ハヤヤノミネ__4_

2-2 動物園にたたずむ巨体


 セーブカンパニーを出て、ナミのところに走った。

 うおっ。ベンチに座ったナミの後姿から、黒炎が立ちのぼってやがる……。


キャラ (1)

「今日も暑いですね」


キャラ (1)

「は、はい……」


ナミ「あ。どこかの誰かさんは、クーラーの効いた店で、ごゆるりと過ごしてきたんでしたね」

 ナミは、フフッとわざとらしい笑みを浮かべる。

ナミ「今日は日中36度まで上がるって。はは。体温くらい高いね」

ハヤト「わ、悪かった」


「なんか、昨日にも増してウレシそうな顔しちゃって」


「セーブの手続きだけだぜ? 嬉しいことなんてねーよ」とぼく嘘をつきました。


ハヤト「で、だ。……正義のアリバ戦士として、とりあえず何をすりゃいい?」

ナミ「街をまわる。そして……悪意を探す」

ハヤト「あくい……俺たちの敵か」


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「ボク、悪意を感知できるんだ。ほんとは、早くこの町のどこかに居るアリバの戦士を探したいんだけど……ハヤトひとりじゃぜんぜん頼りないし……」


「悪かったな……」


 コイツ憎まれ口叩かないと喋れねーのか。

ナミ「けど、そっちは絶対数が少ないし、とりとめもない。だから、まずは強い悪意を調べよう。悪意とアリバは引き合う性質がある。だから……」

ハヤト「悪意を探せば、アリバを探すことにもなるわけか」

ナミはコクリとうなずく。

ナミ「ちょっと気になる場所があるんだ。そこへ行ってみようよ」


 高宮駅をあとにした俺たちは、西鉄電車で『薬院駅《やくいんえき》』に向かった。

    さらに『浄水通り』を北の方へ。


pナミ

 感知とやらをするナミは、匂いを嗅ぐ犬にしか見えなかった。

    口に出せば面倒なことになりそうだから、黙っていたけどな。


「気になるって、ここか……?」


 ナミが示した場所……

 ……それは『福岡市動物園』だった!


 ◆


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 福岡市ってとこは、町のど真ん中に動物園がある。

    そーいや最近、ローランドゴリラが来たらしいな。


キャラ (1)

「こんなとこに悪意の反応かよ?」


キャラ (2)

「間違いないよ」


 夏休みということで、それなりの人が居る。

 広い敷地内は緑が豊富で、涼しげな木漏れ日ができている。

 が、夏だけにやっぱり暑い。

 そうか。今日は7月22日。本格的に夏休みだもんな。

 まあ、休みに関係なく、ここに入り浸っているヤツも居るけど。

 ……『ヤノ』のことだ。どうせ今日もここに居るだろう。


 草食動物ゾーン、放鳥舎、フードコートをまわり……

    猛獣エリアの手前、ゾウのブースへ。

 やっぱりそこには、虚ろな目でゾウを見つめる『ヤノ』の巨体があった。


pヤノ


 ……ヤノ。

 180センチを超える巨体。並みの三倍はある太い手足。タレ目の意外に整った顔つき。

 よく白人とのハーフに間違われるが、れっきとした日本人だ。

 身体はデカイくせに性格は大人しい、というか女々しい。

 はっきり言って女子力高めの男だ。


キャラ (1)

「なんか……あそこだけ暗雲がたちこめてるんだけど」


キャラ (1)

「ああ。しかもアイツは俺の関係者だ」


 ヤノに近づき声をかけた。

ハヤト「……やっぱり今日もここかよ」


キャラ (16)

「うおっ! ……な、なんだ……ハヤトかよお」


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ハヤト「サユリじゃなくて悪かったな」

ヤノ「…………言うなよお」


「おまえ、まだサユリのこと、吹っ切れてねーのか? ここに居たって、どうにかなるもんじゃねーだろ?」


「俺は……俺は……そんな器用な人間じゃないんだよお」

 

 ヤノとは中学からずっと同じの、いわゆるクサレ縁だ。

 即断・即決・即行動の俺。デカいくせに慎重で思慮深いヤノ。

    正反対ながらもウマが合い。いつもツルんで色々やってきた。

 いわば『相棒』と言っていい。

 そんなヤノに恋人が出来てからは、一緒に遊ぶこともめっきり減っていたが……。

 つい最近、望まない別れ方をしたらしい。

 それで、その相手『サユリ』とよくデートしたこの動物園に来ては、思い出のゾウの前で、日がな一日たたずんでるってわけだ。情けねえ。


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「フラれちまったもんはしょうがねーだろうが」


「うう……ハヤト、おまえみたいにドライな人間には、わからないんだぞお」


ハヤト「ンだよそれ」

ヤノ「俺はおまえみたいに『ハイ次』なんて、すぐに切り替えられないんだよお」

ハヤト「チッ。人聞きわりーな」


pナミ

「ハヤト……このひとだ」


 背後からナミが耳打ちしてくる。

ナミ「感じるんだ。マユのときとおなじだよ」

ハヤト「マユと? ……ってことは、こいつが悪意?」


pヤノ



「いや、まだだ。マユのときは間に合わなかったけど、今回は間に合った。このひとは悪意になる寸前みたい。今ならまだハヤトがなんとかできる!」


「どうすればいい?」


ナミ「マユのときと同じだよ。ハヤトの想いをぶつけるんだ!

ハヤト「想いをぶつける? やめてくれ。ンなこと出来るか、気持ちわりー」

 俺は顔をしかめて言った。


「……ウジウジ情けねえヤローにぶつけんのは……」


 俺は顔の前でをぐっと固める。

ハヤト「……コイツだって、昔から相場は決まってんだよ……!」

 それがトモダチだからな!


pハヤト



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