【初note】 俺ガイルに脳を破壊されてラノベ作家になった話

1.片沼ほとりとは

初めまして、片沼ほとりと申します。
若手の新米ラノベ作家です。名前だけでも覚えて帰ってください。

どれくらい若手かというと、2000年生まれの23歳です。ミレニアムベイビーとは僕のことです。
そしてどれくらい新米ラノベ作家かというと、集英社ライトノベル新人賞IP小説部門を受賞したデビュー作「なりすまし聖女様の人生逆転計画」が今月22日に発売されます!
2024/2/22に発売されました!

新人らしからぬ抜かりのない宣伝です。ここまで読んでもらった時点で、本noteの目的は8割方達成されたと言っても過言ではありません。

ついでにフォローしていただけるととても喜びます。予約なんてしてくれた日には舞い踊ります。
え?

「お前の作品とかどうでもいいんだよ、タイトルで釣ったんだから早くその話をしろよ」だって?

すいません本当にその通りです。

デビュー作についても語りたいことがたくさんあるんですが、それはまたの機会にします。
まだ試し読みも公開されていないので、「表紙が可愛い!」くらいしか言うことがありませんし。いやそれだけでもnote一本書こうと思えば書けるんですけどね(物書きのプライド)。

そんなわけで、今回は自己紹介がてら、
「23年間色々あったけど、人生で一番の幸運は前情報が一切ない状態で俺ガイルを一気読みできたことだよな~」
みたいな話をします。

Q.初noteからタイトルにレジェンド作品の名前を借りて恥ずかしくないんですか?
A.うるせ~~~~~~~~~~~~~俺ガイルを読め!!!!!


2.片沼ほとり(俺ガイル以前)

片沼ほとりの約23年の人生は、俺ガイル以前と俺ガイル以後に分けられます。比率は20:3です。

俺ガイル以前については語るべきことがあまりないんですが、小説とかコンテンツとかに関する出来事を抜き出すとこんな感じ。

  • 小学校低学年の頃、将来なりたい職業に「京極夏彦」と書く
    この頃は祖母が京極夏彦さんの本をたくさん読んでいて、僕は京極夏彦を職業だと思っていました。可愛いですね。
    そんな僕は今でも京極夏彦さんの本を読んだことがありません。ごめんなさい。

  • 小学校の図書館で児童文学を読みまくる
    割と遠い記憶ですが、毎日本を読んでいたはずです。絶対今より読んでますね。
    好きな作者ははやみねかおるでした。「名探偵夢水清志郎」シリーズとか「都会のトム・ソーヤ」シリーズとか……読み返したくなってきた。

  • 小学校の卒業文集に「将来の夢は小説家です」と書く
    この頃には京極夏彦が職業でないことを理解していました。偉いですね。
    じゃあこの頃から小説家を目指してたのかというとそんなことは全然なく、本好きの祖母を喜ばせるためだけに書いた覚えがあります。可愛い孫です。

  • 中高時代、小説から離れる
    普通ラノベにハマるならこのあたりでしょうし、実際周りにもオタクはたくさんいたんですが、僕は逆に小学生時代と比べてあまり小説を読まなくなりました。部活に打ち込んでいたのが大きな要因です。
    一応ラノベとも出会ったものの、この期間に読んだラノベは2シリーズだけでした。
    他のオタクコンテンツで言うと、一年に数作品、気合い入れて有名アニメを一気見していました。コードギアスとかシュタゲとかはここで出会いました。もう一度記憶を消して観たい。

とまあこんな感じで、「オタクコンテンツには理解があるが重度のオタクというほどではない、小説を書くなんてやったこともない」という状態です。めちゃめちゃ普通の人間ですね。

そうして普通に大学に進学し……話は大学二年生の夏まで飛びます。

3.俺ガイルとの出会い

大学二年生です。つまりは20歳です。つまりは2020年です。
つまり? ――コロナ時代の幕開けです。

そういうわけで、大学が全部リモートになりました。授業も部活もサークルもオンラインです。暇な時間が大量発生しました。

そこで「なんか本でも読むか~」となって色々調べ、「なんかhontoっていう本専用のショップがあるらしいぞ」と発見し、ストア内をなんとなく徘徊しているときに見つけたのが、こちらの商品でした。

番外編を含めた俺ガイル全17冊セット。イラスト(カラー口絵・モノクロ挿絵)が全カットされた廉価版です。
当時は何も思いませんでしたが、珍しい販売形態ですね。honto専売なのかもしれません。


さて、ここまで全人類俺ガイルを知っている体で書いてたんですが一応説明しておきます。

正式名称は「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」で、ガガガ文庫から出版されているライトノベルです。2011年から始まった同シリーズは2019年に最終14巻をもって完結しています(その後にスピンオフなどが出ていますがそれらは別として)。アニメ三期も2020年に放送され、完結巻までカバーされました。

ガガガ文庫の最大ヒット作であり、たぶん青春ラブコメでも一番売れた作品なんじゃないでしょうか。まさにレジェンドです。

僕が本作に出会った2020年は、完結からすでに一年が経過していました。今調べてみたらちょうどアニメ三期が放送されていた時期のようですね。


そして冒頭に書いたことに戻るのですが――僕は当時、俺ガイルの情報にほとんど触れていませんでした。
当時の知識といえば、八幡・結衣・雪乃・いろはのキャラデザに見覚えがあったのと、「奉仕部」という部活があるらしいということくらい。
ストーリーも結末も、何も知りませんでした。

ラノベは読んでいないにしてもネットはそれなりに触っていたので、ここまで情報が入ってなかったのは奇跡的だと思います。

そんなわけで、目の前に突然現れた、面白いらしいという評判だけ聞いていた俺ガイル全巻セット。
初回限定クーポンも考慮するとたしか4000円くらいで買えたので、軽い気持ちでポチりました。

――いやこれ、今思えば買ったこと自体も奇跡です。
当時の僕に小説を読む習慣はまったくなかったですし、ラノベを読むのも久しぶり。シリーズ全巻一気買いという行為すら人生初めてです。
友達から激烈に推されたなんてこともなく、4000円という金額も大学生にとって決して安いものではありません。

ホントよく買ったな……合わなかったらどうするんだ……。

しかしこの奇跡の連続が、僕の人生を変えることになります。

4.脳破壊

結果から書きましょう。

僕は全17冊を貪るように読み、たったの4日で読破しました。
そして最終刊を読み終えた瞬間、ベッドに倒れ込むほどの過呼吸に襲われました。

……三年半経った今でも鮮明に思い出せます。
「サクサク読めて面白いな~」くらいの気持ちで読み進めた序盤。
気づけば物語に引き込まれ、「全員に幸せになってほしい」と願いながら、頭痛を振り払ってページをめくった中終盤。
最終巻を前にしたときの「これを読んだら終わるのか」という躊躇い。
それを乗り越え、胸が締め付けられる感覚とともに読み終わり――過呼吸に襲われました。

なんとか息を整えようと寝転んだり歩き回ったりしながら、僕は自分自身に驚いていました。

今まで自分のことを、それほど感情が動かない方の人間だと思っていました。感動ものの作品で泣いたこともありませんでした。
そんな自分が、自分自身に驚いていられるくらいには冷静なのに、呼吸はまったく整わないのです。何かを通り過ぎて笑ってしまいました。
「脳が破壊された」としか表現できない、自分が自分でないような感覚でした。

――その後、過呼吸は数分で収まりましたが、三日くらいは呼吸が少しおかしいままでした。
バイトで外に出る機会はありましたが、俺ガイルのことを思い返すだけで息が浅くなりました。

そうして体調が戻る頃。自分の中に一つの天啓が降りてきました。
「必ず、ライトノベル作家になる」と。
それから僕はいくつもの名作ラブコメを読み込み、そしてラブコメを書き始めました。

今まで小説を書いたことがないとか、読書すら小学生以来まともにしてないとか、そんなことは関係ありません。
理屈じゃなくて直観、いや確信でした。

4.片沼ほとり(俺ガイル以後)

それからなんやかんやあって三年半。ついにこうしてラノベ作家デビューすることができました。

なんやかんやの部分? 公募歴? そこは重要じゃないからもういいよ!

そしてしつこく宣伝再掲すると、俺ガイルで脳を破壊された末にたどり着いた僕のデビュー作「なりすまし聖女様の人生逆転計画」がこちらです。

……みなさんからこんなツッコミが聞こえてくるようです。

「お前のデビュー作、俺ガイルと全然違うじゃねーか!」

と。

いやホントぐうの音も出ません。
俺ガイルが「ひねくれ主人公の青春もの(半分くらい純文学)」なら、なりすまし聖女は「女主人公異世界ファンタジー(100%ラノベ)」です。
ちくわとしゃもじくらい違いますね。というかこの作品を70代の祖母に読ませるなんて正気か?

まあ細かいことはいいんですよ。これはこれでめちゃくちゃ面白いと自信を持って言えるので。
っていうか俺ガイルも1巻はコメディ全振りですしね。

じゃあいつか俺ガイルのような青春作品を書きたいかというと、今のところ微妙です。
というのも、僕は今なお、俺ガイルから逃げ続けているからです。

どういうことか。

俺ガイルを読んだことは間違いなく人生を変えた出来事であり、初期衝動と言えるものです。
ですが、僕はあれ以来俺ガイルを読んでいません。
アニメも観ていないし、俺ガイル公式や渡航さんのTwitterもフォローしていません。むしろ俺ガイルについての情報を積極的に遠ざけています。
短期間で一気に読んだので記憶の定着率も低いのでしょう。ぶっちゃけ内容もほとんど忘れてしまいました。

人生の方向性を変えるほどの衝撃の正体は何だったのか、どうしてあれほど物語に引き込まれたのか、その理由を直視することなくここまできました。
なぜなら――もう一度読み返したときに「今読むと別に普通だな」となってしまうのが怖いのです。


今思えば俺ガイルは、僕が純粋な読者として楽しめた最後の作品です。あの日以来、僕はすべての作品を作家目線で読むようになりました。
もちろん「ラノベ作家になるための訓練」という意味合いも多分にあるのですが、一種の防衛機制でもあると思っています。
あの時のように心を壊されないよう、一歩引いた目線で読むようになったのです。どんな展開が繰り広げられても、作者の意図を意識していれば大きく心が動かされることはありません。
我ながらつまらない読者ですね。
(これも「脳が破壊された」の一側面と言えるかもしれません)


そんな調子でラノベを読み続け、本を出せる程度には実力がついた今。
全巻を読み返しても、あの頃のような読書体験を再現することは絶対にできません。これは絶対です。
それどころか、今なら自動的に脳が分析を始めてしまうでしょう。「主人公が~~だから人気になったのか」とか「このシーンは~~だから感動するのか」とか、きっと言語化できてしまいます。

作家としては決して悪いことではありません。他の作品では積極的にやっています。
ですが、俺ガイルだけは分析の対象にしたくないのです。
聖域として大切に守り、犯したくないのです。
この気持ちは誰かに話したこともありませんし、もちろん文章にしたのも今が初めてですが、やっぱり揺らぎません。


もし僕が俺ガイルを読み返すとしたら、心を刺しにいく青春ものを書くときです。
その時はいつか来るのか、それとも永遠に来ないのか。楽しみにしていてください。


以上、俺ガイル限界オタクの限界回顧録でした。初noteってこれでいいんですかね?

おわり


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