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雑で速い女です

「丁寧に、一つずつ。」

「コツコツと。」

物事に取り組む姿勢は、それが良い、大切なんだ、と見たり聞いたり言われたりするたび、私は肩身が狭い思いをしてきた気がします。

「丁寧、根気、長年、一つずつ、計画、比較検討、コツコツ、諦めない、飽きない、高い完成度、完璧」ー私には、どれも当てはまりません。

自分を形容するのにピンとくる単語は、「勢い、初動、一気に、集中、とりあえず、出し抜く、スピード、動く、行動、ツメの甘さ、次」などです。

小学校の時にクラスで、百人一首をみんなで覚えましょう、というプロジェクトがありました。私は一気に60首近く覚え、クラスメイトを驚かせました。みんなは飽きて途中で終わり、私は一人で100首まで覚えました。

前職のデザイン会社には、未経験で中途採用試験を受け、どうにか入社しました。仕事しながら、深夜のオフィスで業界誌の『宣伝会議』や『ブレーン』など読み込んだり、有名クリエイターの名前を写経したり、会社が推奨していなかったテレアポを会議室で隠れるようにしたり。あの手この手を使い、3年目に自力でプロデューサーとしての仕事を獲得しました。

また、初めての出産後に「育休中に保育士の資格を取ろう」と思い立ちました。産後回復、育児、頻回授乳に猛勉強の全部乗せアドレナリントッピング。産後3ヶ月で臨んだ8月の保育士試験で、学科試験9科目中8科目まで合格しました。

地道な努力や完璧に仕上げることは苦手で、いつも、直感で「やる」と決めた瞬間に、バケツをひっくり返したように努力をします。

ちなみに、成果に繋がることばかりではなくて、この裏では失敗や情けない思いも星の数ほどしています。

イヤホンが壊れたので買ったら、電話通話中に相手に声が届かず、「買ったばかりなのに?」とよく見たらそもそもマイク機能がついていないのを買っていたし。Kindleが壊れたので買ったら、暗い部屋でライト機能が使えなくて、「買ったばかりなのに?」とよく見たらライト機能がついていないのを買っていたし。通販で餅の写真を見てすぐさま買ったところ、届いたのは餅米だったし。家には、以前ハマったトピックの数々、サバイバル教本、インドから来たヨガの本、アメリカからきた分厚い育児本、理科の本、日本の古地図、漢方の本、筆記体を練習しまくった形跡、習字道具、編み物道具、ウクレレなどが転がっています。

仕事上でもこの初動と直感まかせの買い物は行われるので。倉庫に、業務用の干し網が10個近く(本来は魚を干して干物を作るためのもの)、業務用の真空パック機が1台、業務用の真空パック用の袋が中くらいのサイズで1000枚ほど、間違って買った大きいサイズが500枚ほど(なんで間違えるのか...)、品質表示用シールが500枚ほど、ディスポーザブル手袋が業務用で一箱、業務用マスクが一箱、大きなアルミバットが10個以上、試食用カップが数百個。会社ロゴが印刷された大きなタペストリー、顔ハメパネルが2体、ガラス貼用の特大ステッカーが1点。倉庫の奥に鎮座しているのは、19万円で営業車として購入した乳母車、勢いで買ったこの乳母車のホロ(特注)。倉庫に入りきらずに床置きしてある、フード事業の売れ残り(在庫)のダンボールが20箱ほど。などがあります。公私ともに、買い物をしない方が良さそうです。

コツコツ丁寧にがんばる、それが良しとされているのを目にするたび、私は居心地の悪い思いをしてきました。初動が早いのは良いのですが、ツメが甘くて雑なのです。その雑さゆえに、よく考えると要らないものがどんどん家に届いてしまうし、人に迷惑をかけたこともあったかもしれません。コツコツ丁寧に、ができないことは、人間として欠陥があるのでは?周りの人が当たり前のようにやっているこのコツコツ丁寧にができず、勢い任せに行動してしまう。勢いで行動した中には失敗も多く含まれている。実は隠れたコンプレックスだったかもしれません。

そんな中、今年の秋に、Twitterであるツイートを見かけました。

これを見た瞬間に、目から鱗が落ちました。

私のことじゃん。これ私と同じ。

「雑で速い者」が良い。

て。雑で速いのが、ダメどころか褒められてるじゃないですか。

ウソでしょう。こんなこと言う人いるの??この方のプロフィールを見てみました。

まあまあ大手企業創業メンバー。創業時2人→1000人に成長させる過程で苦労した笑い話、気づいた大切な事、意外だった事など呟いてます。専門は経営全般。引退後は、趣味で細々エンジェル投資しながら若手コンサルタント→起業orCEOへのキャリアを応援中。

なんというか、見るからにスゴそう。プロフィールからオーラ出てる。

こんなスゴそうな人が適当なことは言わないだろうし。それにしても、雑で早い人がいいなんて、にわかに信じがたい...。

その後も、スピード感のあるMr.スピード君のばく進が続きます。「雑で速い界隈」の出世頭、Mr.スピード氏。私のパイセン、希望の星。同じタイプの人がビジネス文脈でこんなに褒められているのには驚き、感動しました。

Mr.スピード氏だけでなく、Tylerさんご自身も早さを意識しているようでした。

直感型の私は勝手に「Tylerさんの経営論を自分に取り入れよう」と決めました。自分が評価される文脈で自分を高めていったほうが、精神安定上よいに決まっているからです。コツコツ丁寧型ではなく、雑で速い型を評価してくれる人は滅多にお目にかかれないような気がする。Tylerさんは私にとって非常に心強い人物に見えました(この時点でお会いしたこともなく)。

「今この瞬間に」なんて、私がよくやっちゃうやつじゃないですか。良かったんですね、これで。

そんなある日。

この日のことを覚えています。秒で相談DMを送りました。従業員数は当てはまりませんが、文脈的に「平気だ」と読み取ったのを覚えています。こういう時に、ポジティブ解釈力は非常に役に立つ。(ポジティブ解釈力=自分の都合の良いように物事を読み取る力)

「雑で速いのが良い」とおっしゃっていただけあり、Tylerさんは速攻でアドバイスをくださいました。ただTylerさん、半分合ってて半分間違っているなと思いました。Tylerさんは、雑で速いんじゃなくて、丁寧で速いでした。的確すぎる。的確 of 的確。無駄のない文字数の中に、重要な情報が凝縮して入っている。この体積に対する情報密度は、食べ物でいったらテリーヌ。人生の経験値の総量が多い人は、こうなるのか...雑で速いの集大成、おそるべし。

このTylerさんのツイートは私にとってお宝のようなものです。出力して、額縁に入れて家に飾っておこうかと思うくらいです。

なお、その後。

しつこく質問したり一方的に週報を送ったりしているうちに、なんとTylerさんと対面する機会を得たのでした。嬉しすぎる!どんな人なんだろう?

11月末に初めてお会いしたTylerさんは、黒っぽくて機動力のありそうなお洋服をお召しになり、アーミーな感じのナップザックをお持ちで、挨拶も早々に、歩くのも話すのも早い。私が勝手にイメージしていたのとなんか違う。プロフィールの「引退」の文字を見て勝手におじいちゃんを想像していたけど、全然おじいちゃんじゃない。おじいちゃんじゃないどころか、なんというか、ビジネス界のSWAT

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訓練に向かうマリオン郡保安官事務所のSWAT隊員(Wikipediaより)/ Oregon Department of Transportation - SWAT team preparedUploaded by Smallman12q, CC

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M4カービンと盾を携行し、陸軍の施設を使って捜索訓練を行うFBIのSWAT隊員(Wikipediaより)/U.S. Army Materiel Command - Flickr, CC

2年ほど一人で経営をしてボロボロに疲れた私のところに、ビジネス界のSWATが来た...緊急対応で救命措置をされた。そんな感じでした。半分ウソで半分ホントです。

まとめ

雑で速いのは、まさかの、ビジネス文脈において非常に強力な武器だったのでした。機動力と方向転換、早い決断が求められる起業と会社経営においては、特に有利に働く場面も多いようでした。

自分にとってネガティブに捉えていることも、環境と状況次第では武器になるのです。ここ数年の会社経営に若干ひよっていたところ、今年の後半に一気に救われたのでした。

Tylerさんと、雑で速い全ての人に、この記事を捧げます。

来年も良き年になりますように。


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