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【クリエイティブ生活】ナサニエル・ホーソーン『地球の大燔祭』を読了

 国書刊行会『新編 バベルの図書館1  アメリカ編』から、ナサニエル・ホーソーンの『地球の大燔祭(だいはんさい)』を読了しました。

 人類の進歩とは何か? がテーマだと思います。昨今の表現規制問題を連想しました。

 身分制度や古典的な書物など、人類にとって不要と見なされた物が次々と火の中に投じられてゆく、それを見守る主人公と謎の男。そんな筋運びです。

 何か世の中を良い方に変化させたいと望む時、何よりも社会制度や環境が大事で、個々人の精神的な面は大した問題でないとする考えがあります。

 例えばそれは、社会保障を整えれば、食い詰めて犯罪に走ることはなくなる。そんな考えです。

 そうならないように普段から気をつけろとか、何とか頑張って職探ししろとか、そうした個々人の責任にしてはならないとする、確かにこのような考えも大事です。

 一方で、やはり世の中が良くなるには、一人ひとりの心がけが大切だとする考えもあります。この物語は、後者の考えで書かれています。

 また、何がもう古くて必要でなくなった物なのか、古くても良き人類の遺産として引き継いでいくべきものなのか。その選り分けをどうするのか。

 そんなことで、いろいろと考えさせられる話でした。

 ジェンダー規範の変化やアメリカ発のポリティカルコレクトネスなど、様々に移り変わってゆく世相の中で、二百年前のアメリカも、現代の日本も変わらない、と思いました。

 もちろん、『震源地』たる当のアメリカもそうで、ナサニエル・ホーソーンの時代から、そうした人類の、というより近代以降の社会の世相は変わらない面があるのだと思いました。

 古典なんて要らない、最新流行のものこそが最も素晴らしい。そんな考え方はいつの時代もあり、最終的には、ある程度の進歩や変化を受け入れ、ある程度は古くて良きものも受け継いでゆく。そんなところで落ち着くのだと考えています。

 そんなことを考えました。

 ここまでお読みくださって、ありがとうございました。あなたのクリエイティブ生活のヒントになれば幸いです。

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