見出し画像

身分による下緒の色(江戸期)

打刀拵を見ると鐔のすぐ近くに紐が付いており、これを「下緒(さげお)」という。

下緒は脇差拵や短刀拵にも付いていて、栗形に下緒を通して帯と固定する事で鞘が容易に抜け落ちないようにするという用途がある。
伝承では下緒を使って悪い者を捕まえるための縄にしたというのも聞きますが、編み込まれた紐であっても御用するほどの耐久性や即効性の面で効力があるのかは個人的には疑問が残る。
例えば帯に巻き付けた紐を直ぐにほどけるものなのか?
解いたら捕縛中に拵が帯から抜け落ちてしまう可能性は無いのか?など疑問が多く残る。


・下緒の長さの決まり

さて下緒の長さは流派別での決まりもあるようだが、一応定寸が決められている。
大小の話にはなるが、大の方が5尺(約150㎝)、小が2尺5寸(約75㎝)である。大の方は大体刀身の2倍位の長さと考えれば覚えやすいかもしれない。

以下の写真は1860~1865年にアメリカ人により撮影された写真との事である。撮影の為だからであろうが、大小拵のうち大の下緒は緩く垂らし、小は差裏に回して帯に挟んでいる。

(画像出典:下緒 wikipedia


・身分による下緒の色

(画像出典:浅草桐生堂

今日見る拵に付いている下緒は柄糸同様に後世に付けなおされた物も多く(糸は傷みやすい為)、必ずしもこの色の物が拵に付いているから上級武士の物だとか、下級武士の物だとかはあまり真面目に考えすぎなくて良い気もするが、例えば奥州会津藩では江戸時代、以下の様に色が決められていたようだ。

紫色
別格の色。家老(千石高)、若年寄八百石高)

御納戸色(エメラルドグリーンのような色):
家老、若年寄、三奉行(三百石高)、城代(五百石高)、大目付(三百石高)、軍事奉行(三百石高)、学校奉行(三百石高)など<高士>

黒色
一般の武士(上士)<一の寄合以上>

紺色
猪苗代城在勤の猪苗代十騎。

花色(水色のような色):
厩別当、勘定頭、納戸、御側医師、駒奉行、武芸指南役。<二ノ寄合>

茶色
(中士)<三ノ寄合>

萌黄色(黄緑色):
(中士)<年割>

浅葱色(黄色):
(中士)<月割>

(引用元:下緒 wikipedia

これを見ると「紫」が一番階級が高いように思われるが、一番は緋色で、この色は武士として最も高い身分の将軍、大名のみだったようだ。

(画像出典:浅草桐生堂

上記の様に江戸時代になると武士階級に厳格な決まりが定められ、個人の好みで色を変える事はなかなか出来なかったようであるが、それ以前は比較的個人の趣向で好きな色や紋様の物が用いられたようである。
その為、例えば以下のような文様の物も比較的自由に使えたのかもしれない。

(画像出典:星堂


・終わりに

今回は下緒の色にフォーカスしてみたが、下緒の織り方や鞘への結び方なども実に奥が深い。
この辺りも書くと長くなってしまうのでまた別の機会に書こうと思います。


今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はいいねを押して頂けると嬉しいです^^
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?