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【クリエイティブ生活】ダンセイニ作『スコットランド・ヤードの敵』を読了

 昨日に引き続き、ロード・ダンセイニの推理小説短編集『二瓶の調味料』(ハヤカワ・ミステリ新書)より、3番目の短編です。

 シャーロック・ホームズの時代にはなかった(当時の)最新科学を推理小説に使えばどうなるだろうか? といった感じで書かれたアイロニーとパロディ精神に満ちた1作だと思います。

 逮捕され刑務所に入れられたことからスコットランド・ヤードを逆恨みし、復讐を企む連続殺人犯を追う、主人公リンリーと語り手のスメザーズ、スコットランド・ヤードの警部の物語です。

 科学技術に限らず複雑化していく社会の中で、リアルにかんがえると従来型の推理小説は難しいよね。そんな皮肉な雰囲気で、例によってユーモアと不気味さを両立させつつ話は進みます。

 探偵役リンリーは相変わらず超絶に頭が切れるわけではなく、スコットランド・ヤードは有能、ワトソン役スメザーズもリンリーの出来ない事をして活躍する、ダンセイニなりの『リアリティ』であり、従来型推理小説へのいわば『逆張り』でもあるのでしょうね。

 結末は、意外でしたが唐突な終わり方にも思えます。しかしそれが、巻末解説にあるところの、江戸川乱歩が言ったという『奇妙な味』なのだと思いました。

 正統派の推理小説が好きな人は『何だこれは?』と思うかも知れませんが、日本でもこの本はすでに13年目のロングセラー、『奇妙な味』を好む読者はけっこう多いようですね。

 ここまでお読みくださってありがとうございました。あなたのクリエイティブ生活のヒントになれば幸いです。

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