![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34924339/rectangle_large_type_2_32b23dc32981994c1aa2029fece7a6b1.jpg?width=1200)
1-7 妹。のような少女に闇はひそむ。
![風景 (22)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34923193/picture_pc_64b1fce41aa7df9049e4cd52902bd23e.jpg?width=1200)
表に出ると、高宮駅前広場にある街路樹のベンチに座ったナミが、全身からドス黒いオーラを放っていた。
![キャラ (1)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34923208/picture_pc_09c424528fbc172af233af3d384e96dc.png)
「な、ナミ……!?」
![メインキャラ (12)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34923212/picture_pc_23bcb4c6e7f287a4ef1dbd63336d9298.jpg)
「ねえ……ハヤトだったよね? どうしても話があるから、顔貸せって家から連れ出したの。
なのに、どうして、ボク、こんなところで、灼熱地獄攻め味わっちゃってるの?」
「あ、いや、その」
「喧嘩売ってる? ……買おうか? 相場的に、買いどきだと思うし」
「ちょっと待て待て待て。遊んでたわけじゃねーだろ? セーブしてきたんだ。手続きは万事滞りなく完了だっ」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548294869-DPQbvSJJ4N.jpg)
「……おそすぎない? それに、なんか店から出てくるとき、妙にウキウキ機嫌よさそうだったような」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548303875-DnEXqZyyQu.jpg)
「とりあえず、ハピネスに行くぞ!」
「はあ?」
「暑かったし腹も減ったろ? 近くのファミレスに昼飯食いにいこーぜ!」
「暑かったしお腹も減ってるけど、そういうので誤魔化されると思ってんの?」
「うぐっ」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548320867-xvml9JnrL7.jpg)
「ねえ。…………ハヤトって、ぜったい女の子にモテないでしょ? はっきり言って、残念なタイプ」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548329027-WxthtWd0lC.jpg)
「なっ、なにィ」
くっ。言いやがる……!
ケイにこっぴどくフラれた傷がうずくぜえ。
しかし、ここは変に逆らわず、まずはご機嫌取りだ。
そんなわけで、俺たちはハピネスへと移動した。
高宮通りを『西鉄大橋駅』方向に少し歩く……。
![風景](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34923768/picture_pc_3af332050dc36bde6e8df5fd89470767.jpg?width=1200)
ハピネス。
九州地方を中心に展開する、黄色い看板にオレンジ色のロゴでお馴染みの、二十四時間営業のレストラン。
お手頃な値段が貧乏学生に愛されている。
俺たちは席につき、とりあえず日替わりランチを二つ注文した。
なんにしても、これでようやくゆっくり話が聞ける。
![風景 (2)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038558/picture_pc_0a8a7787faca448e5207d7636d25cb67.jpg?width=1200)
![キャラ (1)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038566/picture_pc_7db73addd203d3805e65a85a95731650.png)
「……で、だ。ナミには色々聞きたい事がある。まずは……」
悪意ってなんだよ、と口を開きかけた瞬間、俺を呼ぶ声がした。
![キャラ (10)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34923805/picture_pc_52ca5b0c6cae8626dd865ce9493448fc.png)
「おにーちゃん!」
見ると、ふたつほど離れたボックス席から、愛らしい女の子が手を振っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548459977-tBpZvNZhTg.jpg)
「お。『マユ』じゃないか。今日も来てたのか」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548467522-Lolxgnhu4t.jpg)
「うん!」
![キャラ (1)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038577/picture_pc_33a8878829fa13fb1cfb716937457ed6.jpg)
「誰? お兄ちゃん……てことは、妹も居たの?」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548498404-m26iMilBpY.jpg)
「……だと嬉しいが、違う。まあ妹みたいな……トモダチだ」
![森家ファイト! ver1.05taki 2019-07-25 19-12-37.mp4_snapshot_05.09.523](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/31073317/picture_pc_11d23e215a208b7ef3eb751eb4efdb60.jpg?width=1200)
マユ。
近所に住んでいる小学生で、なぜかひとりで良くハピネスに来てる。
つい気になってしまって、話しかけたのがきっかけで、俺たちは仲良くなった。
以来、マユは俺を「おにーちゃん」と言って慕ってくれる。
ツインテールが可愛らしい、見た目も性格もすごくいいコだ。
本当に俺の妹ならよかったんだけど、実際は、ニキビ面の弟だもんな。神を呪うぜ……。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548589534-GgqAbGcZMb.jpg)
「妹みたいに思ってる女の子? ……まさか、そんな子との『ひと夏の恋』とか言い出すんじゃ……」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548596319-tD3lj98Fsm.jpg)
「なんの話だよ、それ……」
どっかで聞いた事あるようなないような。
![e_23_boss_23_リン](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038608/picture_pc_2f11a410754be1fb7d5f01715c816304.jpg)
「こんにちはー」
近寄ってきたマユが、礼儀正しく挨拶する。
うんうん。小さいのに感心な子だ。
![pナミ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038622/picture_pc_af547f9e3928697a08167ec7df2490ca.jpg)
「………こ、こんちは」
なのにナミのほうはぎこちない。コミュ力低いな、オイ。
マユが、どうしていつもひとりぼっちでファミレスに来てるかは知らない。
どう考えても複雑な家庭事情があるんだろうけどな……。
他人の俺が踏み込むのもどうかと思い、あえて聞かないようにしている。
![pハヤト](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038626/picture_pc_5121aea39ffe6e71c6914af8bcf5cf4b.jpg)
「マユ。今日もひとりか?」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548685144-nCDZ4qre0c.jpg)
「……うん」
「じゃあ、俺たちも一緒していいかな?」
「うわーい。いっしょにたべよう!」
それから俺達は、三人で日替わりランチを食べた。
いつも通り、最近始まったアニメやマンガの話なんかで盛り上がった。
ナミに話を聞く機会をのがしたが、まあ、マユが嬉しそうだったからよしとしよう。
ナミからは後で改めて聞き出せばいいしな。
![キャラ (10)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038636/picture_pc_92637ae945672f20d407543b8723cbb2.png)
「おにーちゃんたちは、このあとなにするの?」
![キャラ (1)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/41038641/picture_pc_cbeb44218b7b86a4c4d49293eafd3c84.png)
「ちょっと用事があるんだ」
……なんとなく、マユはまだ俺と一緒に遊びたいんだろうな、と感じたけど、そう答えた。
いい加減、ナミから話を聞き出さないと。
マユは一瞬すごく残念そうな顔をしたが、すぐに健気な笑顔を作った。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548786382-6Fe2ioX5UG.jpg)
「うん。わかった。マユはおカイモノいくね」
「アピロスか?」
「そう。文房具、買わなきゃ」
俺たちは一緒に店を出た。
おごってやろうとする俺に、「おかあさんからおカネはもらってるから」と言ってマユは自分で支払った。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548801781-okldO2XPhZ.jpg)
「じゃあね、おにーちゃん。それから、おねーちゃん」
たたたっと走り去るマユの小柄な後姿に、俺は手を振った。
ナミはマユの後ろ姿をじっと見つめている。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548903080-eVwbnNVD8T.jpg)
「……………………」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548918935-d2obpqAa7v.jpg)
「どうした? さっきからぜんぜん喋らねーな」
「あの、マユって子……」
「ああ、可愛い子だろ」
「…………ひょっとしたら……いや、たぶん」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548932241-ukn3VrVk5b.jpg)
「マユが……どうした?」
ナミの真剣な顔を見て、緊張が走る。
そうだ。いま、福岡市でおかしな事が起こり始めているんだった。
まさか……マユが何か関係してんのか……?
![](https://assets.st-note.com/img/1664548883900-Y6nJSO28CH.jpg)
「あとを追ったほうがいい」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548890781-n4gWDyxc6T.jpg)
「え?」
「『あぴろす』に行くってなに?」
「ああ。『野間ダイエー』っていうショッピングセンターのことだ。アピロスってのは、地元の人間の愛称だよ」
![](https://assets.st-note.com/img/1664548954135-FIuV73AIgp.jpg)
「すぐ追いかけよう!」
ナミはいきなり駆けだした。アピロスの場所もわからないくせに。相当慌ててるぜ。
![](https://assets.st-note.com/img/1664548962042-xDxi1aTRz3.jpg)
「……わ、わかったよ。なんなんだ……」
でも、他ならぬマユの事だ。放ってはおけない。
俺はナミを連れて、野間大池方面、『アピロス』へと急いだ!
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