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四 トーク・アバウト

 四年ぶりの再会以来、僕とヒロはちょくちょく会うようになった。会うといってもどこかに遊びに行くわけではない。お酒を飲みながらひたすら話すのだ。

 場所は色々だった。居酒屋の時もあればバーの時も、焼鳥屋のこともあった。でも彼女は場所がどこであるかを特に気にしないようだった。

 話の内容も様々だった。最近見た映画のことや自分の近況、時には人生論みたいなものを延々と話すこともあった。どんな話に対してもヒロは聞き上手だった。時に相槌を、また時には質問をし、冗談にはちゃんと笑ってくれた。人の話を聞くだけではなく自分の意見や経験をいいタイミングで話すこともあった。

 彼女はこれらすべてをとても自然にこなしていた。それは四年前と何ら変わらぬヒロだった。それで僕は四年前と同じようにありとあらゆる事をヒロに話した。僕は彼女と話すことがとても好きだった。

 でも、もちろんすべてがあの頃と同じというわけにはいかなかった。

 僕がヒロと話さないことがふたつあった。ひとつはポールのことで、もうひとつは昔の思い出話だった。


> 五 夏は過ぎ、彼のいない日々

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