬼学長を怒らせたりとか様々な珍騒動を巻き起こします。

スクリーンには捧腹絶倒の学園コメディと書いてるんですけど、意外とこれがその後いろいろとミステリー仕立てに入ってくるんですね。中には学歴競争だとか教育問題だとか言ったことにも一石を投じて、さらにこの内容はどうなるんだろうと・・・

 カンカンカーン!(終わりのゴングが鳴る音)

志田:白熱のプレゼンでした。なんかインド映画のなんたるかはすごく分かりましたね。ボリウッドとかトリウッドとかあるの知らなかったですし。

 

五人目 染谷さん(ひらく)「イニシェリン島の精霊」

 カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

染谷:染谷と申します。よろしくお願いします。何にしようかなっていろいろ考えた時に、僕も最初にお話されたマイク・ミルズがものすごく好きで「カモンカモン」にしようかなってちょっと思ってたんですよね。

ただなんかここで紹介する時に、最近僕が見た中で一番違和感があるというか、見終わった後にざわざわした映画だったので、ちょっとそういう切り口にしようかなと思って「インシェリン島の聖霊」にしました。

これはですね、舞台が100年前のアイルランドの島で本当に何もないっていうか、田舎の島でみんな仕事も農業をやってたり羊飼ってたりみたいな感じで生活に変化がなくて、男たちは仕事が終わるとパブに繰り出してひたすら飲みまくる。毎日同じような話をしているだけの生活で繰り返しているみたいな。

そういう話の中でこの映画が何かっていうと、おっさん2人の喧嘩っていうだけなんですよ。本当にそれだけ。もう主題がそれだけで、それだけなのにここまで展開していくのかみたいみたいな、とんでもない映画ですね。監督は「スリー・ビルボード」を撮ったマーティン・マクドナー監督の最新作。イギリス映画で今年日本で公開されました。

ちょっとだけ簡単にあらすじを触れていくと、とにかく退屈な島の中でおっさん二人の喧嘩なんですけど、AさんとBさんがいるとしたら、AさんがBさんと毎日飲んでたんだけど、Aさんが急に呼び出して、もうお前とは金輪際飲まない、しゃべらないっていうんです。Bさんは、何で?昨日まで一緒に一緒に楽しくやってたじゃんみたいな、今日も飲もうよ、俺先にパブで待ってるからって言っても、Aさんは行かないんですね。

そこからもう見てるのがもうはてななんですよね。何が起きてるんだ、何を見させられてるんだみたいな気持ちになって、とにかく綺麗な島、そしてもう美しい荘厳な映像、その中で繰り広げられるおっさんの喧嘩みたいな。しかもこれ結構展開がゆっくりなんです。会話マーティン・マクドナーも会話がとにかく多いので会話劇なんですけど。

だんだんその喧嘩がエスカレートしていく中で、予告編とかにもあるのでちょっとだけお話しすると、Aさん、最初に絶縁した方が、これ以上俺に話しかけたらもう俺は指を切り落とすぞと、それぐらい俺は本気だ、もうとにかく俺に構ってくれるなみたいなことを言うんです。

それででもBさんの方は、なんでそんな怒ってるの?みたいな、いや俺本当によくわかんないんだけど、みたいな感じでもう本当に無邪気におバカにその約束を破って話しかけてしまう。

その後Aさんは実際に指を…って言うところから話がドドドドドと展開していくんですけど、とにかく見ている側はもう何なんだこれはみたいな、ざわざわざしたまま2時間以上過ぎるんですけど、でもこれが100年前のアイルランドで起こったことと思えないぐらいリアリティがあって、しかも今の現代社会でも嫉妬とかなんかこうしょうもない友情とかそういったことに投影できるような。100年後の日本の現代の僕らが見ても共感できることとか、そういうことがたくさんあるというところから、見た後のこの異物感っていうかざわざわ感みたいのも含めて最近見た中ですごく印象に残ったということで紹介させていただきました。以上です。

志田:お!すごい、これは今ちょうど公開が終わって2番館に行ってる感じですかね。

染谷:アマプラとかAppleTVとかで300円くらいで48時間とか、ちょっとだけ課金して観ました。

志田:すごいですね。配信時代はすぐ見れちゃうから。でも新しい映画が出てきた時に、見れるか見れないかというのも一つ大きなポイントですよね。確かに指切るぞっていうところで予告編は終わってるので、何なんだこの映画って思いながら、でも非常に興味深い内容であるなと思いながら見てました。主演はコリン・ファレルなんですよね。ゴールデングローブ賞最多7部門8ノミネート、監督賞と主演男優賞とほぼほぼ総なめにしている作品のようでございますので、皆さんチェックしてみていただきたいと思います。

プレゼンを聞いてる方がざわざわしちゃって、本当にどうなるんだろうというふうに思いますね。ありがとうございました。ではちょっと休憩を入れようと思いましたがこのまま行こうと思います。

あと2名なんですね。いっきに行こうと思います。


  六人目 平野さん(ひらく)「エヴリシング・エヴリウェア・オール・アット・ワンス」

カーン!(始まりのゴングが鳴る音)

平野:「エヴリシング・エヴリウェア・オール・アット・ワンス」本当にタイトル通りの映画だなと、見終わったら思うと思うんですけど、すごい疲れる映画です。めちゃくちゃ長いので。

しかも最初からなんかよくわからないジェットコースターに乗せられて、えっ、何々?みたいな時間が割と続くんですけど、最後にすごく意味があったなと思います。なので、人生すごいヘトヘトな人多いと思うんですけど、人生いっぱいいっぱいの人ほどこの映画を見てもらいたいなと思うんです。

というのも私最近転職してこの会社に入ったんですけど、人生の選択肢で毎日小さな選択をいっぱいしてると思うんですけど、ちょっとしたその1個1個の選択は大したことなくても、自分のその1個1個の選択があらゆる人生の分岐に繋がっているって事を普段考えることないと思うんですけど、私は転職する時に結構考えたんですね。

富山県から東京にも来たんですけど、東京じゃなくて違う例えば青森に行ったらどうなるかとか、そういうようなこととかを考えるときに、でも実際考えられること、想像できることって少ないと思うんですね。

自分がじゃあ青森に行ったらどうなるんだろう…って感じだったんですけど、この映画は人生の自分のあらゆる可能性みたいなものを疑似体験できる映像だからこそ、ここまでリアルに1本の映画でガーッという情報量を体験できるリアリティのあるアトラクションという感じです。

ちょっとあらすじを言いますと、主人公は寂れたコインランドリーを営業している女性なんです。最初からなんか絶望的な雰囲気が漂ってるんですね。旦那さんにカリカリしながら今話しかけないで!とか言って。なんか娘のこともいろいろ悩んでるし、体がちょっと弱っているうるさいお父さんもいて、みんなその主人公の女性に色々言ってくるけど、私どうしたらいいのみたいな、もう人生ちょっと限界みたいなところから始まるんですね。

限界も限界で、フリーランスの人とかは特に限界を感じる確定申告をやってる最中の女性なんですよ。確定申告って地獄らしいんですけど、確定申告をしてる時にみんなに言われて、あー!ってなって、確定申告の会場で役所の人にやり直しですよって言われて、どうしようってなっているところから突然人生が変わり出すというか。

予告見るとわかると思うんですけど、マルチバースの世界と言ってあらゆる自分の一番しょうもない人生を今この主人公は歩んでるんですけど、逆にこの人が世界を救ったヒーローだったり、あるいは何かもはや3次元ですらないっていう世界があったりとかっていうのを、突然なんかその世界に飛ぶ能力を身につけるんですね。

この説明がわかるかわかんないんですけど、訳が分からない情報をもうその税金の話をしながら、一方で一瞬でその世界が飛んだりとかするちょっとある意味現実逃避というか、パニック状態に置かれた人間の心理状態を表してるのかなとも思うんですけれども、そういう何ですかね、自分の最悪の人生と、全く最高とも言えないけどあらゆる人生を体験することによって、最初楽しいとか思うんですけど、その後にでもあらゆる人生のことを考えれば考えるほど、自分の本当に大切にしていることって何だろうみたいなことを考えさせられるんですね。

すごくその1個1個選択で人生が変わるけれども、それでも結局自分が選ぶことって何なんだろう、人生の大切なことって何なんだろうってことを考えて、意味わからないのにめちゃくちゃ最後感動するような、自分の今人生がうまくいってないなと思う人もなんか人生に対するなんかちょっと優しい気持ちが溢れてくるような映画になると思うので、お疲れの人は頑張って体力を預けてみてください。以上です。

志田:素晴らしいです。だいぶ人生疲れていた感じですか。でも確かに言われてみるとそういう映画だったなって思いました。これさっきのイニシェリンじゃないですけど見れますかね。二番館とか行けば見れるかな。

これ見ていらっしゃる方いますか?アカデミー賞とってますし、みんな見た方がいいですよ。ありがとうございます。これアジア人女性初の主演女優賞を取ったミシェル・ヨーさんは香港映画の女性アクションスターで「007」でボンドガールもやってますし。そういう方がスターダムにのし上がった作品でもあります。

あとは「グーニーズ」っていう作品で子役だったキー・ホイ・クァンがまた復活して、アカデミー賞のステージに立つ、かつ助演男優っていうのは素晴らしいアメリカンドリーム含めて話題作だったということもありますし。非常に面白い作品でございましたので、このお若い平野さんからこの作品が出てきたのは、なるほどそういう意味だったのかというふうに思いました。平野さんでした。ありがとうございました。


七人目 廣木さん(図書館総合研究所)「???????」

志田:もうトリですよ。所長(廣木)が選んだ映画なんですが、実はほぼ音楽がないんですよ。

でもちょっと僕が選んできた曲聞いてもらえます?イメージソング。こんな映画を選んでくるなんてさすが廣木所長だなと。

最初の言い出しっぺでもありますから、もう誰よりも早く応募用紙が僕のところに届いて、出てきた映画がこれか!ってひっくり返った作品でございますね。1987年の作品で「????????」という作品でございますね。ではよろしくお願いいたします。

廣木:図書館総合研究所の廣木と言います。私は実はそんなに映画を見たことないんで、ほとんど。唯一何回も見た映画がこれ。

2000年にDVDに初めてなった時にこれが見たくてDVDプレーヤーというのを買いました。これをもうずっと何回も何回も見て、私の人間性を形作った映画ということになります。

奥崎先生はですね、前科三犯のダークヒーローということで監督はクリストファー・ノーランです。(→嘘です)

三犯っていうのは確か不動産屋を刺したのと、戦死した旧友の山崎の名前を叫びながら「山崎、天皇を撃て!」といって天皇にパチンコを打ったのと、あと天皇ポルノビラの3つなのかな、という彼なんです。

まあドキュメンタリーなんですね。兵庫県の方で彼の家はバッテリー屋さんなのかな。ユアサバッテリーのジャケットをいつも着てるんですけど、愛車でいろんなところ行くんです。

いろいろな話があるんですけど、みんな見てると思うのでネタバレまで行っちゃうと、ストーリー的にはドキュメンタリーで、彼は戦争に行ってたわけです。南の島に行ってたわけですが、ニューギニアのある島で4キロ四方ぐらいの島なんですけど、そこに1万人ぐらいの日本兵がいて、もうみんな餓死寸前っていうところで終戦後に2人兵隊が処刑されたと。

つまりその戦争中だったらまだしも、終戦後、戦争終わってるのに2人処刑されたってことが分かって。その2人の兵隊の弟さんと妹さんと一緒にその当時の上官のところをめぐる旅をするんですよ。その2人を射殺した、処刑した6人の兵隊、上官なんですけど、6人全員には行かないんですけど、そこに尋ね歩いていくと。

奥崎先生の交渉方法っていうのは非常にスマートで、暴力です。必ずジジイ同士のブレーキングダウンが見れます。そこもいいシーンなんですけど。

それでですね、この映画を見た歳によっていろんな角度が変わるっていうか。若い頃見た時、私は選挙権を手に入れてから最初に投票したのが野坂昭如先生だったんですけども。

もう正義だなと。奥崎先生は正義だと、いうふうに思いながらずっと見てたんです。悪い上官たちがいると。なんですけど、今もう少し時を経ってから見ると、ちょっと上官たちの方がかわいそうだなと思うんです。

なぜ処刑されたかっていうとかなり凄惨な話になるんですけど、これちょっと後でカットするかもしれないですけど。要はですね、2通りあって真相はちょっとわからないんですけど、その4キロしかも島の中に1万人いるって事で餓死してしまうので…(/ω\)~過激発言のため自主規制~…のために殺したとある人はいっていて、もう一人は殺した張本人は、彼ら2人が…(/ω\)~過激発言のため自主規制~…ドキュメンタリーなんで戦争ってそういうことがあるんだっていうのがまずはショックなわけですけど。戦争の極限の中でそういう状態になったっていうのを問い詰められてもかわいそうなわけですよ。

だから見る側の年代によっていろいろ思い方って違うわけなんですが、まあそういう映画です。そういう極端な考え方というか、行動っていうのをずっと見てきて素晴らしいなと思ったわけですけど。

当時僕はですね、この前ポップグループのマーク・スチュワートが亡くなってしまいましたけど、彼の言葉で大好きなのが「資本主義はすべての宗教の中で最も野蛮な信仰」っていう…

 カンカンカーン!(終わりのゴングが鳴る音)

志田:いやでもいいとこまで行きましたよ。マーク・スチュワートまで出てくるとはね。

廣木:このまま行くとヤバい思想の人で終わっちゃうのでもうちょっとだけ…。

志田:ひとことでまとめだけ。

廣木:つまりですね、「僕らは一つになれないと。そのまま行こう」って星野源の言葉かと思いきや30年前ぐらいにボノも言ってたわけです。

そういう考え方って極端な人いっぱいいるし、これが図書館の思想っていうのがいっぱいあるんですよ。オーセンティックなものがいいという人もいれば、もっとくだけたものがとか、これは僕は考え方の違いだと思って、そういういろんな考え方があっていいんだと。

それは一つになれないです。そのまま行こうというのが僕の今の図書館づくりの考え方なってると。

映画の名前は「ゆきゆきて、神軍」です。


志田:ありがとうございました。この映画も80年代ですね。87年の映画でまあまあセンセーショナルなドキュメンタリー映画でした。映画ってのは配給会社さんにお願いして映画館を決めてもらわないといけないわけですけど、この映画、どこの配給会社も請け負ってくれない、こんな映画をやったらもう大変なことになると。街宣車来ちゃうんじゃないかとか。
 
で、当時開館してすぐぐらいの、渋谷のミニシアター、ユーロスペースが公開してくれたんですが、これが大ヒットになったんですね。でも廣木さんがおっしゃったように年代によって見方が変わるというのは、この映画に限らずやっぱりありますよね。若い頃に見た映画を今見ると全然伝わり方が違うとか、そういうことはいっぱいあると思うので、それはまた一つまあ大きな提言だったのかなと思いました。

 

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というような感じで1日目を終え、本来は一週間後に再招集され、その間に観てきた推薦作についての感想を、各々発表していただきます。その映画から次に思いつく映画とは何か?映画を通じた新たなコミュニティを生み出します。

教示せよ、お薦め映画を。確認せよ、まだ観ぬ映画を。映画同士でシェイクハンド、それが超映画総合研究所です。

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 2023年5月12日収録

超映画総合研究所は、近々、本格稼働します。またお知らせいたします~