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刃区数センチ上にありがちな凹み

刃区から数センチ上が部分的に凹んだように見える刀を時々見る気がします。
以前購入した歴戦の刀と呼んでいるこの刀もこれに該当。
大げさに書くと、以下の赤線の様に刃区の少し上だけが一段下がっているように見えるのです。

研ぎ減りが進んだ刀であれば下の図の②の様に(絵は大げさですが)一度凹んだ部分はそのままの幅で伸びていくような姿が何となく素人考えでは自然に思えるのですが、結構①のように部分的に凹んだ刀を見る気がするのです。

部分的に錆が深く付いてしまった為、もしくは刀を受けた際に刃欠けができやすく?ここだけ深めに研ぎ、ここに合わせて全体を研ぐと刀を大きく減らしてしまう事になるので他は残しす事で部分的に凹んでいるのかな?などと考えてみたりしたのですが結局正解は分かりません。
研師の方に見て頂く機会があれば聞いてみたいと思います。

そんな折「日本刀を研ぐ 著:永山光幹」をたまたま読んでいると、「研師万人の癖と言われますが、刃区から二、三寸上のところがへこみ(心なく研いでいると自然に凹んでしまうもので「研ぎだまり」とも言う)」と書いてありました。
つまり研ぐ際にここが凹みがちになる、という事でしょうか。

「日本刀を研ぐ 著:永山光幹」より
「日本刀を研ぐ 著:永山光幹」より

更に研師の平井隆守さんのブログを読むと「研ぎだまり」について以下の様に書いてありました。

写真の刀は、錆が有ったので、それを取るのは、勿論として、刃区(はまち)の数センチ上が凹んでいたので、その周辺を凹んだ所に合わせて研ぎ、光に透かして見た時、刃筋が通る様に作業しました。
 この刃区上の所が凹んでいる刀は多く、原因は、生刃が最初付いていて、何度か研ぎを経ると、生刃が付いている部分は刃方に厚みが有るので減らず、生刃と刃の付いている部分の境目は、刃が付いて居る訳なので、減りが大きく、凹みを生じてしまうのと、刃区の所が砥石を当て難い場所なので、そこにばかり気を取られると、砥石の端の方が、区上数センチの所に強く当たる為、凹むのだと思っています
 この凹んでいるのを、研屋の用語では、研ぎ溜まりと言ってますが、鑑定の方の書いた本だと、錆際辺りを、研ぎ溜まりと呼んでいる場合も有るみたいです。(引用元:日本刀研師の日々(刀剣研磨 日本刀研磨)より)

尚最後の行に書いてある通り、研師の方の言う研ぎ溜まりは区から数cm上ですが、錆際あたり、つまり以下のあたりを研ぎ溜まりという説もありどちらが正しいのかまだ分かりません。


まぁこれは用語の定義の話なのでどちらでも良いのですが、なぜこのように凹むのか、凹みがちなのかというのは原理を理解しておきたいなと感じた次第です。
因みに今回の部分は、ハバキがつき、柄の付いた状態で見ると良く分かりませんが、ハバキを外して見ると良く分かります。

この状態では減ってるのがイマイチ分からないですが…
ハバキを取ると減っている様子が分かります

刀を買う時にはハバキ下もしっかり見て買いたい所です。
この刀も買う時は勿論ハバキを下させて頂きました。
最後の話は「減っている=悪い」というわけではなく、減っているのを減っていると知った上で買いたいですよね、という話です。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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