幕間１　シンジローの疑問符

　兄貴とナミさんが帰ってきたのは、アピロスで、山盛りの事件が起きた日の夜だった。

「……ただいまー」

「おじゃま……します……」

「兄貴ぃ！　た、たたたた大変だあー！」

　疲れた顔をして玄関で靴を脱ぐ兄貴たちのところへ駆け込んだ。

「どうした元・弟」

「いつのまにか”元”になってる！？　まぁ、いつものことだけど」

　兄貴のシンラツな言葉をスルリとかわすのは、おれの十八番ってね。

「弟、慣れてるね……」

ナミさんが感心する。そんなことより……

「今、【パソコン通信】でビックなニュースが流れてきたんだ！　アピロスの『テロリスト襲撃・集団幻覚・ガス爆発・局地的サイクロン事件』の犯人、いっさい身元不明になっているけど、目撃者が居たらしいぜ！！」

「「！？」」

目を見合わせる兄貴とナミさん。

シンジロ「【パソコン通信】で目撃情報の書き込みがあったんだよ。……どうやら犯人は、葉巻の似合うピッチリ全身赤タイツの伊達男でさ。左手が仕込みガンという見解も……。かたわらには、ひとニラミで、人間を石に変える魔女が居たとか……」

　ブッと兄貴が吹き出した。

　ナミさんはチッと舌打ち。

「……アピロス中をメチャクチャにしたあと、食料を根こそぎ奪い、屋上遊園地の遊具を楽しんだあげく、ニヒルに笑って、大池公園の池に沈んでいったらしいよ！」

「……シンジロー。おまえ金輪際、パソコンに触るな」

「え？」

「弟。嘘を嘘と見抜けないのなら、ネットやめたほうがいいよ？」

シンジロ「え？　え？」

ハヤト「葉巻の似合う伊達男って、どこの宇宙海賊だよ……」

ナミ「ひとにらみで石化する魔女だと……？」

シンジロ「！？　二人とも何か知ってるのか！？」

「知らん」

「知る必要もない」

　う、嘘だっ。おれは、兄貴が嘘つく時は、眉間のシワでわかるんだよ！

「アニチィ、一体何があったんだよぉ」

　のけ者にされてるみたいで悲しい……。

　こんなときは、兄貴のことを『アニチ』と、甘えた呼び方してしまい、「気色悪いわっ」って殴られるんだ。

「ねえ母さん、弟捨てて、養女もらわない？　可愛い妹候補が居るんだけど」

「そうねえ。女の子は欲しかったけどねえ」

「いっそ兄弟共に、寺にでも送り込んで出家させて、女だけで静かに暮らしましょう。お母さん」

ハヤト「俺もかよ……」

　なし崩し的に話を終わらせた兄貴とナミさんは、夫婦漫才みたいなノリで話しながら、リビングに向かっていった……。

　……ふたりは何かを隠してる。

　ナミさんが来てから、兄貴はなんだか雰囲気が変わった。

　長年、弟をしてきたおれにはわかる。

　でも、一体何を隠してるんだ？

　そして……ナミさんって……一体……ナニモノなんだ！？

　この福岡市で、いったいなにが起こってるんだよおおおお！！！

第１話【はじまりの夜】　終わり

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　第一話終了時のステータス
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【ハヤト】　大学生　レベル４　EXP７０　属性　無属性　身長１７４センチ　体重６５キロ

　HP　６４　(B)
　攻撃力　６３　(A)
　防御力　１４　(C)
　特殊攻撃　２４　(C)
　特殊防御　８　(D)
　素早さ　３６　(B)

《福海大学法学部三年生。２１歳。厳冬流格闘術白帯。なんでも器用にこなす反面、決定打に欠ける器用貧乏。一見ぶっきらぼうだが、実はお人よしで面倒見がいい。小説家志望の、夢見がちなロマンチスト。

　マユとの戦いを経て、不思議な力『アリバ』に目覚め、アリバの戦士第一号となる。が、本人は事態をまったく把握していない》

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【ナミ】　？　レベル？　EXP？　属性　？　身長１６５センチ　体重７０キロ

　HP　？　
　攻撃力　？
　防御力　？
　特殊攻撃　？
　特殊防御　？
　素早さ　？

《流れ星と共に現れた謎の美少女。国籍不明のボクっ子。福岡市にはびこる『悪意』と戦う為、アリバを持つ戦士を探している、と本人は言っている。
　ナミ自身もアリバを使えるらしいが、今はなぜか使用不能。コミュ障らしく初対面の相手が苦手。

　戦闘中はテンションが上がり饒舌になるという一面も。いろいろな事情に詳しいはずだが、その口は重い》

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【レベル１　アリバの剣　　威力？　命中率？】

《１－３でオッサン相手に出そうとした技。現在は使用不可。『アリバの剣よ！　敵を討て！』と叫ばねばならず、なかなか恥ずかしい。

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【マユ】　小学生　レベル１５　EXP　５　属性　風属性　身長１４０センチ　体重３３キロ

　HP　３０　(E)
　攻撃力　２００　(S)
　防御力　５　(E)
　特殊攻撃　２２５　(SS)
　特殊防御　１２０　(A)
　素早さ　１００　(A)

《摩訶久 (まかひさ) 小学校に通う明るく性格のいい女の子。というのは見せかけで、辛い家庭環境から心を閉ざし、そこを悪意につけこまれた。ナミいわく『最強の悪意の幼生体』。

　本来のシナリオでは、ハヤトの誤った行動により、悪意から解放されず逃走。後に、最強最悪の敵として再戦することになっていた》

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【レベル１　シルフィーコール　１０／１０　能力変化　特殊攻撃・防御極大増】

《風を呼び、特殊攻撃力・特殊防御力を跳ね上げる。重ねがけも可能。他の必殺技の攻撃力・性能も格段にアップするというチート技》

【レベル２　エルフィンダンス　２０／２０　威力１００　命中９０％　風系特殊　追加効果・麻痺】

《風を刃に変えて放つ多段技。風が吹いている限り無尽蔵に放てる。シルフィーコールにより威力・ヒット回数が激増。追加効果でマヒさせ、動きを封じることも可能という恐怖のハメ技》

【レベル３　ジンストーム　３／３　威力１８０　命中率９０％　風系特殊】

《愛憎入り乱れた赤裸々な情念をぶつける大技。威力は絶大。ただし、想いをぶつける性質上、対象は単体のみ。氷属性は言うに及ばず、不利な火属性でもダメージを与えるほど高出力で、本来なら『無属性』でも耐えられるはずはなかった》

【レベル４　メイルシュトローム　１／１　威力２５５　命中率１００％　風系特殊】

《世界に対する純粋で一方的な憎悪により呼び出される災いの大渦。すべての風系必殺技の中でも最強。状況によっては、使用者本人すら巻き込むその威力は、まさに禁断の魔技》

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第２話　【縁は異なもの同級生】　に続く