見出し画像

8-3 厳冬 VS 酷夏

砂浜


 ブスブス煙を引きながら砂浜に転がったおれを見下ろし、誰かが立っていた。


pハヤト

「……ヤギハラ? こんなとこでなにやってんだよ」


 海パンにシャツをはおったハヤトさんだった。フルーツの刺さったトロピカルジュースを両手に持っている。


キャラ (21)

「…………は、ハヤトぉ。コレ、おかしくなーい? なんか、恥ずかしいんだけど……スースーして落ち着かないし……水着なんてボクはじめてで……ねえ、おかしくなーい?」


 その後ろには、すらっとした白い水着姿のナミさんが、恥ずかしそうに顔を染めている。



画像13

「んだあ? オメェもソイツの仲間か? 見たところ、オメェらもフツーじゃねえな! さては『おかしくなったヤツら』だなっ!」


キャラ (1)

「……おいおい。俺から見りゃ、いきなりわけわかんねーこと言ってくるお前のほうが、おかしなヤツだっての。……それにな、ここに転がってるヤギハラは、いちおう俺の仲間でね。お前がやったってんなら、見過ごすわけにゃいかねえな」


 言いながら、トロピカルドリンクをナミさんに渡し、すっと構えるハヤトさん。

 その構えを見たササオミの顔色が、にわかに変わった。


e_44_boss_ササオミ

「……その、ネクラで姑息な守り重視の構え……オメェ、まさか厳冬流のモンかッ……!?」


 言いながら、襲いかかる前の野獣のようにグッと重心を落とす。

 それを見て、ハヤトさんも驚いた。


pハヤト

「……そーいうお前の、無節操で粗暴な攻め重視の構え。酷夏流《こっかりゅう》かよ?」


画像16

「まあな。理座大学 (りざだいがく)三年生、竹取ササオミ。酷夏流の『最強の素人』たぁ、俺様のことよッ!」


キャラ (1)

「へっ。なにが最強の素人だ。自分で言ってるだけじゃねえのか? 俺は片桐ハヤト。福海大学三年。ご覧の通り、厳冬流をたしなんでる。まあ『無敗の白帯』って呼ぶやつも居るな」


e_44_boss_ササオミ

「はあああ? なんだそのこっ恥ずかしい二つ名。無敗ってわりには、結構黒星もついてますって、顔に書いてあるぜっ」


pハヤト

「なにい!」


画像34

「けっ。『おかしくなったヤツら』を退治すんのが、俺様たちの務めだが、それが厳冬のモンなら、ためらう理由はねえっ! ブッ倒してやらあ!」


メインキャラ (12)

「……ちょっ……ハヤト! さっきからなに言ってんの! なんで、いきなりケンカ腰!? 『ゲントー』とか『コッカ』ってなに?」


pハヤト

「ナミ。俺の習っている格闘技『厳冬流』には、ひとつだけ不文律があるのさ……。ライバル流派『酷夏流』とカチあったら、とにかく戦うべし!』」


1 (1) - コピー

「さ、ササオミ! ちゃんと聞いてよ! このヤギハラくんは、ピンチになったわたしのために……」


画像35

「うるせーーーー! イオリ! 止めんじゃねええええ! 『厳冬見たら即撃滅!』が酷夏の掟だろうがよッ!」


 対峙するハヤトさんとササオミは、いきなり戦い始めた。


e_44_boss_ササオミ

「行くぜエエエ! 厳冬のスカし野郎ッ!」


pハヤト

「へっ。来いよっ。酷夏の筋肉バカ!」


画像3


メインキャラ (12)

1 (1) - コピー


 あ然とするナミさん、困り顔のイオリさん。

 地面に転がるおれのことなんて、まったく気にせず戦いをおっぱじめるハヤトさんとササオミ……。

 ほうら。これじゃよ……。

 こういう「生まれついての主人公!」みたいな連中に、おれみたいなのは、全部持っていかれるんじゃよ…………。


pハヤト

「…………チッ。攻めしか頭にねえ酷夏流の単純バカかと思いきや、意外にていねいな動きするじゃねえかっ! やるな!」


e_44_boss_ササオミ

「ケッ……テメエこそ、厳冬といや、待ち重視のセコい野郎ばっかのイメージだったが、なかなか鋭い攻めしてきやがるっ!」


 怒涛のラッシュを仕掛けるササオミと、それを的確にカウンターで返すハヤトさん。ふたりの戦いは拮抗。


画像4


 と思った瞬間……


メインキャラ (12)

「いいかげんに…………」


1 (1) - コピー

「話を聞けーーーーー」


 ナミさんのパンチとイオリさんの竹刀の一撃が、ハヤトさんササオミを後ろからぶっ叩いた。


キャラ (21)

「もうハヤト! 今日は戦わない、ナミとデートだ! って言ったの、自分でしょ! だからボクだって水着なんか着たのに!」


1 (1) - コピー

「ササオミ! ヤギハラくんは『おかしくなったひとたち』相手に助っ人してくれた恩人だよ! それをササオミが問答無用に倒しちゃったんだから、悪いのはこっち!」


キャラ (1)

「……………………………………」


画像27

「……………………………………」


 熱い太陽。

 ざざーと寄せては返す波の音。

 ビーチで楽しそうにはしゃぐ海水浴客たちのざわめき。


pハヤト

「……………………………………」


e_44_boss_ササオミ

「……………………………………」


 ファイティングポーズを取ったまま固まってしまったハヤトさんとササオミの顔を、つつつと汗が流れた。

「……………………よう」

「……………………あん?」

「…………やめるか。暑いし」

「…………そうだな。熱いし」

 ハヤトさんとササオミは、構えを解いた。


キャラ (1)

「…………酷夏流。烈火のごとき、激しく潔い攻め。さすがだ。気を抜いたら、その猛火に焼き尽くされそうだったぜ……」


画像31

「…………厳冬流。冬の雪景色のように静かな守りの中から、背筋が凍りそうな鋭い必殺の一撃。長引いたら、やられてたのはこっちだったかもな」


pハヤト

「……『最強の素人』か。お前にふさわしいよ。ササオミ」


e_44_boss_ササオミ

「……『無敗の白帯』はダテじゃないようだな。ハヤト」


 いきなりお互いを認めあったハヤトさんとササオミは、「海の家でラーメンでも食おうぜ」とか意気投合しつつ、和気あいあいと向こうへ行ってしまった。

 砂浜でくたばる、おれを放置して……。

 ナミさんはともかく、気づけばイオリさんの姿もない。

 どうせおれのことなんて、どうでもいいんじゃよ……。

 せっかく運命の女神に出会えたと思ったのに、アッサリおれを見捨てて、どこかに行ってしまった……。

 涙も蒸発しそうな日差しの中、ムレムレの剣道着は汗びっしょりで、おれは脱水症状を起こしかけていた。

 フッと視界が暗くなる。


キャラ22

「………………!!!」


 目を開けると、優しく微笑んだ女神が、大きなパラソルをおれの上にさしてくれていた。


1 (1) - コピー

「…………はい。お水」


 ニッコリ笑ったイオリさんの手には、よく冷えたペットボトルのホーリー・ミネラル・ウォーターがっ!!


画像11


 おれは飛び起きて、イオリさんの水を一気に飲んだ!

 受け取るときに、イオリさんの指とおれの手が触れたっ。

 それだけで、おれが気絶しそうになったのは、言うまでもない。


画像12



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?