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7ー4 シモカワ一点突破!

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キャラ (8)


 コノミを後ろに乗せ、僕らは海を目指す。

 高宮駅の近くにさしかかったとき。


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pシンジロー

「シモカワ!」


 はあはあ荒い息をつきながら、夜の駅前を走ってきたのはシンジローだった。


キャラ (8)

「シンジロー?」


キャラ (3)

「ここに居たのかっ。たいへんなんだ! 兄貴とナミさんがおまえを探してる!」


 自転車の後ろに乗るコノミに気づき、シンジローの顔色が変わった。


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「こ、コノミ? ……コノミと一緒だった、のか……」


キャラ (8)

「どういうことだ?」


キャラ (3)

「……ナミさんが、ものすごい悪意の反応を感知したって……そして、シモカワ、おまえのアリバがすぐ近くにあったから、きっとなにかあったんだろうって……」


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「……シンジロー先輩……」


pシンジロー

「……まさか、コノミが……その悪意なのか?」


 僕は自転車を降り、シンジローと対峙する。


pシモカワ

「…………だったら、どうするとや?」


 ボッ! 僕の右手に炎が吹き出した。

「……どうもこうも、ないだろうがよお……」

 後ろから声がかかり、のっそり現れた大きな人影は……

「……ヤノさん……」


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pヤノ

「シモカワよう。その子、悪意なんだろお? ハヤトとナミがおまえと悪意を探してたぞお」


pシモカワ

「それでオレを捕まえにきたとですか?」


 炎をまとった右手をゆっくりと構える。

 ヤノさんは、ため息をついて腕を組んだ。

「……ったく。とりあえず、ハヤトには連絡するぞお。しなかったら、アイツ怒るからなあ」


pシンジロー

「うおおおおおおおお!!!」


 突如雄叫びが上がり、真っ赤な炎を全身にたぎらせたシンジローが、ヤノさんに向かって突っ込んでいった!

「燃えろおおおおおおおお!!! シンジロおおおおおおお!!」


pヤノ

「おおうっ!?」


 突進しながら、シンジローが叫ぶ!


キャラ (3)

「いけええええええ!! シモカワ! コノミ! おれが道を作る!!!」


キャラ (8)

「シンジロー!?」


「どうしていいかわからないっ! でも、おまえとコノミは、おれの親友とその恋人なんだああああああ!!!」

 僕はヒラリと自転車にまたがった!


pシモカワ

「コノミ! 行くぞ!」



e_41_boss_コノミ

「ハイ! シンジロー先輩! ありがとうございます!」


キャラ (4)

「ったくよお……氷属性の俺に、火属性のシンジローが向かってきたって、話にならないだろうによお」


 ひょいっとヤノさんはシンジローの身体を持ち上げ放り投げた。

「のわあああああ」

 シンジローはあっさりダウン。


pヤノ

「あっるぇーーー。でも、シンジローの体当たりで、俺の電話がどこかに行ってしまったぞお…………これは探すのに五分くらいはかかるなあ


 五分……この五分をムダにはできないっ。

 僕はペコリと一礼し、グッとペダルを踏み込んだ。


pシンジロー

「気をつけろ! 兄貴とナミさんは甘くないぞ! それにササハラくんが指示して捜索網を展開してるっ! みんながおまえらを探してるっ!」


e_41_boss_コノミ

「せんぱいっ……ナミさんって?」


pシモカワ

「ハヤトさんのパートナーで、アリバのブレーンさっ。コノミに会わせたいと思ってたふたりだよ。でも、こんなカタチになるなんてなっ」


 そう。まさかふたりが敵になるなんて……。

 でも、ヤノさんにチャンスをもらったのは大きい。こっちは炎属性。氷の巨人は厄介な壁だったけんな!


キャラ (8)

「このまま一気に志賀島へ向かうぞ!」


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「ハイ!」


 僕たちは高宮駅から日赤通りへ出て、そのまま渡辺通りに入った。

 夜のネオンが輝く広い歩道を、自転車で突っ走る。

 そこに立っていたのは……


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pコミネ

「シモカワ……おまえの連れているのは悪意ではないのか?」


pシモカワ

「コミネさん……! ……悪意でも、オレの恋人とです!」


「…………だがそこに、正義はあるのか?」


キャラ (8)

「正義よりもっと大切なモンがあるとですよっ!」


キャラ (5)

「いいだろう! ならば、その正義よりも大切なものとやらを、このコミネに示してみろ!」


 僕は自転車から飛び降り、コノミを下がらせた。

 コミネさん……僕たちアリバの戦闘の要。何度も苦境を跳ね返してきた頼もしいバトルマシーン。強敵だ。

 だが、コミネさんは風属性! 僕は有利な炎属性! 強気で行くっ!


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 ゆらり、とものすごい威圧感だったが、僕は一気に間合いをつめた。


pコミネ

「ゆびさき……」


pシモカワ

「おそいっ!」ズバッ!

 炎をまとったピックを振り抜く!

「ヌウッ」

 そのまま畳み込むように一気に斬りまくった!


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 コミネさんはガクリとヒザをついた。

「フハハハハ! 見事だシモカワ。俺の完敗だっ。先に進むがいい! 見せてもらったぞ、正義より尊いものを!」

 僕はコミネさんに深々と礼をして、自転車を漕ぎ出した。


キャラ (5)

「……いいなあ、愛って」


 そんなコミネさんの声を背に受けながら、天神を抜け、石堂大橋から国道三号線に入る。

 貝塚駅のあたりまで来た。そしてそこに立っていた鼻眼鏡は……


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pカムラ

「よお、シモカワ。とうとうやっちまったな。こちら側へようこそ。どうだ? 裏切りの味は?」


キャラ (8)

「ぬかせっ!」ズバアッ!


キャラ (192)

「ウギャアアアアッ!!」


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 思わずフレイムピックを叩きつけた。

 氷属性で異常な防御力のカムラは、まったくダメージを受けてないだろうに、なんとなくのノリで悲鳴を上げながらパタリと倒れた。

 その横をさっさと通り過ぎる。

 ……しかし、コイツが不真面目でよかった。不利な氷属性のうえ、ムダに固いけんな。マジメに戦ってたら、いたずらに時間を消費していたところだ。


 国道三号線をひたすら走って北上。

 東和の僕たちは南区が活動エリアだから、東区のこのあたりまで来ることはほとんどない。

 名島橋のたもとにあるチェーン店のカレー屋から出てきたのは……


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pヨシユキ

「おや。シモカワですな? デート中ですな?」


pシモカワ

「……ヨシオ」


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キャラ (17)

「なにやらマジな顔。ホラホラそんなコワイ顔しないで、我ら男子高校生、いっしょにフザけましょうな。オジャパメーン


キャラ (8)

「悪いな、ヨシオ。おまえらとジャレてるヒマはないんだ。僕は、一足先にオトナになる!」


「なっ。シモカワ!? その子と今からどこに行く気ですな? もしや、あのビラビラの向こうですな?」

「だまれっ!」

 ゴッ! と僕はヨシオの顔を殴りつける。

「あだると!」と叫んでヨシオは倒れた。

 ドサクサの勢いで、物理攻撃に弱いヨシオを殴り倒せた……。

 三属性の電波使いであるヨシオは間違いなく強敵やった。でも、コイツらとの少年ノリは、今は必要ない!


 千早駅まで来た。

 だだっ広い駅前広場では、僕の嫌いな男がシャドーボクシングしていた……。


pクリハラ

「シュッ……シュッ……シュッ……シュッ……」


pシモカワ

「クリハラ……」


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キャラ (7)

「いけませんねえ……実にいけませんねえ。おまえの恋人は悪意だろう? ちょっとカワイイからって、悪意をカノジョにしていいわけがないだろうが」


キャラ (8)

「悪意悪意、言うな! この子の名前はコノミだ!」


「だからどうした! モテキャラだからって調子のんなっ。おれは前からおまえが気に食わなかったんだよっ!」

「こっちもたい! ムホホとか気色悪い笑いしやがって!」

「ぶっ倒してやるぜえ!!」


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 クリハラが襲いかかってきた!

 ハヤトさんと同じ格闘技経験者で、しかも肉体的にはかなりの強さを誇る相手。でも、コイツも風属性! コミネさんにも勝てたんだ。絶対行けるッ!


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 先手必勝。一気に炎の攻撃をぶちこむ!


pクリハラ

「ムホホ……おまえの炎なんてヌルいぜええええ」


 しかしあまり効いていない! くそっ。ムダに丈夫な身体しやがって……。

「シュッ! シュッ!」

 でもクリハラのジャブも攻撃としてはショぼい。属性もあって、僕にはほとんど効果がなかった。


e_41_boss_コノミ

「せんぱいっ! 大丈夫ですかっ!?」


pシモカワ

「大丈夫! コノミ。心配ない!」


pクリハラ

「……くそっ。くそっ。甘々の青春しやがって! ゔら゛や゛ま゛ぢいいいいい」


 僕とコノミのさりげないやりとりを見たクリハラは、なぜかダメージを受けている。

 さらに追い打ち!

 コノミに捧げる、僕作曲の愛の歌を、イノセントに歌い上げる!


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キャラ (7)

「ひいいいいい。なんだよその歌……。と、トリハダが…………」


 クリハラはダウン。

 コノミと手を取りあい、僕らは進む。


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「先輩……かっこよかったですよう」


キャラ (8)

「コノミのためなら、僕はどんな相手にだって、負けやしないさ」


 香椎を抜け、国道495号のほうに左折。

 志賀島は、ここから和白に行き、奈多、雁の巣と経由して向かう。自転車には遠い道のりだけど、アリバのおかげか疲れはなかった。

 和白駅付近まで来たとき、挙動不審の剣道着が、不安そうにキョロキョロしていた。あれは……


pヤギハラ

「にぎゃっ。ホントに来たっ。ササハラさんの言う通りにっ」


「ササハラさん?」

 動きを読まれているかのように邪魔が立ちはだかるのは、あのひとの差し金か?


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キャラ22

「し、シモカワー。まずは落ち着くんじゃよ? ね? ね?」


キャラ (8)

「通してもらう」


「へ?」


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pシモカワ

「燃えろッ!」


pヤギハラ

「にぎゃーーーーっ!」


 ヤギハラはたった一発で沈黙した。弱すぎる。こいつ本当にアリバか?


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キャラ (8)

「コノミ。もうすぐ海の中道だ。そしたら、志賀島まではすぐだよ」


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「…………は、は…………ハイ…………」


 見ると、コノミの顔色がひどく悪い。戦いに気を取られ、コノミのことを気遣うのがおろそかになっていた……。


pシモカワ

「大丈夫? 少し休もうか?」


e_41_boss_コノミ

「……い、いえ。大丈夫でスよう。そレより先輩、はやく行きまショ?」


 額にじっとり汗をかいたコノミが笑う。

 僕は黙ってペダルを踏む力を強めた。

 でも、ササハラさんが僕たちの包囲網を展開しているとしたら、この先には……


pカスガ

「シモカワー。その子、悪意なんだってー?」


 海の中道も目前の『雁の巣レクリエーションセンター』に居たのは、予想通り、カスガさんだった。

キャラ (8)

「それがどうしたとですか? 関係なかでしょ?」


キャラ (6)

「うーん。でも、そんなにムキになることないんじゃないかなー。どーせ高校生のとき付き合う相手なんて、生涯の伴侶になるわけないんだしー」


「オレはコノミと添い遂げるつもりですよっ!」


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「せ、せんぱい……」


「……ふーん。なら、オレを倒さないとねー」

「そうします!」


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 ハヤトさんが言っていた。「本気になったカスガは俺より強い」って。

 しかも、真のアリバというのに目覚め、いま仲間内でもっとも強いアリバを持つのがこのカスガさんだ。

 だけど、僕の想いだって負けない! 今の僕にできるのは、コノミへの気持ちを歌にすることだけだ!

 アリバはこころのチカラ。ならば僕のこころをこの歌に込める……!

 ラブソングに炎が宿り、それは業火となってカスガさんを包み込んだ。


pカスガ

「アーチーチーアーチ。うん。こりゃホンモノだー。オレの負けだよー。結婚式には呼んでー」


 カスガさんはあっさり負けを認めてくれた。にっこり笑ってドリンクを差し出し、僕たちに道を開けてくれる。


pシモカワ

「招待状出しますけん、祝福の歌、歌ってくださいよ」


 僕らは雁の巣からいよいよ海の中道へ。

 この長い松林の直線道路は、志賀島の……海への玄関口。

 あと少しというところで、僕にとって最悪の相手が待ち受けていた。


pカワハラ

「え? え? シモカワとコノミ? なに? まさか、おまえら付き合っとったと?」


pシモカワ

「そ、そこからかっ!」


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 カワハラ……。

 どうしようもないバカだけど、氷属性最強。おまけに僕よりスピードも上。認めたくないが、天敵のような性能の持ち主だ。

 ここでコイツをぶつけるというのが、ササハラさんの策だったのだろう。


キャラ (8)

「…………カワハラ。道を開けろ」


キャラ (18)

「え? いや、それはできんばーい。ハヤトさんに怒られるし……」


「どけって言ってる!」

 フレイムピック!

 だが、本気の斬撃を、カワハラはいともたやすく避けた。速い!


pカワハラ

「だいたい、コノミって、おれに気があるんじゃなかったと?」


 カッキーーーーーーーンンン!!

「あぐう!!」

 カワハラの空気を読まないセリフが、そのまま氷撃として僕に襲いかかった!

 凄まじいダメージで、意識が遠ざかる。こ、こんなお寒いセリフで…………なんなんだ、この攻撃力は…………。


e_41_boss_コノミ

「せんぱいっ!」


pシモカワ

「くっ。まだだ!」

 カスガさんにもらったレッツプルを飲んで回復!


pカワハラ

「……あ。コノミ、もしかして、おれにコクるための準備段階として、まずはシモカワと友達になったとか?


 カッキーーーーーーーンンン!!

「あううっ!!」

 アホかおまえは! とツッコむ暇すらなかった。カワハラの寒い言葉がこれほどまでに強烈だなんて……。

 だめだ……スピードは上で、奇襲も逃げもきかない。属性では完璧に負けている。

 ほかの仲間のように、空気を読んで道を開けてくれることも期待できない……。

 まさか…こんなやつのせいで絶体絶命になるなんて……。


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「せんぱい……ここは、ワタシにまかせて……」


キャラ (8)

「え?」


「これ以上、先輩が傷つくトころ、見たくないんデすよう」

「……コノミ?」

 コノミはゆっくりカワハラの前に歩み寄る。


キャラ (18)

「お? いよいよ告白タイム?


 おそろしく空気を読まないひと言……あれを僕が食らったら完全に致命傷だった……。

 でも、同じ氷属性というコノミはその氷撃にもビクともしなかった。


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「ごメんなさイ。カワハラ先輩のことは、まったくなんとモ思ってません」


 カッキーーーーーーンンンンン。

 カワハラが凍りついた。


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「カワハラ先輩。ここ通しテもらイますね。ダいじょウぶ。あまり痛くしまセんかラ」


 グバアアアアアアア!!!

 コノミの小さな背中から、いきなり氷の触手が吹き出した!

 それはまるで、巨大な蜘蛛の脚!

 何本もの氷の触手が、カワハラ目がけて飛びかかる!


pカワハラ

「な、なんやーーーーー!」


pシモカワ

「こ、コノミ!」


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「……………………ふふフフフふふ」


 ズカッ! ズガッ! ズガガガッ!

 ものすごい音を立て、コノミの背中から伸びる氷の触手は、カワハラの立っているあたりに振り下ろされる。

 アスファルトがえぐれ、土煙が巻き上がった。


キャラ (8)

「こ、コノミ! やめろ! カワハラを殺す気かっ!!」


 思わずコノミに飛びつき、動きを抑えるように後ろから抱きしめた。

 たったいま目の前でおそろしい攻撃を放ったことが信じられない、柔らかく、きゃしゃな身体だった。


キャラ (18)

「ひ、ひ、ひ、ひいいいいいい。びびったーーーーー」


 土煙が晴れると、道路は掘り起こされ、土はえぐれ、街路樹はグチャグチャに折れているというのに、当のカワハラはまったく無事だった。怪我ひとつしていない。


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「…………ダいじょウぶ…………ナんとか、抑えましタ」


 後ろから抱きしめる僕の腕を、コノミが優しく撫でた。


キャラ (8)

「…………コノミ…………もう…………悪意のチカラは使わないで…………」


 涙が出そうになるのを必死でこらえながら、僕は言った。

 放心状態のカワハラを残し、僕とコノミは自転車に乗る。


 海にまで続く最後の直線道路。

 紫色の空はいつのまにか夜明け間際だった。

 志賀島名物『金印ドッグ』の屋台が見えてくる。あれを過ぎれば……

「コノミ! 海だ! もうすぐだからな! がんばれっ!」

「………………………………」

 そのとき。

 背後の闇の中から、聞き覚えのあるバイクの排気音が聞こえてきた。

 夜の闇を引き裂く、ヘッドライトの光。

 タンデムシートに女のひとを乗せたその青いバイクは、けんめいに自転車をこぐ僕をかんたんに追い抜くと、道を塞ぐように前へまわりこんで止まった。

 スタンドを立ててバイクから降りたハヤトさんが、ゆっくりとヘルメットを脱いだ。


pハヤト

「シモカワ」


pナミ

「……………………」


キャラ (8)

「…………ハヤトさん。ナミさん…………」


 最後の壁が、僕とコノミの前に、立ちはだかる。


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