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一七 僕の夢

 最後に、僕が見た夢について話そう。

  ☆

 僕はひとり、ベランダに立っている。

 そこは、僕が小学校にあがる前まで住んでいた家だ。

 そのころの僕が、団地の3階のベランダに、ひとり立っている。

 団地の裏には芝生が広がり、その先の一段高いところには公園がある。

 夕方なのだろうか、あたりは金色の光に包まれ、かすかな風が吹いている。

 おもむろに、僕は手すりに足をかけ、よじ登り始める。そして、3階のベランダから公園に向かって、手すりを蹴って飛び出すんだ。

 でも、僕は飛べない。公園にも届かない。目の前の芝生に向かって、僕は落ちていく。

 そして、僕は芝生に着地する。でもどこも痛くない。

 一迅の風が吹き抜け、それを合図に芝生は僕の背丈を超えるほどに伸びて僕をすっぽりと覆う。金色の光は眩しいほどに輝きを増して僕を優しく包み込む。

 再び穏やかな風が吹き、僕はすべてを委ねられるような安らぎを一杯に感じるんだ。

  ☆

 僕が見て、ヒロに話し、ポールに話したのは、こんな夢だった。

 ヒロと僕とポール   END

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