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【上】バルモラル城における色素復元大会とその顛末

スコットランド──バルモラル城には雨が降っていた。

「次の題に移る。」
山高帽の紳士は何事もなかったかのように口を開いた。

今、彼の眼前には白装束の男が4人座している。うち2人は首が無く、それは側に立つ鉄仮面の男による仕業だというのは誰の目にも明らかだった。

全ての飲料が透明になって久しい現代。元の飲み物の色を知る者は誰一人として存在しない。

そのため色素復元者(リノベーター)は、史料から透明な飲料のかつての姿を再現することを生業としていた。しかし、年数が経ち、史実と異なる復元により高額の請求をする業者は後をたたない。

驟雨の中、白装束の男が一人、ツェペリは後悔していた。自分の贋作技術を頼り、5000万ポンドに釣られさえしなければ。だが自分の運を信じろ…例えもう1人が…。

白装束のもう一人、キリンジは闘志に燃えていた。ここまで残ったのだ、嘘は突き通させてもらう。例えもう1人が…。

「「本物であったとしても!!」」 


「次の題は……コウチャである!!」

紳士の明朗な声が響き渡る。

鉄仮面は2人の行く末を示すよう妖しく光った。

#紅茶パルプ #紅茶のある風景  #人が死ぬ

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