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電気がつかない

自宅のある一室の、電気がつかないことに気がついた。

通称、社長室。二箇所のスイッチをオンオフしてみる。どちらも反応がない。断線している。

仕方がないので、キャンドルをともしてみた。

一つは、Diptyqueのキャンドル。2年前この場所に、仕事と自宅が合わさった拠点をかまえたとき、先輩のクリエイターが持ってきてくれた。ファッションディレクターとして活躍するU氏。フラッと遊びにきたときに、これをさりげなく置いていったのを覚えている。

もう一つは、蝋燭職人チエミサラさんのキャンドル。友人でもあるチエミさんに、7年前にオーダーしたものだ。彼女のオリジンである広島でつくられたこのキャンドル。私が当時住んでいた荒川区にて、受け渡された。

キャンドルをともす時間もなかったことに驚く。

思ったより暗かったので、本を読むのも難儀だった。この不便さがいい。かぼそい明るさを頼りに、調べものをする。リラックスのために、ためになる本を読まない、と決めたのに、うすら明かりのなかでマーケティング、PR、ブランディングという文字が浮かぶ。そういうモードになってしまったので、仕方ない。

終わってから、さきほどコンビニで買った、BREWDOGの缶ビールをあける。私は、BREWDOG創業者の著書で「商品じゃない。信念からはじめろ」という主張に心を動かされ、7年前に起業した。だから、BREWDOGとそれ以外のビールが並んでいたら、BREWDOGにお布施を支払うようにしている。

つまみは、しけた揚げせんべいと、さきいか。昨日、お客さんを招いてワークショップをやった際のものだ。さきいかは、直感で面白いと思い、大皿に盛るスナックの一つとしてご提供してみた。冒頭で「さきいかを噛み締めると、アイデア出しにいいんですよー」とお伝えしたら、笑いはとれた。ワークショップが終わったあと、さきいかは、ほぼ残っていた。

炎の形は一様ではない。またとして同じ炎の形はないのだ。そう考えると、炎に個性を感じる。スッと迷いなく、天に向かって一筋の炎が一直線にのびる様子。美しくて、見とれてしまう。

美しいものを見て、美しいと思うきもち。この時間が、自分には必要なんだなと改めて感じる。電気がつかないのも、わるくない。

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