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「丸櫃孔」の鐔①

鐔の櫃孔(小柄や笄を通す穴)でことに珍しい形状が「丸穴」ではないだろうか。

(画像出典:instagram Tosoguya
「刀の小道具図譜-戦国武士の生き様-」より
「刀の鐔図譜」より
「刀の鐔図譜」より
「鐔観照記 著:鳥越一太郎」より

以下は丸穴ではないが、近しいサイズの櫃孔のものである。

「鐔観照記 著:鳥越一太郎」より
一応鎌倉時代と言われている鐔
「鐔観照記 著:鳥越一太郎」より

この丸穴の用途について、小窪和博氏は「鞘放れを止める紐穴か、変形の笄でも入れた穴と思われる。」と同氏著の「刀の小道具図譜」内にて述べている。
以前割笄でそれこそ幅8㎜位の作を見た事があるような記憶があるが、そうした物が入っていた可能性はあるのだろうか。
しかしなんというか笄や小柄を入れる為の穴とは個人的にはどうしても思えない。
小さい笄や小柄を使用する意味があるのか、よく分からない為である。
そうした点で見ると「鞘放れを止める紐穴」という意見の方が腑に落ちる所である。

いずれにしてもこの丸穴はあまり見ない珍しい物で、共通しているのは室町期あたりの作と見られているという事だろうか。

私も1点丸櫃孔の鐔を所持しているが、山銅地に黒漆が掛けられている。
厚みは2㎜と非常に薄い。
ランダムに打ち込まれた鏨の点は魚々子の先駆けを思わせるものがあり、打ち方は室町期の古金工鐔にもまま見られるものである。

加えて茎孔が36㎜と非常に大きい事から大太刀に掛けられていたようにも思える。このような事からこの鐔も室町時代あたり、もしくは南北朝あたりまでもしかしたら時代の上がる物でないかと考えているがどうだろうか。
それにしても金文字で和歌のような物が彫られているの初めて見た。

象嵌部を拡大して見たのが以下である。
何というか金をこすりつけているようにも見えるが、これが金象嵌の手法かは不明である。


丸い櫃孔は後加工の様にも見えるがここは分からない。
むしろ和歌の方が後彫りの可能性も捨てきれない。

尚、今回も和歌を「miwo」というアプリを使って解読しようと試みたが、黒地に金文字という色味の問題なのか分からないが解読そのものが出来なかった。
もし読者の方で詳しい方がいらっしゃれば書かれている内容を教えて頂けると嬉しいです。

以前は以下の様にある程度解読出来たのですが。。


尚、軍刀の鐔にも変わった穴が空いていますが、こちらは四角で位置も違います。

(画像出典:軍刀外装の細部


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

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