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小さな仏像を手元に置いてみる

美術館で個人的にあまり見ずにスルーしてしまうのが仏像エリア。
しかし歴史が非常に長く、人々の生活に深く関係していたであろうこともまた事実。
バガボンド 著:井上雄彦」という宮本武蔵を描いた漫画では武蔵が木の仏像を彫っているシーンもありました。(実際にも彫っていたようで不動明王立像が残っています)
刀や鐔にも南無阿弥陀佛と彫られたり描かれた物は多く、当時の武士の信仰を表している様子も見て取れます。

また仏像は歴史も古く、当時使われた材料にどのような物があったか、どのような製法で作られたのかというヒントも得られそうで、古い刀装具を集める上では横の文化を知る事は重要な事にも何となくですが感じています。
とはいえ流石に仏像に手を出すほど信仰心はまだありませんし、そもそも家に仏壇があるわけでもなく買うのもはばかれます。

そんな折、骨董サイトを眺めていると指サイズの小さな仏像を見つけました。
江戸時代頃の物のようですが、非常に小さく可愛らしい。
なぜか一目惚れしてしまい手元に置いてみる事に。

シュッとしていてバランスも良い

台座も一体鋳造されています。
素材は黄銅(真鍮)らしいです。山銅にも思えましたが材質の判断は難しいですね。
布を1枚掛けただけの簡素な服装から「阿弥陀如来」像ではないかとの事。
因みに阿弥陀如来と判断する為のポイントとして頭の渦巻(螺髪)もあるようですが、こちらは擦れて消えてしまったのか見る事が出来ません。
ツルツルです。

台座も一体鋳造されています
底面は安定させる為か近代に摺った跡が見られるとのこと


・阿弥陀如来について

まず仏像には「○○如来」の他、「○○菩薩」「○○明王」「○○天」など様々な名称がある事に気が付きます。
この中で「如来」は悟りを開いた仏様の事で、仏教において一番位が高いとされているそうです。
初めて知りました。

画像出典:Youtube「阿弥陀如来ってどういう仏様?天台宗と浄土宗と浄土真宗のご本尊の解説」


そしてその最高位の如来には以下5種類があるそうです。

・釈迦如来
仏教を開いた実在するお釈迦様(ゴータマ・シダールタ)が悟りを開いた姿。

・薬師如来
病気を治して心身の健康を守ってくれる。手に薬壺(やっこ)を持っている。但し奈良時代以前の大仏は手に持っていない事が多いらしい。

・毘盧遮那(びるしゃら)如来
廬舎那仏(るしゃなぶつ)とも呼ばれる。毘盧遮那は太陽の意で、宇宙の中心から太陽のように照らし続ける。つまり広大な仏教世界の中心に君臨する如来が毘盧舎那とのこと。密教では大日如来と同一。
代表的なのは奈良の大仏など。

・大日如来
真言宗や天台宗など密教における最高仏。
大いなる日輪という意味で太陽を意味しており、毘盧遮那如来と華厳経では毘盧遮那如来と同一。豪華な装飾品や冠が付いているのが特徴。

・阿弥陀如来
浄土宗、浄土真宗の最高仏。鎌倉時代に広く民衆へ広まる。
「南無阿弥陀仏(阿弥陀様に私の身の全てを任せますという意味)」と唱える事で自分が亡くなった時に極楽浄土へ導いてくれるという信仰。


・立像と座像について

尚、仏像には立っている立像(立弥陀)と、座っている座像(座弥陀)があります。
以下の解説が面白かったので引用します。

座像は一般的に瞑想の修行中のお姿や、説法をしているお姿だと考えられています。
釈迦如来や阿弥陀如来など、如来像には座像も立像も存在するものが多いのですが大日如来だけは必ず座っているお姿だというのが大きな特徴です。

また、立像は人々を救済しようと立ち上がったお姿だと考えられています。実は時代と共に立像が増えていくのですが、これは人々の不安が増した時代背景により、人々の『救いにきて欲しい』との願望の表れだといわれております。
従来、この立像は足を揃えて立っているお姿が多かったのですが、鎌倉時代以降となると歩き出したように片足が前に出た立像も登場します。
人々が救済をさらに急かす気持ちが仏像に表れているといえます。
珍しいですが、走っている【走り大黒】などの仏像も存在しますので、人々がいかに仏像に救いを求めていたかがわかります。
(引用元:仏像には座像と立像が存在するけど違いって何?

今回の仏像は立像です。

サイズからも南無阿弥陀仏と日常的に唱え信仰していたような人が肌身離さず持っていた物でしょうか。
仏像にも少し興味が出てきたので、これから美術館などに行った際は鑑賞が少し楽しめそうです。
勿論自分の中で中心にある好きな物は刀や刀装具である事に揺らぎはないのですが、そこから段々と興味の幅が周囲へ広がっていっているのもまた事実で、美術品という知の探求はなかなか面白いなと実感します。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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