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鐔展示ケースを作る上で厄介な3つの事

鐔展示ケースの構想部分のスケッチを描いては描き直して描いては描き直してを繰り返しているうちに気が付けばノートが一杯に…。
作る前はただ枠を作って飾れば、と単純そうに考えていましたが実際に作ってみると意外に厄介な事が多いです。

概ね厄介な点をまとめると以下の3点。

1点目、鐔の材質が様々(鉄や真鍮、素銅、赤銅、四分一、他)で万能なデザインが見つからない点。

2点目、直径の異なる物が様々あり展示ケース中心に合わせづらい点。
(刀は反りと長さの違い位なので中心位置自体は合わせやすい)

3点目、名品を飾ろうとすると展示ケース側が位負けしてアンバランスになる点。

①1点目材質様々で万能なデザインが見つからない

刀以上に世界観が拡がっているのが鐔であり、それゆえに奇抜なデザインというのは返ってその世界観を阻害していまう傾向がある。
刀も1振1振に世界観がそれぞれあるとはいえ、大まかには茎は黒で刀身は銀で鎺が金か茶である事に概ね変わりはない。
刀をある程度見れるようになるまではどれも同じに見えても仕方がない。
そのため刀の展示ケースは比較的どのような刀にも合う万能なデザインを考えやすくもあります。
一方で鐔ケースで万能なデザインと言えば、黒枠に無地風の背景という物が無難であることは想像に容易いのですが、これは世の中に結構ありつまらない。
つまる所オリジナリティを出しづらいという点が厄介な点です。
例えば以下はHEROES展の鐔ケース。まさにシンプルで美しいが、それゆえこのような鐔ケースは世の中に結構ある。

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②直径の異なる物が様々あり展示ケース中心に合わせづらい

刀用と脇差用で直径サイズが異なるが、鐔を飾る際に目釘孔部分を引っ掛けるにしろ、鐔の下面を抑えるにしろ、展示ケースに鐔の中心を持ってこようとした場合、1つの展示ケースでそれを実現しようとした場合は鐔の支持部を稼働出来るように作る必要があり、機構が若干複雑になる。
複雑になるという事はその分壊れやすくもなり、コストアップになるという事でもあるのでなるべく避けたい。
つまり簡単な構造でどんな鐔も狙ったベストな位置に展示する事が実は難しい、という点。

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③鐔の名品を飾ろうとすると展示ケース側が位負けしてアンバランスになる点

そして3点目が名品を飾ると展示ケースが位負けしてしまい、返って展示ケースに飾らない方が良く見えてしまう点。
刀の名品もそうであるが、鐔の名品も発するオーラが凄まじい。
時代にはその時代にあった思想やデザインがあり、それらは用途が全く違う物でも調和が取れているのである。
それゆえ鐔は製作された時代を色濃く反映している物が多く、現代に作られた物をそのまま当てがうとミスマッチする事が多々ある。
木材にしても時代を経た古い木材は合うが、新しい木材は色味がどこか合わない、そういった微妙な雰囲気の違いとでもいうべきだろうか。
しかしこれは必ず合うデザインという物があるはずなので、根気強く探していきたい。

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(鯉魚図鐔 銘 夏雄 東京国立博物館収蔵)


④終わりに

という事でひとまず当たり障りの無い鐔ケースを一度作って見てそれを見ながら改良を考えるか、それとも一か八かに少なからず費用をかけるよりはもう少し熟考して何かしら次に繋げられそうな挑戦なり確信が持てるものが出来そうな段階で作るか悩むところ。
鐔ケースの構造(デザイン)などについてはこれまでかなり沢山考えてきた。
その中で鐔の両面を見せる方法だったりも考えがまとまってきている。

しかしまだ何か決め手に欠ける。
刀展示ケースmokuを製作した時にあったような閃きがまだ無い。


そんな時は取りあえずお店をぶらぶらしてみるに限る。
店内を見ていると意外な所からアイデアが生まれる事も多い。
今回は丁度良さそうな額を見つけたので当てはめてみた。
これをベースに色々手作りしながら考えてみても良いかもしれない。
(因みにこういうデザイン、色味にするわけではありません)

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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