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オリジナル小説 ふたりぼっち#1

 あるところに、灰村という名前の青年がおりました。灰村は21歳になったばかりで、人生に絶望していました。毎日毎日、愁えた表情をしておりました。

 灰村には、伊織という名前の恋人がいました。伊織は甲斐甲斐しく灰村に接するも、灰村の心から絶望を取り除いてあげることはできずにいました。

 私が初めて二人と食事をしたとき、二人とも小奇麗な恰好こそしていましたが、食は細く、ほとんど皿に手をつけていませんでした。どう贔屓目に見ても、二人は病人のように青白い顔をして、がりがりに痩せていました。

 二人はこの絶章切県(ぜっしょうせつけん)に引っ越してきたばかりで、知り合いもいない状況でした。私が二人と知り合ったのは、本当に偶然のことでした。二人は、自分たちのことしか信用していませんでしたので、積極的に友達を作ろうとはしなかったようです。

 私がこれからおはなしするのは、灰村香澄(はいむら・かすみ)という男の人と、葉三品伊織(はみしな・いおり)という女の人のおはなしです。どうぞ、休み休みお聞きください。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます! より良い記事を書いていきたいです。