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古刀の疵はあって当たり前と言うけれど、実際どの程度あるのか

古刀は疵があって当たり前と言われますが、実際どの程度あるものなのでしょうか。
同価格帯の新刀と古刀を比較してみました。
疵の差(量や程度)を比較する事で、どの程度古刀に疵が付いているかの参考になれば嬉しく思います。(あくまで単純に刀身の表面に付いた疵の差のみの比較です)
今回比較するのは120万円の初代河内守国助(新刀)と、125万円の無銘(来国安)(古刀)。
時代で言えば両者には250年ほどの開きがあります。

日本刀は当然ながら全て1点物であり状態も物によりけりですので、同じ価格帯でもこれより沢山疵が付いているものもあれば、付いていないものもあります。
御理解ください。

尚、今回のブログ作成にあたり画像は葵美術さんより借用しております。
葵美術さんの写真は刀身をスキャンしたような画像と押形、刃文にライトを当てて撮影した画像の3種が掲載されています。
とても綺麗で疵などもそのまま見やすいかと思いますので、是非以下のリンク先の画像をズームして隅々まで確認してみて下さい。こちらの記事の画像は低画質になってしまいます。


①初代河内守国助(新刀)

刀身に目立つ疵がほぼ全く無い事が分かるかと思います。
写真を拡大してまずは良く見てみて頂ければと思います。
尚、疵ではないですが区は3cmほど上げてあります。(新刀で区送りされていると値段が下がる要因となります)

(画像出典:葵美術 河内守国助(初代)(特別保存刀剣)
(画像出典:葵美術 河内守国助(初代)(特別保存刀剣)
疵らしきものはこの程度ではないでしょうか。
これは埋金っぽくも見えますが単純に大肌なのかもしれません。写真だと良く分からず。


②無銘来国安(古刀)

次に同価格帯の南北朝時代頃の古刀です。
大摺り上げといって、茎を切って刀身の長さを短く仕立てているので銘が無くなっています。
刀身に無数の疵があるのでズームして見てみて下さい。
そして余裕があれば茎の状態も良く比較してみてください。

(画像出典:葵美術 無銘(来国安)特別保存

隅々まで見ると以下のような疵が至るところにある事が分かります。
大肌が諸所に出ている事から、研ぎ減った事で現れた疵のようにも見えます。これ以上研ぐと疵を更に広げてしまう可能性があるので、ここで止めている(これ以上取り切れない疵)とも考えられそうです。

大肌に穴のような疵
刃部に何かが当たったような跡も
こちらの写真だと疵が分かりづらくなってしまいますね
(画像出典:葵美術 無銘(来国安)特別保存


③両者を比較して

どのような印象を抱いたでしょうか。
程度の差はあれど、120万円の古刀であればこの程度の疵は良くあります。
ここから値段が上がると大肌の部分が減って疵も減り、つまり製作当初の形になっていくのですが、それでも細かな疵は結構あります。
一方で新刀以降の刀は120万円も出せば綺麗な疵の少ない物が買える可能性があります。冒頭に書いたように両者には250年程の差がある事も大きいです。

古刀はこれらのような疵は無数にありますが、新刀のようにどこを見ても同じように綺麗に整った刃文はしておらず、刃中や地鉄に様々な変化があり場所によって見え方が異なります。
これにより一度に全てを捉えきるのが難しかったりしますが、言い換えれば見所が多いとも言えます。

初代河内守国助(新刀)
無銘来国安(古刀)

なるべく疵の無い綺麗な物を求めるのであれば新刀以降の方が良いと思いますし(一番疵が少ないのは現代刀)、疵があってもいいから変化や多くの見所を求めたい人であれば古刀は向いているかもしれません。
ただ新刀以降の物でも変化の多い物はありますし、逆も然りです。
結局のところ何に重きを置くのかで変わってくるのですが、一つ確実に言えるのは疵はどの刀にも必ずあります。
結局完璧を求めても無駄でどこかで許容する必要があります。
あまり許容出来ない人は新刀以降のものを、沢山許容できる人は古刀含めた全ての刀から好きな刀を選ぶのが良いかと思います。
3000万位ポンと出せる方であればあまり気にしなくても良いとは思いますが。。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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