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明寿っぽい鉄鐔についての考察①

先日オクにて面白そうな鐔があり落札した。
打ち返し耳が埋忠明寿かその近くの者の作と似ているような気がして頭から離れなくなってしまった。

鉄質については写真では分かりづらい所もありこれはある意味博打。
結論から言えば鉄質は手入れも行き届いており焼きなました鉄は艶もありとても良い物だった。
それがこちらの鐔。

「無銘埋忠」で保存鑑定書が付いています。

厚みは切羽台で2.9㎜、耳で3.8㎜。外形は縦84.7㎜、横78.7㎜。
鑑定書によると波文図とのこと。櫃孔の形は見た事があるが何だったか…古い物に見られた覚えがあるが。


・埋忠明寿作との比較

明寿の鐔の耳はなだらかな高低差を生み出しており、それが織部焼などに現れる歪みのようであり何とも言えぬ味わいがある。
捻り耳をした明寿の鐔は真鍮地を用いた作が多いが鉄地も存在する。

「特別展埋忠 桃山刀剣界の雄」より
(画像出典:鐔鑑賞記 by Zenzai 宝珠図鐔 埋忠明寿
(画像出典:文化遺産オンライン 織部黒茶碗


因みに真鍮地の作だと以下のようなものがある。

「特別展埋忠 桃山刀剣界の雄」より
「刀装具鑑賞画題辞典 著:福士繁雄」より


明寿の捻り耳はなだらかになり、光忠になると段差が生まれると言うが、あくまで全体的な傾向であって明寿にも部分的には急な箇所が見られるように個人的には思う。
どちらかと言えば段差の縦横と高さ方向に緩急をつけてより楽しめる変化を生み出しているのが明寿のようにも感じる。
まさに茶器に見られる歪んだ変化ではないだろうか。
特に以下の鐔はそれを体現しており素晴らしい。

「特別展埋忠 桃山刀剣界の雄」より

上記鐔と今回落札した鐔を比較すると高低差の変化にかなり劣りが見られるので、明寿作にしては躍動感が至らない気がしてくる。

今回落札した鐔

以下は耳の拡大図である。

一番高さを生み出している箇所。
部分的にめり込ませるほど深く彫る事で変化を付けようとしている事が見て取れる。
なだらかな箇所



・二字埋忠との比較

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